夢魔
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■ 第30章 圧制2

 生徒達はその後スリーサイズを測られ、服を着る事を許可される。
 何かもっと酷い事が起きるのかと、懸念していた生徒達は、恥ずかしいだけで大した事も無いと、ホッと胸を撫で下ろしながら、制服を身につけた。
 1クラスが終わると、直ぐに次のクラスが呼ばれ、同じ事が繰り返される。
 検査を受けた生徒がクラスに戻ってくると、その結果を持って購買部に行かされた。

 購買部に入った生徒達は、いつものおばさんの代わりに、美人だけどどこか影の有る3人の女性に、紙を見せると、女性は生徒達に無言で、緑色か黄色の首輪を差し出し、クラスが書かれた南京錠を配る。
 生徒達は怪訝そうな顔でその一式を受け取ると、クラスに戻り説明を受けた。
「このクラスは緑色の首輪を貰った人は、居ないでしょ。それはね、みんながまだ処女だって事です」
 1年A組のクラスでは、副担任の直美がそう言って切り出す。
 クラスの全員が頬を染めながら、俯くと直美は鍵を手に取り
「そして、この鍵は4種類有ります。みんなには白い鍵が手渡された筈ですが、これからの行動で、銀、金と変わるか、黒、首輪無しに変わります。下位の鍵を付けている人は、上位の鍵を付けてる人に、逆らえません。コレを破ると重大な校則違反になります」
 規則を説明し始める。

 直美の言葉に生徒達が顔を上げると、直美は説明を続けた。
「この首輪には、3種類の機能が付いています。1つは貴女達の声が、全て筒抜けになる盗聴器。1つは貴女達の正面の映像を映し出す小型カメラ、最後の1つは貴女達の脈拍と呼吸をモニターするセンサー。この3っつが貴女達を24時間監視します。センサーは嘘発見器と同じ原理で、学校内のコンピューターと連動していて、貴女達が秘密をバラそうとしたり、或いはバレる様な事をした場合の体調の変化を監視し、直ぐに係の者に通報します。絶対に馬鹿な事はしないで…それが、貴女達と家族の為なのよ…」
 直美の説明に生徒達は、項垂れて涙ぐむ。

 その時、1年A組の扉を開けて、5人の男子生徒が中に入って来た。
 4人の制服の第2ボタンから細い鎖が垂れ下がり、その先には鍵が付いている。
「もう、説明は終わった?」
 先頭を歩く金色の鍵を持った、男子生徒が問い掛けると、直美はスッと身体を男子生徒の正面に向け
「はい、一通りの説明は終わりました」
 深々と頭を下げ、敬語で答えた。
 椅子に座る女生徒達はその光景に驚き、どちらが立場が上なのか、一瞬で理解する。

 男子生徒はクルリと、身体を女生徒達に向け
「僕が、1年生を預かる明神 弥彦(みょうじん やひこ)だ、この金色の鍵は1年生全員の鍵を開ける事が出来る。1年生全ての鍵を変える権限を持っていると言う事です。彼はクラス委員で銀色、こっちの2人は副委員長で白、この3人の鍵は、クラスの者の鍵しか開ける事が出来ない。そして、彼が持っている黒い鍵は全校生徒の鍵を開けられる。彼には、特に逆らわない方が良い。彼は、このクラスの風紀委員だ」
 4人のクラス委員を紹介した。

 大柄な男子生徒が、一歩前に進み出し
「校則違反は容赦無く取り締まる、新校則の隅から隅まで読んで、暗記しておくんだな…。それが、自分の身の為だぜ」
 女生徒達を睨め付け、低い声で告げる。
 女生徒達は俯いて、ガタガタと震え始めた。
 5人の男子生徒が最後尾の席に座ると、直美がペコリと頭を下げて、教壇に戻り
「このプリントを家の方に見せて、この首輪が外せない事を説明しなさい。万が一この首輪を認めないご家族が居る方は、理事長自らが制裁を行われます。ですが、皆さんはその事を決して口にしてはいけません。とんでも無い目にあう事は間違い有りませんから…」
 そう言って、クラスの女生徒全員にプリントを配る。

 プリントには、こう書かれていた。
[このベルトは、竹内グループで新開発された、記憶力を増進させる効果の有る特殊な物で、その最終調査の為に我が校生徒全員にモニターに成って貰う。企業秘密の保持と、モニターサンプルの管理の為、鍵を付けている。これは、我が校生徒の能力アップと、我が校生徒の証である事を常に知らしめる為、理事長である竹内伸一郎が決定した。どうか、ご理解頂いて協力して欲しい]
 そして、一番下に協力出来ない場合に鍵を外す為の、電話番号が書かれている。
 そのプリントを読んだ女生徒達は、皆唇を噛み涙ぐむが、何の反論も出来なかった。
 それは皆、伸一郎の力の強さを知り、奈津実と留美子の姿が、恐ろしかったからだ。

 プリントを読み終えた女生徒達に
「全員読んだわね? それじゃ、1人ずつ首輪を持って、後列に居られる、クラス委員の方の元に行って、付けて貰いなさい」
 直美が告げると、言われた通り首輪と鍵を持って、クラス委員の前に立った。
 しかし、クラス委員は一向に首輪に手を伸ばそうとはせず、ジッと女生徒を見詰める。
 女生徒は困惑して、クラス委員を見詰めるが、何もしようとしない。
「貴女達、礼儀を示しなさい。何かして貰うなら、それなりに頼み方があるでしょ?」
 直美が女生徒達に告げると、女生徒達は直美と首輪とクラス委員を交互に見比べて、立ちつくす。
 誰も、心から望んで首輪をしたいとは思っていなかったのだ、当然と言えば当然の反応である。

 しかし、それも直美の言葉で、直ぐに考えを変える。
「そう、そう、皆さんに伝え忘れたけど、首輪が無いと今後一切、この校内で人間扱いして貰えないわよ。見たでしょ? 家畜にされた2人…、アレの首には、首輪が着いて無かったでしょ…。ああ言う扱いをされても、文句言えないのよ」
 直美が女生徒達に告げると、女生徒の顔が引き痙り
「お、お願いします。私に首輪をお与え下さい」
 泣きそうな声で、頭を下げて懇願した。

 明神は横柄な態度で
「それが、物を頼む時の貴女の態度ですか? その程度の頼み方で、私が依頼を聞く必要は無いよね…? まあ、首輪無しの生活をして後悔しなさい。次の人来て下さい…」
 女生徒の懇願を一蹴すると、次の女生徒を呼んだ。
 女生徒は顔をクシャクシャに歪め、床に座り込むと
「お、お願いします! 何でも言う事を聞きますから、私に首輪を嵌めて下さい。お願いします!」
 土下座して明神の足に縋り付いて、懇願する。

 明神は、鞄に手を伸ばすと、鞄の中から黒い鍵を1つ取りだし
「礼儀の成ってない者は、ここから始めなさい」
 そう言って女生徒の首輪をきつめに嵌めて、黒い鍵を取り付けた。
 女生徒は首輪の苦しさに耐えながら
「あ、有り難う御座います…」
 明神に土下座し、感謝を告げて立ち上がる。
 女生徒達は入れ替わり、次々と土下座し首輪を差し出して懇願した。
 圧制の始まりだった。

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