夢魔
MIN:作

■ 第31章 農場47

 学校は日曜日で、休養日に入っていた。
 だが、校内には多数の生徒が行き来し、職員室前や管理棟地下に屯する。
 この生徒達は[補習]を受ける者や、クラス委員に呼び出された者など様々だった。
 クラス委員は管理奴隷を今は1人しか持てないが、その調教風景はクラスの女性徒に見せても構わない。
 午後から、上級指導教師や、キサラの査定を受ける為、クラス委員達は朝から力を入れて管理奴隷の調教を行い、その姿を一部の女性徒に公開した。
 クラス委員達は自分の次の管理奴隷候補に、自分の調教技術や方針を見せ、その能力を誇示する事で素養の高い奴隷を確保する。
 管理奴隷候補の女性徒達も、自分のクラス委員の技術が見られると有って、積極的に見学に来ていた。

 そんな女性徒達を管理棟の2階で、1人の女性徒が監視カメラの映像で覗いている。
 風紀委員長の悦子だった。
「あら、この子可愛いわね…。愛らしい玩具に成りそう…」
 そう呟くと、悦子は顔認識ソフトを使い、少女のクラスと名前を調べる。
「1年B組の河合」
 悦子がその少女のクラスと名前を読み上げると
「はい、今回の試験で24点を取り、1年の3位に入っております…」
 後ろで控えていた薫が、集計された試験結果を悦子に報告した。

 そして、桜が素早く書棚からファイルを抜き取り、河合の家族状況やプロフィールを報告する。
「現在の賞罰は?」
 悦子の問い掛けに純子がノートパソコンを操作し
「今のところ、賞罰は登録されておりません。黒鍵のままです」
 河合のデーターを報告した。
「そうね、この子も火曜日迄に白鍵に落としておきなさい」
 悦子が薫に命令すると
「悦子様…、これで5人目に成りますが…」
 薫が心配そうに問い掛けてくる。

 悦子は監視カメラの映像を見詰め、薫に視線を向けずに
「何? 私の命令に意見でも有るの…」
 囁く様に問い掛けると
「い、いえ、滅相もございません! ただ、あまり数をお増やしに成ると、調教をされる悦子様のお身体が心配で…」
 薫は顔を引きつらせながら、悦子に言い訳した。
 悦子はそんな薫の良い訳を鼻で笑い。
「良いのよ、今度の課題は[大量生産]なんだから、その中でどれだけクオリティーを維持出来るか…。それが課題なの…」
 ボソリと呟く様に答える。

 その言葉を聞いて、薫は少し眉を寄せ首を傾げた。
「[課題]と言いますと…。理事長様から、そのような物が出されたのでしょうか…?」
 薫はポツリと悦子に問い掛けると、悦子は驚いた様な顔を薫に向け
「[課題]? 私は、そんな話聞いてないわよ。理事長様から何か言ってきたの?」
 逆に問い掛ける。
 薫は悦子の問い掛けに、ゾクリと寒気を覚え
「いえ、何でもございません。私の勘違いでした」
 慌てて謝罪し、その場を誤魔化した。

 深く頭を下げた姿勢のまま、薫は悦子の変化を思い浮かべる。
(あの日から、少しおかしかった…そう、町外れの病院…。あそこから出て来た時から、悦子様の様子は変わり始めていたわ…。そして昨日の土曜日…お一人でお出かけに成られ、丸1日帰って来なかった…)
 薫は悦子の言動がちぐはぐに成っている事が、ささくれが刺さった様に、気になって仕方が無かった。
 誰かに相談したくて堪らなかったが、薫にその相手は居ない。
 頼りに成りそうな教師達は、皆悦子の事を快く思っては居ないし、それ程悦子の変化にも気づかないだろう。
 薫は悦子が現在、学校内で孤立している事を改めて認識し、その胸を痛める。
 そして、薫は誰にも相談出来ぬまま、悦子の更なる凶行を見守る事しか出来なかった。

◆◆◆◆◆

 月曜日の朝、生徒達はいつも以上に早い時間に登校を始め、正門が開く前には白鍵以外に、試験を受けた黒鍵の生徒も集まっていた。
 その生徒の間を、クラス委員達が管理奴隷を連れ、悠々と登校する。
 白鍵と黒鍵は登校時間を決められているが、クラス委員達は自分の好きな時に学校に来られる為だった。
 クラス委員達は登校すると直ぐに審判室に入り、自分のロッカーを開ける。
 そこには、例外無くA4の紙が入っており、昨日の査定の結果が記されていた。
 その結果を受け、大喜びする者、ガックリと肩を落とす者、管理奴隷を抱きしめる者と様々に分かれ、教室や地下、職員室へと移動していった。

 2年B組のクラス委員は、教室に入るとそれぞれの、査定表を見せ合い
「おい、やったぜ、ランクアップだ。これで、3人迄調教出来る」
 第1副委員長が言うと
「へへへっ、俺もだ。委員長もでしょ?」
 第2副委員長がクラス委員長に問い掛けると、クラス委員長はチラリと2人を見て
「俺は、今のまんまだ…」
 悔しそうに、査定表を丸め、管理奴隷に向かって投げつけた。

 管理奴隷はその紙を顔面で受け、シュンと項垂れる。
「お前が、もっとちゃんとしてれば、俺だけこんな事には成らなかったんだ!」
 クラス委員長は苛立ちを、管理奴隷にぶつけると、管理奴隷は床に這い蹲り
「申し訳ございません! どうかお許し下さい…」
 平謝りに謝った。
 その光景を2人の副委員長は、呆れた表情で見詰めていると
「お前が、妙な事に時間を使うから、そう成ったんじゃねぇのか?」
 入り口から委員長に向かって、声を掛けて来た。

 委員長が驚きながら、そちらを見ると、純が両手をポケットに入れ、ユックリと入って来る。
「く、工藤さん…。み、妙な事って…、何の事ですか…」
 委員長が、ドモリながら純に問い返すと
「お前、馬鹿にしてんのか? 俺が、知らねぇとでも、思ってるんじゃ無いだろうな? お前が、A組入りしようとしてる事。伸也とちょくちょく有ってる事…。全部バレてるんだぜ…」
 純は狂に成り切って、委員長の裏工作を糾弾する。

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