夢魔
MIN:作

■ 第32章 崩壊2

 ローザの目が大きく見開かれ、愕然とした表情に成った。
 そのボトルには、シー○リ○ズと一般に販売されている、有名メーカーの名前が書かれていたのだ。
 悦子はその洗剤を自分の手に取り、匂いを嗅ぐとローザに手を差し出して
「うん、スーッとするし、良い匂いが広がるけど…。エッチな気持ちには成らないわね…。それとも、お前が特別なのかしら?」
 戯けた調子で問い掛ける。
 悦子が差しだした手からは、あの日嗅いだシトラス系のさわやかな匂いが立ち上り、それが間違い無く、自分が身体を洗われた洗剤だと、証明していた。

 ローザはその事実を突きつけられ、目玉が落ちそうな程開き
「そ、それじゃぁ…、あのひ…かんじた…かいかんは…」
 ボソボソと呟くと、悦子は嬉しそうに
「そう、全〜部お前自身が、感じた快感よ…。お前は、ああやって、辱められて、勝手に自分で感じたのよ!」
 ディスプレーを指差し、ローザに事実を突きつけた。
 その瞬間ローザの心のどこかで、ブツリと音を立てて何かが切れた。
 ローザの大きく開いた瞳から、ボロボロと涙がこぼれ落ちる。

 悦子はローザを打ちのめすと、クイッと顎で薫に合図をする。
 薫はローザの拘束具にフックを掛け、クレーンで水槽から引き上げた。
 水分を失って、ゼリーのような粘り気を持った精液が、ローザの下半身に付着している。
 悦子は薫から手渡された、プラスチックの棒をローザの尿道の前にかざし
「オシッコをなさい」
 短く命じる。
 ローザの身体は悦子の命令に即座に応じ、血が滲んでいるような、赤茶けたオシッコを数筋流す。

 悦子はそのオシッコを、プラスチックの棒で受け止めると、真ん中に空いた穴をマジマジと見つめ
「おめでとう、ご懐妊よ。お父さんは、誰でしょうね?」
 嬉しそうに良いながら、ローザに妊娠検査器を見せた。
 検査器には懐妊を示す線が、クッキリと3本出ており、ローザの妊娠を教える。
「い、いやーーーーーっ!」
 ローザは吊られたまま、掠れた喉で血を吐くような悲鳴を上げ、あまりのショックに気絶した。
 悦子はそのローザを高笑いしながら見つめ、薫に向かって
「さぁ、仕上げよ。こいつの夢も何もかも、叩きつぶして上げるわ…」
 ゾッとするような冷たい目線を向け、宣言する。
 薫はその視線に震え上がり、悦子を見詰め固まった。

 悦子は楽しそうに、微笑みながら、道具箱の上からスケッチブックを取ると
「薫、それの身体に付いた精液を、洗い落として。それが終わったら、谷さん呼んで来てよ…」
 椅子に腰を掛けながら、薫に命令する。
 薫が頷くが、悦子はもう薫を見て居らず、一心にスケッチブックに何かを描き始めた。
 薫はクレーンを操作し、排水溝の上にローザを移動させると、ホースから水を出しローザの身体を洗い始める。
 ローザは頭から水を掛けられても、気絶から目覚める事は無く、人形のように薫に洗われた。

 ローザを洗い終えた悦子は、そのまま拘束台の上に移動させ、ローザを拘束台に乗せ、縛めを解く。
 グッタリと横たわるローザを拘束台に固定すると、薫は踵を返して入り口に向かう。
 その間悦子は、一言も話さず、一瞥も向ける事無く、スケッチブックに何かを描き込む。
 薫は何かを言いかけたが、直ぐに思いとどまり、調教ブースを出て行った。
 薫が出て行くと、数分後スケッチブックから顔を上げ、悦子はキョトンとした表情で辺りを見回し、拘束台に眠るローザを見つけ、にんまりと笑う。
 悦子は道具箱に向かうと、鼻歌交じりに目的の物を探し、それを見つけるとローザの身体に取り付いた。

 20分程して、薫が谷を連れて降りてくると、悦子はローザの身体をキャンバスに、見事な絵を描いていた。
 ローザの全身に色とりどりの美しい花が咲き乱れ、その花の間を鮮やかな色の大小の蝶が乱れ飛んで居る。
 お腹の中心に大きな女郎蜘蛛が巣を張り、その蝶達を絡め取り、左右の乳房を締め付けた緑と赤茶の蛇の胴体が、肩口を通り、腕を絡め取りながら手首まで伸びていた。
 そして、ローザの両手は2匹の蛇の頭に成り、人差し指と中指に舌が描き込まれている。
 背中には大きな紫色の蝶が羽を広げ、まるでローザ自身の翼のようだった。
 股間には大小の薔薇の花が咲いており、その花弁の中心は、それぞれ尿道、オ○ンコ、アナルに成っている。
 その絵は全てが緻密に描き込まれ、息を呑む程の迫力があった。

 薫はそのローザを見て呆気に取られ、谷は震え始める。
「お…、お…、お、お、お前…、凄い…」
 谷は震えながらローザの近くによると、マジマジとその下絵を見て、感嘆の言葉を漏らす。
「おはよう、谷さん。これもう少しで出来るから、入れ墨にして…。薬で眠らせたから、半日は目覚めないわ」
 悦子はそう言って、谷に依頼すると、谷は悦子を見詰め、ブンブンと首を縦に振り
「お、俺…、やる…」
 真剣な表情で、悦子に答えた。
 悦子はニヤリと笑うと、最後に首と両手両足首に黒い枷を描き込む。
 それは、2度と外せない奴隷の証だった。

 悦子は筆を置くと、スッとローザから離れ、全体のバランスを見る。
 悦子の描き込んだ下絵は、手足の甲に迄および、顎の付け根にも達していた。
 その下絵を入れ墨にされた場合、どんな服を着ても隠す事など出来ない。
 悦子は満足そうに頷くと
「じゃぁ、頼んだわよ、出来たら呼んでね。起きそうになったら、そこの麻酔スプレー使って。一吹きで3時間は最低持つわ」
 谷に告げて、調教ブースを出て行った。

 それから5時間、谷は取り憑かれたように、ローザの柔肌にタトゥーマシーンを当てる。
 悦子の緻密な線を壊さぬように、描かれた下絵を崩さぬように、谷は持てる技術を全て注ぎ込む。
 その表情には、鬼気迫る物があった。
 谷は入れ墨を入れながら、徐々に悦子を尊敬し始める。
 その、センス、描写技術、発想、加虐性どれを取っても、自分の遙か上を行っていた。
 入れ墨を全て入れ終えた時には、谷は悦子の信奉者に成っていた。

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