夢魔
MIN:作

■ 第30章 圧制26

 狂は明神の分析を聞きながら、明神の言った事が、事実と寸毫も変わらない事に驚いた。
「で…。それで、俺がどうして力を持ってるって、思ったんだ…」
 狂はユックリと、明神に問い掛けると
「緊張してたんですよ…。その店員が、まるで自分の生殺与奪を握っている者に会う様に…。丁寧な微笑みの下にハッキリと…」
 明神は狂の反応を見る様に、ユックリと口を開いた。
「そう、そんな反応を示すのは、この店のオーナーかそれに近しい存在…。それ以外考えられない…」
 明神は変わらぬ狂の反応に、焦れた様に言葉を付け足す。

 明神に視線を向けていた狂の口から、含み笑いが漏れ
「たった2分の接触で、そこまで憶測するか…? お前、病気だろ…。でよ、そんな慧眼を持ったお前が、俺をどう見る? 何か解ったか…」
 明神に問い掛けると、明神はユックリと首を左右に振り
「いえ、解りません。どこか輪郭がぼやけた様な…、焦点が合わない様な感じで、工藤さんの本質が読めないんです…」
 狂に淡々と正直に答えた。

 狂は余りにアッサリと、自分の敗北を認めた明神に少し驚き、直ぐに含み笑いを漏らした。
「何が知りたい? 答えられる事は答えてやろう」
 狂はズイッと身を乗り出し、明神の顔を楽しそうに見詰め、しっかりした声で告げる。
 狂の言葉に今度は、明神が驚きを浮かべ
「えっ? 僕は合格したんですか」
 狂に問い掛けてきた。
「合格もクソもねぇ、俺はお前を試す為に、ここに連れて来た訳じゃねぇ。学校だと都合の悪い事も有るから、ここに連れて来たんだ」
 狂は鼻で笑いながら、明神に答える。
 明神は狂の言葉に身を乗り出して、自分の感じていた疑問を口にし始めた。

 それは任命された時、サディスト生徒に示された、ポイント制の管理体制の事だった。
 ポイントとはその役職の基本ポイントと、管理している奴隷のポイントで算出され、それが役員個人のポイントに成る。
 このポイントにより、生徒の役員達はその役職が変わって行くのだ。
 交代可能な役職の一番上は生徒会会計とされ、その間の役職は、生徒会の書記、総務、各学年委員と成り、後は各学年同列で、各クラスの委員長、第1副委員長、第2副委員長と続く。

 このポイント差が、役員達の権力を決める。
 高いポイントを持っている者に対して、低いポイントの者は従わなくては成らない。
 そして、その服従は奴隷生徒にも当て嵌められる。
 つまり高位の役員の奴隷は、低位の役員の奴隷を服従させる事が出来るのだ。
 これは、学校内外を問わず、生徒間で徹底して守る様に通達されていて、それを破る事は重校則違反である。
 この規則に依り、下位に行けば行く程、服従する者が増えるのであった。

 そして上位下位の区別は、月末に各クラス毎のクラス委員のトータルポイントで決められた。
 毎週末に管理している奴隷が、試験をクリアするとそれは、管理者の個人ポイントと成る。
 その個人ポイントをクラスでトータルする事により、クラスポイントが算出された。
 そのクラスポイントが毎週末に比べられ、順位が付けられトップのクラスには、役員個人に20ポイントずつ与えられて、クラストータル60ポイントが与えられた。

 各役職間のポイントは、学年委員から上の役職は50ポイント、後の役員は20ポイントずつ離れている。
 その為A組を例に上げると、委員長300ポイント、副委員長280ポイント、第2副委員長260ポイントでトータル840ポイントと成る。
 B組は、委員長240ポイントから始まり、第2副委員長200ポイントで、クラスのトータルポイントは、660ポイントだ。
 A組とB組のクラスポイント差180ポイントは、週末の試験を3回トップに成れば埋められる。

 ポイントが逆転すると、次の月にはA組の役員と管理奴隷がB組に落ち、B組の役員と管理奴隷がA組に上がる。
 この時のトータルポイントで、B組落ちした役員がC組の役員よりポイントが低い場合は、そのまま3人ともC組まで落ちる。
 正に一時も気を抜けない立場に、クラス委員は立たされていたのだ。
 この規則のままでは、クラス委員達は躍起に成って、奴隷生徒を調教するしか無い。

 明神はこの規則に対する、決定的な欠点と隠された意図を見つけ、それを不満に感じていた。
 この規則のままだと、下位の者はどれだけ奴隷を調教しても、上位に上がる事は出来ないのだ。
 調教した奴隷を上位者が差し出せと言えば、それで終わりなので有る。
 そして権力を餌に役員達を対立させ、追い立てる為の規則としか言えない決まりに、明神は苛立ちすら覚えていた。

 だが、その規則がいざ、蓋を開けて新学期になると、見事に補正されている。
 先ず奴隷の譲渡は、役員双方の意志と奴隷の合意が無ければ、行う事は出来なくなった。
 これに依り、上位者が奴隷を掠め取る様な真似は、出来なくなる。
 次にクラス委員のクラス移動拒否が、可能に成って居た。
 これは、ポイントの移動をするだけで、役員がクラスを異動しないと言う物なのだが、これにより管理奴隷に成って居ない女生徒を置いて、クラスを代わらずに済み、長期的な展望で調教が可能となる。
 以前の規則では、学年委員以上の生徒は移動せず、その奴隷も移動しない。
 その為、明神は自分の仲間と言えるクラス委員が、コロコロ変わる恐れを払拭できた。

 明神はその規則の変化に気付き、学校を操作している人間が複数居て、その両者が必ずしも同じ考えでは無い事を推測したのだ。
 後はそれぞれの行動を注意深く見詰め、誰がどう言う立場の人間か判断して、狂に辿り着いた事を告げる。
 狂は明神の話を聞きながら、ジッと明神を見詰めその真意を推し量っていた。
 明神はそんな狂の目線を気にする事無く、一気に自分の考えを語った。

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