夢魔
MIN:作

■ 第31章 農場28

 女生徒が呟いていると、女教師は真の胸から離れ、何度も頭を下げながら、元の角を曲がって校舎に返っていった。
 真が女教師を見送り、腰を下ろして作業を再開すると、数分もせぬうちに今度は別の女教師が、真の元に現れ身体を押しつけながら、何かを懇願している。
 真は頭を掻いて困ったような仕草をすると、女教師に頷いた。
 すると、女教師は嬉しそうに飛び跳ねながら、ブラウスのボタンを外し、その豊満な胸を真に向かって差し出す。
 真はその乳房にソッと手を載せると、女教師は歓喜に震える仕草で、身体をくねらせる。
 少女達はその光景を呆気に取られて見詰め、声も出なかった。

 その中で1人が始業時間が迫っている事に気付き、他の2人に急ぐよう促すと、3人は焦りながら、不思議そうな、訝しそうな表情を浮かべ、教室に戻った。
 そして3人の少女の[真]観察は続き、休み時間毎に、真の姿を探し回る。
 真が人の行き来する場所に居る時は、軽く会釈して挨拶する女教師達が、人気のない所で真を見つけると、女教師達は必ず真に寄り添い、縋り付いて真に身体を委ねた。

 そして、昼休みに成ると昼食を済ませて直ぐ、真を探して学校中を回った少女達は、有る事に気付き第1体育館の見える柱の影で、ヒソヒソ話しを始める。
「ねぇ、あの用務員に言い寄ってた先生達もそうだけど、黒澤先生とか大貫先生みたいに力の有る先生や、その先生達の取り巻きの先生…1人も見ないね…」
「うん…、それに第1体育館の扉…、鍵が掛かってるみたいだし…。あの奥に集まってるのかな…」
 2人の少女がヒソヒソと話し合っていると、消極的だった少女が、ブツブツと呟き何かを考えていた。
「あんた、何してんの? さっきからブツブツ独り言言って…」
 少女が問い掛けると、消極的だった少女が
「う、うん…。工藤様が廊下で言った事が、凄く気に成ちゃって…。昨日、あれだけ困らせたのに、わざわざ私達を追いかけて来て、言った言葉なのよ…。絶対意味があると思って…。それに、どこかで聞いた気がしたし…」
 純の言った言葉の意味を考えていた。

 2人の少女は呆気に取られた表情をして
「ねぇ、あなた、言われた言葉ちゃんと覚えてるの?」
 消極的な少女に問い掛けると、少女は上目遣いに友人を見ながら、フルフルと首を振った。
「あ〜…、もう、ホント呆れた…。そんな、覚えても居ない話で頭を悩ませないで、今この目の前の状況に頭を使いなさいよ! あんた、この中で、1番頭が良いんでしょ。それを今使わないで、いつ使うの!」
 積極的な少女に捲し立てられ、少女は項垂れて押し切られる。
 その時、昼休みの終了を告げるチャイムが鳴り響き、少女達は慌てて教室に戻っていった。

 少女達は5時限目が終わった休憩時間に、顔を突き合わせて相談をし、放課後直ぐに第1体育館の1階を探索する事にした。
 放課後直ぐだと指導教師達は、暫くは会議等に参加する為、見張りに立てない事を少女達は知っていたからだ。
 そして、少女達3人は計画通り、放課後直ぐに第1体育館の1階が見える柱の影に移動した。
 3人が到着すると、第1体育館の扉には、鍵が掛かっており、入る事が出来なかった。
 消極的な少女は、その時点で帰る事を提案したが、2人の少女は諦めきれず、もう暫く様子を見る事にする。
 消極的な少女が、渋々了承すると、校舎の方から1人の女教師が、小走りに走って来た。

 3人が慌てて柱の影に入ると、女教師は1階の扉の鍵を開け
「あっ! いけない…。大事な物忘れちゃった…」
 呟いて、慌てて校舎に戻って行った。
 その光景を見ていた少女達は、顔を見合わせて
「い、今、このタイミングしか無いと思わない? サッと入って、確認したら直ぐに逃げましょ」
「う、うん、そうだね! 今しかないよ」
 2人が頷き合って立ち上がると、消極的な少女も仕方無く立ち上がり、後に続く。

 ソッと扉を押し第1体育館1階の中に入ると、中は静まり返っていた。
 少女達は周りを気にしながら、柔道場の扉に手を掛けるが、鍵が掛かって居て開かなかった。
 合気道場も倉庫も同じく、鍵が掛かっており出入りが出来ない。
 後は、奥まった剣道場を残すのみとなり、3人は扉に手を掛けた。
 扉は他の部屋とは違い、スッと滑らかに開く。
 期待に胸を膨らませながら、3人は剣道場の扉を開け、中を見て驚いた。

 そこは、広大なリビングのように成って居る。
 部屋の中央には大きなテーブルが置かれ、その周りに3人掛けのソファーが4つ並び、囲むように1人掛けのソファーが2つ配置され、大きな液晶テレビや各種AV器機が並び、様々な本が収められた書棚やラックが置かれていた。
 部屋の隅には食器棚が2つ並び、冷蔵庫や流し台迄付いている。
「な、何…ここ…。誰か住んでるの…」
 積極的な少女が呆気に取られ、中に脚を踏み込んだ時。
「あっ! あ〜〜〜っ…」
 消極的な少女が、大きな声を上げ、少女達の動きが固まる。

 驚いた積極的な少女が顔を覗き込み
「な、なに?」
 引き痙った顔で、消極的な少女に問い掛けると
「お、思い出した…」
 ボツリと少女が呟く。
「あ、戻って来た!」
 もう1人の少女が、入り口に教師が近づいて来るのを目撃し、2人に伝える。

 3人は大急ぎで、剣道場に入り込み、隠れる場所を探した。
 入って左手に進んだ、消極的な少女が引き戸を開くと、そこは3畳程の物入れに成っていて、竹刀や打ち込み人形が入っていた。
 3人は迷わずその中に身を隠し、物入れの扉を閉める。
 その扉を閉めるのと、ほぼ同じタイミングで、剣道場の扉が開いて、ザワザワと数人の話し声が聞こえた。

 物入れの扉は通気性を良くする為に、足下と胸の少し上ぐらいの位置に、メッシュの通風口が作られていて、そこから外の様子が見て取れる。
 入って来たのは、10人程の女教師達だった。
 女教師達は口々に談笑をしあって、掃除を始め料理の準備をする。
 呆気に取られた積極的な少女は、俯き項垂れる消極的な少女に、小声で問い掛けた。
「あんた、さっきの大声…、何を思いだしたのよ…」
 消極的な少女は、泣きそうな顔を上げ
「工藤様が仰った言葉の意味…解ったの…。[好奇心は猫をも殺す]って仰たのよ…」
 積極的な少女に、純の言葉の意味を理解した事を告げる。

 積極的な少女は、消極的な少女の今の表情を、過去に2度見ていた。
 その両方、自分達はかなり酷い目に遭っている。
 その事を思い出しながら、積極的な少女はソッと少女に問い掛けた。
「[好奇心は猫をも殺す]って言うのは、[過ぎた好奇心を持つと、身の破滅になる]って意味なの…」
 消極的な少女は、今にも泣き出しそうな表情で、小声で純の忠告を仲間に告げる。
 しかし、その意味が解った時には、事態は最悪の状況に成って居た。
 正に後の祭りである。

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