夢魔
MIN:作

■ 第30章 圧制6

 そして、心の中で感謝しながら、この幼い容姿の同級生に全幅の信頼を寄せた。
 悦子は父親から、久美の家族全員の携帯番号とメールアドレスを教えて貰い、久美と学校に向かった。
 久美を従えた悦子は、角を曲がり人気のない道に来ると、自分の首に巻いている黄色い首輪の鍵を外し、首輪を取ると久美を見つめる。
 久美は諦め切った表情で、自分の髪の毛を掻き上げ、白い首を晒す。
 悦子はそんな久美に酷薄な笑みを浮かべ
「貴女何の積もり? まさか、首輪を嵌めて貰えると思って無い?」
 久美に冷たい声で問い掛けた。

 悦子の言葉でハッとした久美は、泣きそうな顔で小さくイヤイヤをすると
「貴女が選んだんでしょ? 自分の選択は、自分で責を任取らなきゃねぇ〜」
 悦子の笑みは、強く邪悪に歪んだ。
 久美が後ずさり仕掛けると
「逃げる積もり? どうなっても知らないわよ」
 悦子は久美に、楽しそうに囁く。
 悦子の囁きで、久美の足が止まると悦子は踵を返して学校方向に身体を向け、歩き始める。
 久美はガックリと肩を落とし、悦子の後を追った。

 2人が正門を潜り、管理棟に入ると悦子は久美に向き直り
「お前は今から物よ。私が自ら教育して上げる。この1週間で、二度と私の意志に反する事をしないよう、徹底的に教えて上げる」
 久美に向かって宣言した。
 久美はその言葉に、震え上がりその場にへたり込む。
「何をしてるの? 早く立ちなさい…。クラスのみんなが、お前を待ってるわ…。A組で説得出来なかったのは、お前1人…。今日、無断で学校を休んだのも、お前1人よ…」
 悦子が久美に向かって、冷たく言い捨てる。
 久美はその言葉に、驚きながら時計に目をやると、時刻は夜の8時である、生徒が残って居て良い時間では無かった。
 悦子は言うだけ言うと、クルリと背中を向けて、教室棟に進み始める。
 久美は戸惑いながらも、悦子に着いて行くしか無かった。

 教室の扉を開けると、教室の中に向かって悦子が声を掛ける。
「みんな、良かったわね。今日はやっと帰る事が出来るわよ…」
 その言葉と共に、悦子が教室に入り、続いて久美が教室に入ると、クラスの首輪をしている者は、全員が机の上に正座していた。
 両手は背中に回して革手錠で絞り上げられ、顔は皆天井を向いている。
 天井からぶら下げられた、鼻フックが全員の鼻に掛けられ、吊り上げられている為だった。
 殆どの机の回りが、ビショビショに濡れており、スカートも水気で色が変わっている。
 そんな、クラスメートの回りを、騎乗鞭を手にしたクラス委員の3人が回り、教壇には風紀委員の薫が仁王立ちで見張っていた。

 悦子の帰りに気が付いた薫が
「悦子様、お帰りなさいませ…」
 恭しく微笑みを浮かべながら、頭を下げる。
「クラスの戒めを解いて上げなさい。これから、不心得者に制裁を加えます」
 悦子は薫に短く命じると、薫は直ぐに行動に移った。
 クラス委員に指示を出し、クラス全員の鼻フックを外して回る。

 教室の入り口で、ガタガタと震える久美に
「この子達は、今日の授業が終わって5時間、この姿勢を取ってお前の帰りを待ったわ…。あの、床を濡らして居るのは、我慢出来なく成った彼女達のオシッコよ…、無断欠席は重大な校則違反…。1人じゃ贖えないのよ…、クラス全員じゃないとね…」
 悦子が背中越しに告げた。
 久美は膝の力が抜け、ストンと床に再びへたり込んだ。
 その顔は絶望一色に染まっている。

 悦子はそのまま教壇に立つと
「3班の者を除いて、帰り支度をなさい。帰り支度が出来たら1人ずつ前に出て、この馬鹿にお仕置きをして、教室から出る様に…。下着を汚した者は、言いつけ通り明日から下着は穿いて来ない事。解りましたか!」
 クラス全員に指示を出すと、クラスの者は声を揃えて
「はい、悦子様。解りました」
 悦子に返事を返して、後ろ手に革手錠のまま机の上で、平伏して答えた。
 このクラスは2日目にして、悦子の恐怖にひれ伏し、誰も逆らえなくなっていた。

 全ての戒めを解かれた、3年A組の生徒は、長時間の正座の為、誰1人まともに立つ事が出来なかった。
 その姿を見詰めながら、悦子はクイッとクラス委員に顎をしゃくると、クラス委員はコクリと頷いて
「ほら、ほら、何をしてるの? 悦子様は、帰り支度をなさいと命じたのよ! さっさとしなさい!」
 回りの女生徒を怒鳴りながら、痺れ切った足に容赦無く鞭を振り下ろす。
「ぎゃひ〜〜〜!、あうぅ〜〜〜!、くぅぅ〜〜〜!、あがぁ〜〜〜!」
 あちこちで悲痛な叫び声が上がり、クラスは阿鼻叫喚の様を呈する。
 這い蹲り、小便でビショビショに成った床を転がりながらも、皆必死で立ち上がり、帰り支度を始めた。

 追い立てられた女生徒達は、1人1人悦子の前に来ると
「悦子様、お先に失礼します」
 深々と頭を下げて、挨拶をする。
 悦子はその生徒に無言で鞭を差し出すと、鞭を受け取った女生徒は、情け容赦無い一撃を久美に打ち付け、悦子に向き直って一礼しながら鞭を返す。
 それが、延々繰り返され、久美は騎乗鞭で24発打ち据えられた。
 24人の表情は、憎悪、憐憫、恐怖、諦め、様々な色を浮かべていたが、誰1人手を抜かなかった。

 悦子は残った10人の生徒に向かって
「貴女達で、教室を綺麗にしなさい、方法は任せて上げる。但し、私が気に入らなかったら、全員の口で掃除をさせるわよ」
 冷たい声で命じると、10人は青い顔をして頷いて
「わ、解りました…。悦子様に満足して頂ける方法で掃除します」
 悦子に答えて、全員で打ち拉がれた久美を見詰める。

 悦子は今度は久美を見ながら
「顔を上げなさい…そして、この子達の首輪に付いてる、鍵をご覧なさい…。黒く成ってるでしょ? この子達はお前と同じ班だから、黒鍵に落とされたの…。みんな、お前のせいで辛い目に遭ったけど、この子達はこれからも遭い続けるの…。言わば、このクラスの一番の被害者…お前を一番恨んでる集団…」
 残酷に悦子の置かれた状況を教えた。
 久美はその言葉に、弾かれた様に顔を上げ、10人の首輪を見、全員の視線を受け止める。
 悦子の言った通り、10人の視線は全員、憎悪一色に染まっていた。
 10人は無言で悦子に、躙り寄る。

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