夢魔
MIN:作

■ 第30章 圧制30

 20程の表情を覚えさせると、次に悦子は仕草を教え込む。
 身体にシナを作り、手足でソッと乳房や股間を隠す姿勢から、それをオズオズと晒す仕草。
 フワリと舞う様に姿勢を正して正座し、優雅に頭を下げる仕草。
 あくまで儚げに、あくまで上品で、それでいていやらしさを漂わせる、そんな仕草を徹底的に叩き込む。
 久美は悦子の言うとおりに身体を動かし、全てを使って悦子の言葉を再現して行く。
 悦子は満足顔で久美を見下ろし、久美の躾を続けた。

 そして仕草を教え終わると、悦子は久美に命令する。
「タイプ15の表情で、タイプ8の仕草よ」
 悦子が命じた言葉に、久美の身体が即座に反応し、顔を真っ赤に染め、目に涙を湛えながら、眉根に困った様な縦皺が入り、薄く開いた唇の奥でピンク色の下がネットリと動いた。
 身体を隠していた手をソッと足に移動させ、膝頭に添えるとユックリと開いて股間を晒す。
 開いた股間の真ん中で、赤く尖った肉の芽がヒクヒクと動き、真っ赤に充血した肉の花がその花弁を広げ、中心の孔からトロリと濃密な蜜を溢す。

 悦子は久美の仕草に頷き
「そこから、タイプ3の表情でタイプ13の仕草、それが出来たらタイプ2の表情とタイプ10の仕草に移ってご覧なさい」
 久美に新たな命令を与える。
「はい、えつこさま…」
 久美は感情のない声で返事を返すと、開いた足を閉じながら、乳房を両手で抱え込み、懇願する様な視線を向け、抱え込んだ乳房を差し出して、蕩けた目線で悦子を見詰め睫を震わせる。
 久美は悦子の命令通り、仕草と表情を作り、命令に応えた。

 それが終わると、悦子は久美に次の命令を下す。
「さぁ、次は発声練習よ。私の言うとおりに声を出しなさい」
 久美は悦子に命じられるまま、声の出し方、台詞回しを教え込む。
 久美はそれらの物を頭に入れ、身体に染み込ませた。
 久美の出す声は悦子の指示により、鼻に掛かり甘える様な声から、切実な懇願まであらゆる感情が込められる。

 発声練習が終わると、悦子は表情、仕草、声、台詞を全て組み合わせて、久美を操作する。
 次々に指示を出して久美にあらゆるパターンを教え込む。
 それは、複雑なプログラムをコンピュータに打ち込む作業の様だった。
 [久美]と言う[被虐人形]のAIにプログラムを打ち込む悦子。
 悦子はその作業を[楽しくて堪らない]と言った顔で、行っていた。
 悦子の玩具第1号[被虐人形:久美]の第1段階完成は間近だ。

 その作業が終わる頃には、夜が完全に白んでいた。
 悦子は久美を見下ろしながら、残虐な笑みを頬に浮かべ、満足そうに頷いている。
 久美は悦子の足下で完全に自我を消し、悦子の命令に応えるだけの玩具に変わっていた。
 後は久美を実地に使い、そのAIに学習させ[自動操縦]が出来る様になれば、悦子の思い描く完成型なのだ。
 久美の脳の中は、あくまで清楚で可憐、それで居て淫蕩で扇情的に反応する情報だけに成っていた。
 それを経験で正確に選択出来る様になれば、久美の人形化は終了する。

 そう考えていた時、悦子の調教室の電話が鳴った。
 悦子が興を削がれて眉根に皺を寄せ、電話に出るとその表情が途端に緊張に染まる。
『悦子。貴女私の言いつけ、破ってないでしょうね?[工藤君の出した指示は絶対に守りなさい][奴隷に成る者に生涯消えない傷を付ける事は禁止]、この2つを破ったら、お仕置きするわよ…』
 電話口の向こうから、キサラの冷たい声が悦子の耳に飛び込んで来た。
 その電話は、悦子の様子がおかしかったのをキサラが懸念し、釘刺しの為の電話だった。

 悦子はキサラの言葉を聞いて、急速に現実に引き戻される。
「は、はい! 解っています、キサラ様…。決してそのような事は致しません」
 悦子は声を裏返らせ、引き痙った表情でキサラに思わず嘘を吐いてしまった。
『ふ〜ん…。解っているなら、良いけど…。まぁ、良いわ…今日の放課後時間を空けておくわ、貴女の奴隷連れて来なさい。居ないなんて誤魔化し聞かないわよ…、ちゃんと知ってるんだからね…』
 キサラは自分の用件を告げると、サッサと電話を切った。

 悦子は蒼白の顔で、呆然と佇む。
(やばい! やばい! やば過ぎる! どうしよう…、完全にバレてる…。キサラ様に折檻されちゃう!)
 悦子の膝がガクガクと揺れ始め、久美の方に視線が向く
(こいつ見られたら、絶対に怒られるわ。確かにやり過ぎちゃったもの…。どうしよう…)
 久美はあの百合の花の様な上品な微笑みを浮かべ、床に座り込み腰を快感にくねらせている。
 その瞳は何も考えて居らず、何も見ていない。
 見る者が見れば、完全に自我が崩壊している事を、一目で判断できる表情だった。

 悦子はキサラに指名当初から見込まれ、殆ど寝食を共にし、その技術を叩き込まれた。
 その為悦子はサディストとして急速に成長し、めきめきと頭角を現す。
 そして悦子はキサラを尊敬し惹かれながら、同時にキサラの恐ろしさを骨身に刻んだ。
 そんな悦子をキサラは可愛がりながら、何度も釘を刺し、狂の指示を守り、奴隷を育成する事を約束させていた。

 だが、悦子はその約束を見事に破っていたのだ。
 久美の調教は、本来解禁前に行ってはいけなかったし、虫ピンも身体に残してはいけなかった。
 当然、自我が崩壊するまで追い込む様な調教は、論外だったのだ。
 悦子は久美を調教する手が、何故止まらなかったか、激しく後悔する。
 今更どうする事も出来ない事を認識し、必死に打開策を考えた。

 悦子はウロウロと調教室を歩き回り、顎に手を当てて必死で考え込む。
(どうしよう…。こいつを元に戻す…? 出来ないわよ、そんな事…。それに、ここまで成ったのを戻すなんて、勿体ないわ…凄い完成型よ…こんな、エロい玩具何処にもないわ…コレを壊すなんて、勿体無さ過ぎよ…)
 悦子は自分がピンチに立っているのは理解しながらも、久美の出来映えに満足して、それを壊す事が出来なかった。
(やっぱり、理事長様に直に納入するしかないわ。この玩具なら絶対気に入る筈よ! そう成って貰わないと、私が折檻されちゃう!)
 悦子は自分が助かり、尚かつ久美を壊さなくて済む方法を、理事長に求めた。

 答えを出した悦子だが、いかんせん肝心の理事長に会う術が無かった。
 悦子は考えに考え、白井に教えられた谷の顔を思い出し、接触方法を考える。
 成るべく自然に、自分の足下を見られない様に理由を考え、理事長との仲介を頼む。
 悦子にはそれしか方法がなかった。
 悦子はその方法を考え始めるが、中々妙案が浮かばない。
 時間は刻々と進み、悦子はドンドン焦り始める。

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