夢魔
MIN:作

■ 第32章 崩壊12

 それを聞いた教師達は、愕然とする。
「情報を共有しないと、それぞれの考えにレベル差がある…。今は、もうそんな事も、命取りに成りそうだから、みんなに知って貰いたかったんです」
 黒沢を見詰め、教師全員に視線を向けた。
 その純の目線は力強く、以前のオドオドした面影は消えている。
 純の心は、ここに来て強く成長し、みんなの期待に応えようと、変貌していた。
 黒沢は純の顔を見てニヤリと笑い
「さぁ、リーダー…今後の方針は、どうすれば良い?」
 純に問い掛ける。

 純は頷くと教師達に視線を向け
「この件に関して、一番情報を持っているのは、多分谷本先輩です。だけど、直接正攻法で行って[何が有ったか話して下さい]って言っても、教えてくれる筈が有りません。それに、僕らと接触した事が風紀委員にバレたら、今の中山先輩の事だから、谷本先輩すら酷い目に逢わせると思うんです。そこで、誰か情報を引き出す役をして貰わないといけません。まぁ、適任者に心当たりは有りますけどね…」
 純が教師達に告げると、教師達は皆緊張した面持ちで頷く。
「君が言わんとしている、その役の適任者は、私に心当たりが有る。だが、今彼女は、中山達とは仲違い中じゃ無かったか?」
 黒沢が問い掛けると
「ええ、だから谷本先輩が、こっそり会いに行く理由に成るんです」
 純がニッコリと、黒沢に告げる。

 黒沢は少し考えると、大きく頷き
「ああ、そうか。そう考えると、話の辻褄が合う」
 納得した。
「ええ、それに中山先輩は、今学校内で孤立中だし、それを心配して相談に行った。そう言う理由が有れば、もっと自然じゃないですか?」
 純が黒沢に、考えを告げると、黒沢はニヤリと笑い
「うん、そうだ。凄いぞ工藤君。そこまで考えていると成ると、この接触は完璧だ。これを彼女に教えて、情報を聞き出した後、シナリオを教えれば、谷本の身の安全も確保出来る」
 黒沢が納得して、純の肩をガクガク揺する。
 だが、周りの教師は話が全く見えて来ず、2人の笑い合う様を呆気に取られて見ていた。
 純がそれに気づいて、教師達に内容を話すと、全員が納得し純の変化に驚く。

 純は今後の方針を話し終えると、小会議室から医務室に向かう。
 だが、医務室にはキサラの姿は無く、医務室の入り口に[本日帰宅]の張り紙がされていた。
 純はその紙を見て
「あ、キサラさん今日は、帰っちゃったんだ…。明日で良いか…」
 その日連絡する事を諦めた。

 そして、翌日キサラに合い、作戦を告げた時に、更なる致命的ミスを犯す。
「あ、キサラさん。急いで、無理矢理接触しちゃ駄目だよ。自然な流れで、話が出来るようにしてね」
 そう、キサラに付け足した。
 このタイムラグが、何を産み出すか、純は知らなかった。
 悦子が地下2階で何を作り出しているか、純の頭の中には、全く無かったのだ。
 キサラと薫が接触出来たのは、金曜日の昼。
 その時には、5人の美少女達は外観を飾るだけの、状態に成っていた。
 悦子は久美とローザを含む、7体の人形を週末のパーティーでデビューさせるつもりだった。
 その為、あらゆる行為を行い、5人を仕上げたのだ。

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