夢魔
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■ 第30章 圧制4

 父親は子会社の庶務課長として、出社するとそこは、女子社員が4人と課長補佐の中年社員が1人居るだけの小さな事務所で、その5人には全て見覚えがあった。
 それは以前の会社で、自分自身が解雇同然に転属させた、素行不良のお荷物社員だった。
 5人は薄笑いを浮かべ、久美の父親に形式だけの挨拶をする。
 父親は溜息混じりに、席に着くと女子社員の1人が突然、衣服をはだけて父親に抱きつき押し倒した。
 驚いた父親はその女子社員を追いやろうとして、体勢を変え馬乗りになった瞬間、写真を撮られる。
 そして課長補佐が、大声を上げて人を呼んだ。
 飛び込んで来た、男性社員が[どうした!]と問い掛けると、[この人が急に押し倒して、乱暴しようとしたんです]と別の女子社員が、怯えた声で嘘を吐く。

 呆気に取られている、久美の父親を男性社員がいきなり蹴りつけて
「この野郎、抵抗するな! 現行犯だぞ!」
 怒鳴りながら、何度も蹴り上げる。
 グッタリした所を、後から入って来た数人の男子社員に囲まれて、人事課に引き立てられ、複数の証人が口を揃えて事実をねつ造した。
 久美の父親はこうして、婦女暴行の濡れ衣を着せられ、平社員に降格する事でクビを免れる。
 庶務課に戻った課長補佐が、ニヤニヤと久美の父親を見ながら
「これから、楽しい毎日が過ごせそうだな。なあ、水無月君…」
 かつての上司を見下ろしながら、尊大な声で告げた。

 久美の兄は郊外の工場の検査主任として、仕事に向かった。
 バスで1時間半揺られて、着いた工場は機械の組み立てラインの工場だった。
 久美の兄はそこの検査室に押し込まれ、流れてくるパーツを延々チェックする仕事を任される。
 熊の様なライン長が久美の兄に
「ここが、お前の職場だ! お前は、ここで流れて来る、パーツから不良品をはじき出せ」
 そう告げて、2つの部品を手にして、説明を始める。

 久美の兄にはその部品が全く同じ物に見えたが
「こいつが良品で、こいつが不良品だ。不良品のここには、傷が入って中心が2oずれてる」
 ライン長はそう言って、説明した。
 しかし、その傷は本当に注意深く見ないと、良く分からず、中心のずれも肉眼で判断するなど、不可能だった。
 久美の兄が何か工具類について、問い掛けようとしたが、ライン長はサッサと出て行き扉を閉めてしまった。

 その部屋は明かり取りの嵌め殺し窓が有るだけで、空調も動いて居らず、午前中なのに30度近い室温があった。
 機械が出す熱の為なのだが、それを排出する機構が動いて居らず、蒸し風呂の様だった。
 そしてラインのベルトコンベアは、低い位置にある為中腰で覗き込むしかない。
 そんな、劣悪な環境の中、久美の兄が機械を覗き込んでいると、ブザーが鳴りベルトコンベアが動き出す。
 久美の兄の前を、次々に同じ部品が流れ、それをジッと見詰める。
(どれが不良品か…全く解らん…)
 久美の兄は高温の室内で中腰のまま、頭を捻っていた。

 すると、突然ブザーと同時に、ラインが止まりライン長が室内に入ってきて
「てめぇ! 舐めてんのか! こんな不良品流しやがって!」
 怒鳴りながら、部品を久美の兄に投げつける。
 部品は額に当たり、久美の兄の額がパックリと割れた。
 重さ1kg程の鉄の塊である。
 額に当たれば、切れるのは当然だったが、ライン長は蹲る久美の兄に追い打ちを掛けた。
 久美の兄の背中や腹を、鉄板入りの安全靴で情け容赦無く蹴り上げ
「今度、こんなふざけた真似しやがったら、プレス機で押しつぶすぞ!」
 捨て台詞を吐いて、出て行った。

 久美の兄は治療を求めようと、身体を起こし扉のノブを掴んだが、ノブは一向に回らない。
 閉じこめられた事に気づき、焦りだした時ブザーが鳴って、ラインが動き始める。
 久美の兄は仕方なく、位置について検査を始めた。
 目を皿の様にして、ライン長の怒りに触れない様、流れる部品を見詰める。
 この後久美の兄は都合5回、ライン長に焼きを入れられ、ボロボロにされた。

 久美の母親は土木会社に出社した。
 ガラの悪い男達が久美の母親を見るなり、驚きの表情を向け、下卑た笑いに変わる。
 久美の母親は45歳だが、とても若く見え、品のある美人だったからだ。
 プロポーションも崩れて居らず、少し脂肪が付いているが、それが脂の乗った色気となっている
 そんな久美の母親が、社長室に挨拶に行くと
「ああ、あんたが水無月さん? 聞いてるよ…。じゃ、早速準備してくれ、今から現場に出るんでな…」
 社長は更衣室を指差し、母親に告げた。

 母親は何の事か解らぬまま、曖昧に頭を下げて更衣室に向かうと、ロッカーの中には作業服が1着有るだけだった。
 久美の母親が驚いて、社長に問い掛けると
「何言ってんだ? 俺は、あんたの事、現場作業員としか聞いてねぇぞ…。とっとと着替えろ、その上品なおべべがドロドロに成っても良いんだったら、話は別だがな」
 社長はにべもなく、母親の質問を一蹴した。
「いやなら、来なくて良いぜ。これから先、あんたを雇う所は、この市内にゃねえからな…。家のローンどうするんだ?」
 社長は嫌な笑いを浮かべ、戸惑う母親に告げる。
 その言葉を聞いた、久美の母親はそれが事実である事を理解し、唇を噛んで作業服に着替えた。

 久美の母親はワンボックスに乗り込み、5人の土木作業員と共に、山奥の道路工事現場に向かう。
 そこで、久美の母親は初めてスコップを持ち、一輪車を押して肉体労働をする。
 フラフラに成りながら、怒声を浴びて作業をし、何とか久美の母親が午前中の作業を終えると、尿意を覚えトイレを探すが、何処にもそんな物はなかった。
 仕方なく草むらに入り込み、人目をはばかってズボンを降ろすと、いつの間にか男達に囲まれている。
 久美の母親は驚くが、男達はニヤニヤ笑い、母親に近づくと
「良いぜ、どんなに声を上げても、誰もここらには居ねぇ…」
「へへへっ、おばさん、仲良くしようぜ…」
「おい、どうでも良い、ちゃちゃと済ましちまおうぜ…」
 男達は口々に言いながら、久美の母親に近づく。

 男達の体型や絶望的な状況に、久美の母親は悲鳴を上げ、5人の男達に犯された。
 2時間程犯された久美の母親は、草むらの中に放り出され、泣きじゃくる。
「おい、こんな所で、サボるんじゃねぇ。休み時間はとうに過ぎてるぞ!」
 土木会社の社長が、全裸に剥かれ、精液まみれの久美の母親を見て、怒鳴った。
「ウチの若いのと、仲良くやってるじゃねぇか…。これから、毎日頼むぜ」
 ニヤリと笑いながら、社長は作業服を久美の母親に放り投げる。
 社長は社員の行動を、全て知っていたのだ。
 そしてこれが、毎日続く事を久美の母親に告げた。

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