夢魔
MIN:作

■ 第31章 農場14

 教室棟の廊下を歩く由香に、1人の女生徒がコソコソと近づき
「あ、あの〜…藤田先生…ちょ〜っと良いですか〜…」
 顔を赤らめながらモジモジとした仕草で、声を掛けてきた。
「ふにゃ? なに? 私に用事?」
 由香は少し驚きながら、3−Cと記されたバッジを胸に付けた女生徒を見る。
「は、はい…。あ、あの〜少し、お願いが有るんですけど…」
 女生徒はモジモジと煮え切らない態度で、由香に何かを依頼しようとしていた。

 由香が不思議そうな目で、女生徒を覗き込むと
「あっ! 居た、居たーっ! こっちよ〜」
 廊下の向こうで、別の女生徒の声が聞こえ、小走りに3人の女生徒が、近づいてくる。
 由香はその女生徒達を見詰め、驚きながら目の前の女生徒の知り合いかと考え、交互に見詰めた。
 3人の女生徒は、由香の周りを取り囲むと
「あの〜藤田先生! ちょっと、教えて欲しい事があるんです!」
 息を切らせながら、由香の腕を掴んで、話し始める。
 女生徒達の胸には3−Bのバッジが付いており、前から居る女生徒には視線すら向けない事から、別のグループだと解った。

 前から居る女生徒は、新たに来た女生徒グループに弾き出され、由香から離されると
「わ、私が先に頼んでたのに…。酷いわ…」
 女生徒グループに不満を溢した。
「あら、あんたC組ね…。私達はB組よ、何か文句でも有るの?」
 冷たい目線で睨み付けて、女生徒に問い返す。
 C組の女生徒は、その言葉でスゴスゴとその場から逃げ出した。

 B組の女生徒グループは、逃げた女生徒の後ろ姿にフンと鼻を鳴らし、由香に向き直ると
「あ、あの〜藤田先生の、その鍵に付いてる、プラチナの番号札って、先生のポイントなんですよね…」
 目をキラキラさせながら、由香の首輪に付いている、プラチナ製の丸い番号札を覗き込む。
 現在の奴隷教師達はかなりの数、高ポイント者が居る為、伸一郎が差別化の為にその番号札を付けさせたのだ。
 6〜10ポイントは銀、11〜15ポイントは金、16〜20ポイントはプラチナで、それぞれ持ちポイントの数字が打ち出されている。

 由香は17と打ち出された、番号札に手を触れ
「あ〜…それ、誰にも言っちゃイケないのに…。誰に聞いたの〜」
 女生徒達に頬を膨らませながら、問い詰めた。
「ほら、やっぱり本当だったんだわ、凄い、凄い! 藤田先生が、この学校のトップなんですね」
 女生徒達は3人で手を取り合いながら、キャッキャと騒ぎ始める。

 由香は女生徒達にカマを掛けられた事を知って、頬を大きく膨らませて
「騙したのね〜! もう、知らない!」
 プンと鼻で空を切り、女生徒の輪から出て行こうとする。
 女生徒達は大慌てで由香を引き止め
「ま、待って下さい、ごめんなさい藤田先生! 騙す積もりなんて無かったんです」
 必死で謝りながら弁解した。

 女生徒達の必死な態度に、由香が歩みを止めると
「私達に[補習]をして欲しいんです…」
 1人の女生徒が頭を下げながら依頼し、後の2人がそれに続く。
「[補習]…? 何それ〜…」
 由香が不思議そうに、女生徒に問い掛けると
「あ、あの…、私はお口の使い方を…教えて欲しいんですけど…」
「あ、私はその〜…お尻って、どうやって鍛えるんですか〜?」
「あの、あの〜…私は、痛い事を頑張る方法を教えて欲しいんですけど…」
 少女達は顔を真っ赤に染めながら、由香に相談した。

 由香はその言葉を聞いて、キョトンとした表情になり、直ぐにクスクスと笑い始め
「そ〜れ〜は〜、私に言っても駄目〜。私はこの身体を、自分の意志で使えないの〜…。有る方達の命令が無いと、私達黒首輪は、何にも出来ないのよ〜」
 女生徒達に、悪戯っぽく答える。
 女生徒達は由香の言葉に、直ぐに有る教師達を思い出す。
「あ…、黒澤先生達ですね…。あの〜…、黒澤先生に、お話ししても良いんですか…?」
 女生徒は由香に恐る恐る問い掛けると
「ん〜? どうして、だって先生なのよ…、相談事が有るなら、聞くのが普通じゃない? それとも、男の先生だから嫌?」
 由香がニッコリ微笑みながら、女生徒に問い返す。

 女生徒達は、3人とも俯くと
「え〜っと…そうじゃ無いんですが〜…。あの〜…何か〜…、近寄りがたくて…」
 モジモジとしながら、ブツブツと呟いた。
「怖いの?」
 女生徒に由香はソッと問い掛けると
「いいえ、怖いんじゃ有りません! そんな事じゃないんです。でも、黒澤先生に見られると、足が竦んじゃって身体が震えるんです…」
 女生徒は顔を跳ね上げ、子羊の様に震えた。

 由香はニッコリと微笑んで震える女生徒の頬に手を添え、優しく撫でながら
「それはね、怖いの…。貴女の日常が…、貴女の常識が…、音を立てて崩れそうな予感を、貴女の身体が感じてるの〜…。でもね〜、それは今までの経験が崩れるだけ〜…。悩む事なんて無いのよ…心のままに、思いのままに、貴女達は振る舞えば良いのよ…」
 女生徒に告げる。
 女生徒はそんな由香を見詰めながら
「はい…はい、先生…」
 何度も頷いた。
 由香は優しい微笑みを向け、女生徒達に頷き返した。

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