夢魔
MIN:作

■ 第30章 圧制24

 狂は顔をしかめて
(ちっ! 思ったより早くバレたな…、まぁ、良いか…。罰を受ける者は出揃ったし、そろそろ解禁しても良い頃だろう…)
 舌打ちをしながら、クラス委員達に禁じていた、調教禁止を解禁する事にした。
 狂は絵美に近づきながら、委員長達に向かって
「おう、もう良いぜ、サンキュウな…。お前達も今後は自由に動け」
 感謝を告げ、ニヤリと笑って指示を出した。

 委員長はその言葉を聞いて、ペコリと狂に頭を下げると
「手を放しなさい」
 背筋を伸ばして、静かだが威圧感の有る声で、3人の女生徒に命じる。
 無言で立っていた、他の副委員長達の雰囲気も、スイッチが入った様に同時に変わった。
 その瞬間、女生徒達は弾かれた様に、クラス委員達から手を放し、一歩下がって
「あ、すいませんでした…」
 気圧された様に頭を下げて謝罪する。

 流れの中での、自然な上下関係。
 いや、それとは少し違う、支配者と服従者の立ち位置を、違和感無く感じさせる。
 そんな雰囲気が、狂に許可を得た委員長達から漂っていた。
 女生徒達は、委員長達から少し離れた位置で、萎縮し項垂れ、上目遣いに変貌した男子生徒を見る。
 他の女生徒も委員長達の雄への変貌に、目を丸くして驚く。

 このクラスの委員達は、狂のコネクションにより、夏休みの指名就任から、独自の教育を受けている。
 狂はサディスト生徒の中から、モノに成りそうな生徒を選抜して、自分のクラスに割り振りB組を構成していた。
 狂の意図したとおり、クラス委員達は狂の用意した教師達に鍛えられ、以前とは比べものに成らない、雰囲気を纏う。
 教育の中でクラス委員達は、狂のポテンシャルを知り、狂に傾倒して師事していった。
 素質のある者が、高いモチベーションを持ち、優秀な教師に教わって、目標を見定めて追いかける。
 そんなクラス委員が、この学校の生徒の中で、突出して行くのは当然だった。

 狂は絵美の後ろの自分の席に着くと、携帯電話を取りだし
「もしも〜し、伸也? 解禁だ、各クラスに伝達するから、好きな様にやれよ…」
 伸也に電話をして連絡する。
 狂は携帯電話を片づけながら
「よう、もう席に戻れよ…。もうじき、授業が始まるぜ」
 絵美に話し掛けた3人に告げた。

 3人は、狂の言葉を聞いて、コクコクと頷き自分の席に戻り、他の生徒もそれに習う。
 調教解禁に成った、2年B組のクラス委員達は狂にスッと頭を下げて、自分の席に戻る。
 女生徒達の中で、何か言いしれぬ緊張感が増し、6時限目の授業は誰も頭に入らなかった。
 授業終了のチャイムが鳴り、教師が教室を出て行くと、クラス委員は音もなく立ち上がり、最後尾の席からそれぞれおのおの、自分の目当ての女生徒に近づき
「少し話がある。こっちへ来てくれ」
 耳元に囁いて、教室から連れ出す。
 図らずしもクラス委員達に連れて行かれた、女生徒達は3人共、絵美に声を掛けた生徒達だった。
 女生徒達はクラス委員に戸惑いながらも付き従い、教室の外に出て行く。
 その光景をその他の女生徒が、固唾を呑んで見送り、狂は笑いを噛み殺していた。

 それが昨日の放課後の事だった。
 絵美はその事が有り、まだ登校していない、当事者達がどう成ったか狂にも知らされて居らず、少し不安を感じながら、狂の登校を待っていた。
 絵美が呆然と待っていると、絵美の携帯電話が鳴り出し、絵美は慌てて取り出した。
 携帯の着信は狂からで、絵美は急いで耳に当てる。
『おう、何ぼ〜っとしてんだ?』
 狂は笑いを含んだ声で、絵美に問い掛ける。

 絵美はその言葉に驚き、辺りをキョロキョロと見渡すと、教室の隅の天井に付いている、半円球の監視カメラがスーッと動いて居た。
(あ〜…狂様、旧生徒会室に居たのね…)
 絵美は狂の言葉とカメラの動きで、直ぐに狂の居場所が分かった。
「そっちに行っても良いですか…」
 絵美が小さな声で、問い掛けると
『いや、そこに居ろ。もうじき、お前の僕が来る…』
 狂が絵美に告げ通話を切ると、教室の扉が開いて、昨日の3人の女生徒が登校して来た。

 絵美は3人を見る成り、目線を伏せて携帯電話を片づける。
 絵美は反射的に目を伏せたのだが、その目の隅に違和感を感じ、ソッと目線を上げた。
 すると、目線を上げた絵美に対して、3人は真っ直ぐ向かって来ている。
 昨日の続きかと思い、身構えた絵美は、3人の変化に気付いた。
(あれ? 頬が赤いし、目が潤んでるし…、それに鍵の色が、銀に変わってる…)
 絵美が目を細めて凝視すると
(あぁっ! 色がピンクがかってる…。と言う事は…、奴隷に成ったのね…。あっ![僕]って、彼女達?)
 絵美は少女達から放たれる、雰囲気の色を見て、狂の言葉を思い出す。

 3人のクラスメートは絵美の前に立ち止まると
「西川様…あの…少し宜しいでしょうか…」
 小声で絵美に、話し掛ける。
 絵美は敬称を付けられ、どぎまぎしながら、頷くと席を立った。
 絵美は3人のクラスメートに囲まれ、教室を出て行く。
 他のクラスメートは、その光景を見て固唾を呑んで見送った。

 4人が廊下に出ると、誰1人として廊下には人影が無く、閑散としている。
 奴隷生徒は登校を終え、調教生徒の登校には、まだ少し早い。
 そんな時間帯の為だった。
 4人は全く人気の無い廊下を奥に移動すると、絵美の前にいきなり3人が平伏し
「知らぬ事とは言え、昨日の非礼の数々申し訳御座いませんでした!」
 絵美に謝罪を始めた。

 クラスメートは絵美が止めるのも聞かず、延々と謝罪の言葉を告げ、ひたすら謝り続ける。
「も、もう! 解ったから、止めなさい!」
 絵美が最後には命令して、3人の謝罪は終わった。
[ふうっ]と大きな溜息を吐いて、絵美が3人の激しい謝罪に一息吐くと
「私のご主人様の事は、まだ秘密らしいの。だから、それがバレる様な行為は、極力控えなきゃいけないの。だから、こんな事もう止めて…ねっ…」
 背後を気にしながら、3人のクラスメートに頼み込む。

 3人は再び謝罪しながら、絵美に約束した。
 絵美はその姿を見て、目を右手で覆い
(だから、それが駄目なんだって…)
 心の中で、呆れながら呟いた。

 クラスメートの話では、3人は昨日の放課後からクラス委員3人に調教を受け、服従を誓いそれぞれ銀鍵を授けられた。
 3人は調教を受けながら、この学校の目的、各鍵の意味、クラス委員の序列、それに伴う奴隷の序列、様々な事を教えられ、自分達がどれ程恵まれたクラスにいるのか、理解し感謝する。
 それは、学校のナンバー2の権力を持ちながら、それを嵩に着る事無く、厳格なポリシーで、女生徒自ら奴隷に成る事を少女達に選ばせる方針を執った、狂のお陰だと教えられた。
 そして、そのパートナーで有る絵美に対して働いた非礼を詫び、今後付き従う指示を各々の管理者に命じられた事を告げ、絵美に許しを請う。

■つづき

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