夢魔
MIN:作

■ 第31章 農場17

 一方久美は小室の手により、あらゆるSEXを施され、薫に日常の行動を教え込まれ、その全てに用意された表情、仕草、声、あらゆる反応を組み合わせ、覚え込まされていた。
 異様な程の記憶力を持つ小室は、久美に指示を出しながら、全く同じ行動を取り、久美に追体験させ身体と脳に叩き込む。
 この教育により、久美はあらゆる行動に対して、それぞれ6つ程の分岐パターンを覚え、その表情と反応の変化を無数の組み合わせで覚え込んだ。
 小室の教育により、久美はSEXをしている間は、何の違和感もなく行動出来るようになった。
 だが、それは単純にパターンの組み合わせで、久美は何も考えていない事には変わりがない。
 久美の自我は、今では意識の奥底に、ゴミのように追いやられていた。

 薫はそんな久美が、手を離れた場合に対する、あらゆるパターンを想定し、久美に受け答えを教え込む。
 久美は家畜生徒とは違い、今日にも一旦家に帰さなければならない。
 そのため、家に帰った時に家族との会話が当然有り、それに反応しなければ、家族は久美を医者に連れて行くだろう。
 そうなった場合、久美の身体の装飾が家族に知れ、家族は思いきった行動を取りかねない。
 それは、絶対に避けなければ成らない。
 暫くは骨伝導スピーカーマイクと、首輪の機能を使い指示を出して操る予定だが、それにも限界がある。
 それを補う為の基本パターンを薫は50程教え込んでいた。

 悦子がローザを嘲笑っていると、終業の時間を知らせるチャイムが鳴る。
「あら、もうこんな時間…。白井先生、小室、ローザをお願いね、私達は久美を家に返すから」
 悦子が白井と小室に告げると、2人はコクリと頷き、悦子はローザに視線を向け
「私の変わりは、白井先生よ。良〜く言う事を聞くのね」
 白井に支配権が与えられた事を伝えた。
 その言葉を聞いて、ローザの無意識が、白井を支配者と認識し、悦子に対するのと同じ効果が身体の反応に現れる。
「さあ、お勉強の時間よ〜。これからタップリ、お前の身体を開発して上げるからね」
 白井は嬉しくて堪らないといった口調で、ローザを見下ろした。

 悦子は久美を連れて薫と調教室を出ると、教室に向かう。
 悦子が教室に入ると、教室の空気がピンと張り詰め、全員が背筋を伸ばし深々と頭を下げる。
 悦子はそんなクラスメートを全く無視し、自分の荷物を手にすると、サッサと教室を出て行った。
 教室を出ると、自分の鞄の中から、聞き慣れない音楽が流れてくる。
 訝しんだ悦子は鞄の中を覗き込むと、久美の携帯電話が鳴り響いていた。
 調教が始まって直ぐに、久美から取り上げていた携帯電話を、鞄に放り込んでいた事を思い出して、久美の携帯を手に取り開けると[ママ]と着信相手の名前が出ている。

 悦子は鼻で笑うと、携帯電話を久美に手渡し
「さあ、安心させて上げなさい…[今から、帰る]ってね…」
 ニヤリと笑って、久美に命じながら、イヤホンマイクを自分の右耳に耳に取り付けた。
「はい、悦子様」
 久美は携帯電話を受け取り、通話ボタンを押すと
「ママ…、久美です」
 明るい声で、母親に語りかける。

 電話の向こうで息を飲む気配がして
『久美…久美ちゃんなの? …久美ちゃんよね…。どう? 大丈夫だった? 辛くなかった? ちゃんとご飯食べれたの?』
 母親が震える声で、矢継ぎ早に話し掛けて来た。
「うん、久美よ…。今から帰るから…、うん。うん…解った…。大丈夫よ、真っ直ぐ帰るって…。じゃぁね…」
 悦子の囁く声を、久美がオウム返しに明るい声で携帯電話に話し掛け、通話を切る。

 久美が携帯電話をスッと降ろすと、悦子が直ぐにそれを取り上げ、手で弄びながら
「どうやら、問題なく機能しそうね…。イヤホンマイクにも、ちゃんと向こうの電話の声が聞こえていたし、問題は無いわ」
 薫の顔を見てニヤリと笑う。
 薫は耳に手を当て、自分のイヤホンマイクを操作しながら
「そうですね、タイムラグも発生していませんし、会話もおかしくは無かったです」
 盗聴していた、今の会話に対する感想を告げた。

 2人はお互いに頷き合うと、薫は悦子にペコリと頭を下げ
「じゃぁ、私は先に風紀委員長室で、久美を操作します」
 悦子に挨拶すると、エレベータの乗り口に向かう。
 悦子は薫に手を振ると
「じゃぁ、私はこれを連れて行くから。良い最初の数時間が正念場よ、そこで違和感を与えたら、台無しだからね」
 薫に注意を与え、笑顔で管理棟を出て行く。
 悦子が校門を出て行くのを見送った薫は、直ぐにエレベーターに乗り、風紀委員長室に向かった。

 悦子は久美と並んで、久美の家まで進み、呼び鈴を押した。
 数秒後、家の中から久美の家族が、揃って玄関を飛び出して来る。
「ただいま」
 久美が家族に向かって、ニッコリと零れるような笑みで、帰宅を告げると
「お、おぉ〜…おかえり。お帰り久美…」
 父親が何度も頷きながら、嬉しそうに久美を迎えた。
「お帰りなさい久美ちゃん…。本当、辛くなかったの…?」
 涙を浮かべながら、久美に問い掛ける。
「久美、大丈夫だったか? 酷い事されなかったか?」
 兄が真剣な顔で、久美を覗き込み問い掛けた。
 その日久美の家族は、全員が会社を休み、朝から久美の帰りを待っていたのだ。

 久美は少し困った様な表情を浮かべ
「ちょ、ちょっとみんな待ってよ、悦子さんが驚いてるわ…。折角今日も送ってくれたのに。ごめんなさいね、悦子さんみんな大げさで…」
 家族の行動を止めると、悦子に向かってにっこりと微笑む。
「いいえ。久美さんはそれだけ、家族の方に大事にされてるんですわ…。素晴らしいご家族ね」
 悦子は少し遠慮がちに微笑み、久美に答える。
(その大切な娘を私が、SEX人形に変えたって知ったら…。こいつ等どんな顔するだろう…)
 悦子は表面に浮かべた微笑みとは、全く別の微笑みを内心で浮かべ、久美の家族を見渡した。

■つづき

■目次4

■メニュー

■作者別


おすすめの100冊