夢魔
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■ 第31章 農場13

 調教解禁に成って3日が経つと、学校内に少しずつ変化が出て来た。
 首輪の色が緑色に変わり、銀色の鍵を付けている者が、ちらほらと現れる。
 彼女達は皆一様に誇らしげに歩き、その変化を誇示している様だった。
 そして更に白鍵が増えており、それらの少女達は項垂れて、廊下を歩いている。
 徐々に女生徒達の間で、ランクが分かれ始めていた。

 そしてそのランクが分かれる原因を、黒鍵以下の女生徒は知らない。
 勿論黒鍵から白鍵、逆に白鍵から黒鍵に変わる方法は熟知している。
 そのシステムは完全に学校内に浸透していたが、銀鍵以上に変わる方法は誰も知らなかった。
 これは、自分のランクを上げる為に、奴隷に成る者を防ぐ為だったが、今では思わぬ効果を産んでいた。
 その効果とは、有る程度覚醒した女生徒達の忠誠心が上がり、クラス委員達の支配下に、進んで入る様になった事だ。

 それに伴い、クラス内で3つのグループが形成され始める。
 1つは緑首輪に銀鍵をした調教中の奴隷。
 1つは覚醒が進み、支配と服従に興味を持ち始めた集団。
 そして最後は、覚醒が遅れ学校の変化に戸惑い怯える集団。
 これらのグループ分けが自然に行われ、クラスの雰囲気が変わって行った。

 その変化は、クラス委員達が伝えた、学校側からの通達が強く影響している。
 それは、毎週末に[試験]が執り行われ、女生徒は任意で[試験]を受けるようにと言う物だった。
 [試験]は耐性、身体能力、技術に大分され、その中で更に細分化し、全部で30種類程有り、それぞれ初級から上級の3段階に分かれ、それに応じて成績が付けられる。
 その成績は女生徒自身の個人成績で、ポイントには関係ないが、好成績を収める者は必然クラスでの立場が強くなる。
 女生徒達はどの試験を幾つ受けるか、自由に決められ一気に成績を上げる事も可能だった。

 そして女生徒達には知らされていないが、この[試験]はクラスの編成にも、大きな意味を持っていた。
 ここで出た合格者の成績が、トップのクラスにはクラスポイントが加算される。
 だが、一挙に大量の合格者を出せば、その週のトップは取れるが、翌週にはそのポイントは0に戻ってしまうためアドバンテージには成らないのだ。
 トップを取るのには1人でも、1ポイントでも他のクラスを上回れば良いので有り、大差を付ける必要は無い。
 確実に上回る事が出来るなら、女生徒のテストを翌週に回した方が得策なのである。
 こうして委員はバランスを取りながら、確実に合格者を出し、他のクラスのポイントを分析して、女生徒にテストを受けさせねば成らなかった。

 この[試験]が決められた経緯は、新学期前に伸一郎と狂の方針の違いから生まれた。
 クラス委員達にはランクを決めており、最初は個人のランクが低く、1人ずつしか奴隷を調教出来ないように設定している。
 その為、どうしても奴隷化が遅れてしまうと、伸一郎は心配して強制的な調教を命じたが、狂がそれに断固反対した。
 2人の意見は平行線をたどり、キサラが中を取って、[強制的な調教をせず、尚かつ奴隷化を進める]方法として素養を身に付ける、段階的な[試験]を行う事を提案する。
 伸一郎と狂はこの折衷案に双方納得して、[試験]を取り入れた。

 だが、この[試験]の採用は、もともと狂の計画だった。
 伸一郎に狂が提案すれば、反対するのは目に見えていたから、狂はキサラを使って認めさせたのだ。
 その取り決められた[試験]が、とうとう来週末始められるとクラス委員達に伝えられた。
 これは計画には無かった事だが、悦子に対する対策の一環だった。
 悦子は白鍵以下の奴隷を自由に選べる権利と、調教に口出しさせない権利を手に入れたため、殆どやりたい放題だ。
 だが、[試験]の成績により今の白鍵達を黒鍵に上げれば、悦子に手出しは出来なくなる。

 これに依って最悪、悦子のターゲットに成るのは、3−Aの生徒と首輪無し以下の生徒だ。
 40人程の生徒は危険に晒すが、後の400人以上は守りきれる。
 しかし、悦子が本気で動けば、それも危ういのも事実なのだ。
 何せ悦子は懲罰機関の長だから、罪を作り上げて白鍵に堕とす事も可能なのである。

 これは、2日前の夜に5人が集まり、話し合った結果であった。
 今までルールや方針を決めていたリーダーは、オーバーワークの為、主人格の意識の底に沈んだままで、いつ目覚めるか全く見通しの無い中、話し合いは始まる。
 リーダーの狂が居ても同じ結果だっただろうが、最悪の状況で誰1人打開案が浮かばなかった。
 更に純の優柔不断な態度が、4人の神経を逆撫でし険悪な雰囲気を生み、一時はグループ解散の危機にまで発展しかけた。
 そんな中ボソボソと純が提案したのが、この[試験]による対策だったのだ。
 後手後手に回らざるを得ない中で出た、苦肉の策だったが、誰もそれ以上の上策は浮かばなかった。

 5人は歯噛みする様な気持ちの中、それぞれ関係者達に話し合いの翌日、結果を通達した。
 だが、5人の気持ちとは裏腹に、女生徒達の反応は驚くべき物だった。
 一部の生徒達を除き半数以上が、その[試験]に肯定的だったのだ。
 理由は銀鍵の存在が大きく、その待遇の差に女生徒全員が羨望の眼差しを向ける。
 羨望は願望に変わり、殆どの者が積極的に[試験]を受ける意志を見せた。
 それどころか、一部の生徒は教師達に相談し自ら[補習]や[宿題]を求める。
 [補習]や[宿題]は狂達が付けた名では無く、女生徒達の隠語から始まり、瞬く間に拡がって[試験]の開始が通達された翌日である今日には、学校内で公然と使われる様になった。
 そんな中女生徒達の中で、覚醒が強い者はコソコソと教師に近づき、相談を始める。
 そして、その相談は有る者達に集中した。

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