夢魔
MIN:作
■ 第31章 農場41
水無月家の家族を拉致した車は、住宅街の一角に有る、巨大な塀で覆われたブロックに入って行く。
その辺りの住宅街は、碁盤の目の様に綺麗に区分けられた住宅地で、ワンブロックの大きさは約200坪、その坪数に2軒から4軒の家が建てられ、整然と並んでいる。
その住宅地の外れ3×3ブロックを、高さ3mの壁が覆っていた。
壁は最近作られた物で、道路をも分断して、作られている。
その壁は入り口が1つ有るだけで、後は360度壁で覆われていた。
ワンボックスが、その入り口の前に止まると、壁と同じ高さの鉄製のゲートが、内側に開きワンボックスを迎え入れる。
ワンボックスに続き、小室も車を中に入れると、鉄扉は静かに動き出し、重い音を立て閉じられた。
その中は、普通の家が、普通に建っていたが、この9ブロックの真ん中に、普通でない家が建っている。
それは、診療所で有った。
そう、それは金田の総合病院の分院だった。
僅かの間に、その辺りの様相は一変していた。
その分院が有る住宅地は元々は、昔からのある大地主の土地だったが、その持ち主が僅かな期間に2度3度変わり、今では全て、この市最大の実業家の物になっている。
その実業家が買い占めを終わらせると同時に、このブロックに元々住んでいた者を引っ越しさせ、壁で取り囲んだのだ。
あからさまに、怪しげだったが、誰もその実業家に口出しが出来ず、突如出来た監獄の様な場所を嘘ざむい目で見ている。
そして、この住宅地の人間は、このブロックに出入りする者から、目線を反らし、口を閉じていた。
このブロックが出来てから、既に4世帯が謎の失踪を遂げている。
どの家族も噂好きな母親が、居る家だった。
事実は住宅地の者達に重くのし掛かり、誰1人関係しようとは思わなく成って居た。
そこでどんな事が起こっていても、自分達が興味を示さなければ、不幸な事には成らない。
その一体の住人は、そう考えていた。
分院の駐車場に、黒いワンボックスが滑り込むと、その横に1台分のスペースを空けて小室の車が止まる。
ワンボックスが止まると同時に、分院の重そうな鉄扉が開き、中から目つきの鋭い白衣の男が2人で台車を押して出てくると、ワンボックスの中から、父母と兄を連れだしその台車の箱に押し込んだ。
その扱いは、完全に木偶人形で、人として扱っては居ない。
助手席から黒ずくめの衣装を着た、佐山が降りてくると、後部座席から同じ格好をした、目つきの鋭い男が久美を連れて降りてくる。
久美は男に連れられ車を降りて来ると、直ぐに路上に座り込み、アスファルトの上にオ○ンコを押しつけようとする。
「この女、車の中でも、こうやってずっと腰を動かしてるんですが、何か指示でもしてるんですか?」
男は久美の腕をしっかりと掴み、久美がアスファルトの上に、座り込まない様にしていた。
男の言葉を聞いた悦子は、直ぐに気づき
「久美。訓練終わりよ、ジッとして為さい」
訓練の終了を久美に告げると、久美はピタリと動くのを止める。
久美を掴んでいた男が、怪訝な表情を浮かべ、その手を放すと、久美はしゃがみ掛けた姿のまま、その動きを止めていた。
「久美。真っ直ぐ立ってこっちに来なさい」
悦子が指示を出すと、久美は身体を起こし真っ直ぐに立ち上がると、悦子の前にやって来る。
悦子は隣に立っていた薫に顎をしゃくると、薫は指示を出しながら、久美を小室の車の後部座席に座らせた。
「それじゃぁ、私達はこれで…」
悦子が佐山に頭を下げると、佐山はニヤニヤと笑いながら
「お嬢さん。面白い物を作ってますね…。それは、どうやって作ったんですか?」
興味津々の表情で、久美を見ながら悦子に問い掛ける。
悦子は佐山に視線を向けると
「追い詰めて、自我を潰しながら、痛みを使って行動を操作出来るようにしたんです。私にSMを教えてくれた方が、この方法も教えてくれましたわ」
悦子は佐山に強張った表情で、辿々しく全て応えた。
その反応を見て、佐山の目がスッと細く成ると、悦子の表情が更に強張り、汗がダラダラと流れ始める。
そして、その横に立ちつくす小室の表情も、悦子と同じように強張り、汗を流していた。
それはまるで、捕食者に対峙する、生き餌のような反応だった。
佐山はにっこりと微笑みながら、悦子と小室に
「大丈夫です。緊張を解きなさい…」
静かに命令すると、2人の身体からフッと力が抜け、汗が止まる。
佐山はその2人の反応を見て、ニヤリと笑みを溢すと
「面白い物を見せて上げましょう。ここは、私と有る方の研究所です。貴方方も興味をそそられると思いますよ」
悦子と小室に向かって、手招きして診療所に向かう。
2人は見えない糸に引かれるように、佐山の後に付き従った。
その2人の行動に、慌てて薫も分院に向かう。
分院内に入ると、待合室に成って居た所には、段ボールの山が積まれており、そこから診察室に入ると、1人の老婆がパソコンの前に、首輪で繋がれヨタヨタと動いて居る。
悦子達はその老婆をどこかで見た記憶があったが、それが誰なのか解らなかった。
その老婆はミイラのように痩せ細った裸身に白衣だけを纏い、自分の身体すらも支えられない様に、フラフラと動き、ひたすらカタカタとパソコンを操作している。
チラチラと白衣から覗く太ももは、艶めかしい白さを持っているが、大腿骨に皮膚が張り付いているだけで、動いて居るのが不思議なくらいだった。
佐山は悦子達の視線に気付き
「ああ、確か顔見知りですね。学校で養護教員をしていた、上郷です。この女、性器が馬鹿みたいに器用に動いて、研究員が使う度にダウンさせるんで、筋肉の動きを抑止する為に、筋弛緩剤を投与し続けたら、こんな姿に成ってしまいました。本職は薬の調合配分を決める薬剤師ですが、今では便所扱いにオ○ンコとアナルを使われています。こんな風に姿が変わっても、あそこは絶品らしいんで、結構便利に使っているようです」
その女性型ミイラの素性を明かすと、3人は表情を凍らせる。
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