夢魔
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■ 第30章 圧制16

 久美はその元親友を怯えた目で見上げ、言われた通りに正座した。
 元親友は久美の餌皿におにぎりを入れると、履き替えたスリッパで踏みつぶした。
 そのスリッパはゴム製のサンダルタイプで、裏に滑り止めの溝が切られている。
 そのスリッパを見た久美は、それが何処で使われていたか、直ぐに解った。
 足先を通す部分には、[2F南女子便所]と書かれている。
 そのスリッパは、久美のクラスから10mも離れていない、女子トイレの内履きだった。

 元親友はギュウギュウとおにぎりを踏みつけ、丁寧に裏の滑り止めの溝に、米粒を押し込むと
「さ、顔を上げて、手を使わず食べるのよ。ちゃんと、全部食べなさいよ」
 椅子に座って、久美の顔の前に足の裏を突き出す。
 久美の目の前には、細かい溝の中に、ビッシリと米粒が入った、薄汚れた便所スリッパの裏側が有った。
(何…何でこんな事するの…、何でこんな事出来るの…、何でこんな事されるの…)
 久美が涙を湛えた目で、呆然とスリッパを見ていると
「早くしなさい。それとも、逆らうの?」
 元親友は久美に命令し、薄笑いを浮かべながら、問い掛けた。

 その問い掛けを聞いた久美の肩が、ビクリと震え恐怖に染まる。
 [重校則違反]と言う言葉が久美の脳裏を過ぎり、久美は目を閉じて便所スリッパの裏に、舌を伸ばす。
 キスすら一度もした事が無い久美の可憐な唇が、便所スリッパの裏にこびり付いたご飯を刮ぐ。
 その瞬間、クラス中にざわめきが上がる。
「有り得ない〜! 便所のスリッパよ…。あんな物に唇押しつけるなんて!」
「うわ〜最悪〜! 汚いとかそんなの通り越してる! 頭おかしいんじゃない?」
「あんな事、良くできるわね。私なら、死んだ方がましだわ!」
 口々にクラスメートが久美に、侮蔑の言葉を投げつけた。

 久美の頬をハラハラと涙が伝い、長い睫が悔しさで揺れる。
 だが、久美には何も出来なかった。
 只命令に従い、スリッパの裏に唇を押し当て、舌で米粒を溝から掻き出す。
 丁寧に詰め込まれた米粒は、溝の奥深くに入り込み、舌で掻き出そうとしても中々出てこない為、久美は唇を押し当てて、強く吸い出す。
 ピチャ、ピチャ、ズーと音を立てて、便所スリッパの裏を舐め、こびり付いた米粒を掻き出す久美から、誰もが視線を外そうとする。

 しかし、[ガタリ]と音を立てて悦子が足を組み替え、鋭い視線を投げかけると、皆項垂れた顔を持ち上げ、久美を嘲笑う。
 彼女達にとっても、この行為は苦痛だったが、仕方が無かったのだ。
 [支配者の命令は絶対]だと、クラスの全員が理解し、それに従うしかないのだった。
 悦子の視線でクラス全員が再び、久美をなじり始める。
 あらゆる言葉を使って、辱め嘲笑い、久美の心を追いつめた。

 久美が便所スリッパの裏を舐め終え、水受け小皿に残った米粒も平らげ終わると
「食べ物を貰った、お礼を聞いてないわ…」
 元親友が久美に告げる。
 久美は何も考えていない様な表情で、深々と少女に頭を下げ
「食べ物を恵んで下さって、有り難う御座いました…」
 虚ろな声で、元親友に感謝を告げた。
 それは、誰が聞いても心が渇きそうな程、感情の起伏が無く味気ない声だった。
 全てを諦め、全てを投げ捨てた者が、口にする様な無味乾燥とした言葉が、久美の口から漏れる。

 久美は、元親友に命じられ、ペロペロと水受け皿を舐め始めた。
 その、久美の頬がいつの間にか、真っ赤に紅潮し太ももをモゾモゾと擦り合わせ始める。
(お、オシッコが…出そう…。どうして、こんな急に…)
 久美は突然襲った尿意に驚きながらも、必死に水受け皿に舌を這わせる。
 元親友の与えたおにぎりには、強力な利尿剤が混ぜられており、それが久美の身体に働き始めたのだ。

 久美が水受け皿を舐め終わると、皆知らない顔をして席に着く。
「それは、お前の餌皿。[物]のお前の唯一の持ち物よ、ロッカーに片づけなさい」
 元親友が久美にそう告げ、ロッカーを指さすと、久美は項垂れながら、手を伸ばそうとすると
「手を使うんじゃない! これから、お前は手を使うたびに、クラスの者1人1人から鞭を受ける。新しいルールよ」
 水受け皿を足で踏みつけ、久美に命令する。
 久美は真っ赤な顔で、情けない表情を作り[はい]と小さく答え、水受け皿をくわえロッカーに向かった。

 水受け皿をロッカーに片づけると、久美は急いでトイレに向かおうとする。
 そして、教室の引き戸の前に来ると、有る事に気付き愕然とした。
 この学校の教室の扉は、引き戸の取っ手の中にレバーが付いており、それを指先で押して、ロックを外して開けるタイプの為、手を使わなければ開ける事が出来ないのだ。
(あ、開けられない…。手を使っちゃ駄目って言うのは…このためだったの…。そんな…)
 久美が愕然としていると
「あら、邪魔よ…そんな所で、ボーっとしないで」
 背後から元親友が声を掛ける。

 久美は急いで振り返ると、元親友を先頭に仲の良かった3人組が、ニヤニヤと笑いながら、立っていた。
「お前、何処に行こうとしてるの?」
 元親友が久美に問いかけると、久美はモジモジと足を摺り合わせ
「あ、あの…お、おトイレに…。オシッコが漏れそうなんです…」
 懇願しながら、元親友に答える。
「あら、トイレに行ってどうするのよ? 手が使えないんだから、個室にも入れないし、後始末も出来ないわよ?」
 元親友の言葉に久美は、絶望に染まった顔を向け、教室を見回した。

 クラス全員の目線には、久美に対する同情など微塵も無く、完全に物を見る様な目で、何の感情も込められていなかった。
 久美は項垂れて迷っていたが、もう尿意は限界に近かった。
 そんな久美の目の前に、元親友がロッカーから水受け皿を取り出し
「これに、したら? 他所に溢さず出来たら、私が後始末して上げるわよ」
 プラプラと皿を振りながら、久美に提案する。
(このままじゃ、絶対外に出して貰えないし、この子の言う通り、オシッコの後始末も出来ない…)
 切羽詰まった久美は、首を縦に振り元親友の提案をのんだ。

 元親友が床に水受け皿を放り投げると、別の少女が久美のパンティーを脱がせる。
 すると、残る2人が両脇から久美のスカートを持ち上げた。
 驚いている久美に
「両手が使えないんだから、こうしないとオシッコ出来ないでしょ?」
 元親友が告げると、久美は唇を噛みながら、水受け皿の上にしゃがみ込んだ。
 そろりと尿道を開いたつもりだったが、溜まり切った小便は勢いよく飛び出し、水受け皿の外を汚す。
「あら、最初で終わりじゃない。汚れた所は、また雑巾で拭いておきなさいよ」
 冷たく命じて踵を返した。

 元親友が消えると、スカートを持っていた、少女達も手を放し、パンティーを脱がせた少女は
「はい、雑巾返すわね」
 そう言って久美の顔にパンティーを被せる。
 久美は顔に被せられたパンティーを取る事も出来ず、いつまでも止まらないオシッコを出し続けた。
 そんな惨めな久美を、クラスの全員が、興味を無くした様に放置する。
 それが久美の日常だと言わんばかりに、それが久美に取っては当たり前だと言う様に、全員視線を外し、午後の授業の準備を始めた。

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