夢魔
MIN:作

■ 第32章 崩壊17

 悦子の強権発動により、散々振り回された1週間も、最後の日の朝に成った。
 純の携帯電話に、1通のメールが入る。
 メールの中身は、数字と英字の羅列で、PCアドレスの物だった。
 そのメールは、純、狂、稔、庵の4人しか知らない、アナグラム暗号で、内容は稔の呼び出しで有る。
(え、え〜と…今日の6時に、いつものボックスだね…。稔君の調査が、終わったみたいだね…)
 純はそのメールを削除すると、稔の呼び出し用件を推測する。
 本来なら稔との邂逅は、もう少し早い予定だったのだが、有る理由により今に至ってしまった。

 純はニコニコとご機嫌に成りながら、横に眠る絵美を起こす。
「絵美ちゃん、朝だよ…。起きなさ〜い」
 絵美の頬をペチペチと叩いて、純が絵美を起こす。
「ふみゅ〜〜〜ん…。もう朝…、絵美まだ眠〜い…」
 絵美は寝ぼけ眼で、純に抱きつき純の太股に頬を擦り付ける。
 だが、頭の上でゴツゴツと当たる感触に、そちらを見ると、朝立ちしている純の分身を見つけ
「がう〜っ」
 純の股間に目がけて飛びつき、口に含む。
「こら、絵美ちゃん駄目だよ〜。まだ、1日学校有るし、朝ご飯の用意もしなきゃ、こら、絵美ちゃん…聞いてる?」
 純の言葉に、絵美はチンポを口に含みながら
「きいふぇはひ…」
 純の顔を上目遣いに見詰め、ニッコリと微笑む。

 純はふ〜っと大きく溜め息を一つ付くと、目を閉じてユックリ開く。
「絵美、好い加減にしろ。朝の準備だ」
 絵美にサディストの顔で命令する。
「ふにゃん…純君の意地悪…。もう少し甘えさせてよ〜」
 絵美は股間に両手を巻き込み、身体を丸めて純に抗議した。
 純はこの所の激務によって、急速にその雰囲気を操れるように成った。

 元々狂の持っていた雰囲気には、まだ及ばないが、それでも並のサディストより、高い圧力は確実に身に付けた。
 それは、絵美にとってかなり喜ばしい事だった。
 今までの優しいだけの純では無く、厳しく躾ける純が居る。
 絵美に取ってこれは、言わば画期的な事だった。
 甘い声と厳しい声を使い分け心と耳を擽り、繊細な指と絶妙の縄加減が、身体をドンドン官能に押し上げる、そんな純のSEXが、今の絵美のお気に入りだった。
 絵美は厳しい純に追い立てられ、朝のシャワーを手早く浴びると、1階下の自分の部屋に戻る。

 一緒に暮らしている老夫婦は、日曜日まで帰ってこない為、昨夜も純の部屋に泊まったのだ。
 妹達の眠る姿は、純の部屋で常にモニターしている為、異変が有れば直ぐに対応出来るから、絵美も安心して純の元に行けた。
 絵美は今のこの生活が夢のようだった、大好きな恋人、可愛い妹達、親切な老夫婦、それらが全て手を伸ばせば届く所に有る。
 明日の生活に汲々としていた、数ヶ月前が嘘のような生活。
 それもこれも、全部が純と狂のお陰のようにすら感じて、仕方が無かった。
 純と狂との距離が縮まって、絵美の環境が急速に変わったのだ、そう思っても仕方が無い。
(えへっ、きっと2人は、私の幸運の王子様ね…)
 絵美はそう思うと、緩む頬が止められなかった。

 純は自分の身支度を調えると、絵美の部屋に降りて行き、絵美の家族と一緒に朝食を摂って、妹達を送り出し学校に登校する。
 2人が学校に着くと、校内は2回目の[試験]の為、ピリピリと緊張感が張りつめていた。
 そしてそんな中、純は絵美にどう話を切り出そうか、迷っている。
 未だ絵美には、特攻3人組の事を話して居なかったのだ。
 約束の日は土曜日で有ったが、クラス委員に今日の試験を受けさせると、言った手前1人は連れて行かなければ成らないし、それを誰にするかも決まっていない。
 いや、それ以前に絵美が、他の奴隷を認める筈が無いとも思っている為、純は非常に悩んでいた。
(う゛〜〜〜ん…どうしよう…どうしよう…。あの時は、狂兄ちゃんが直ぐに出てくると思ったし、感情にまかせて、あの3人を奴隷にしたけど…絵美ちゃんにも言ってないし、でも今日にはクラス委員の手前、1人[試験]を受けさせなきゃ行けないし…う゛〜〜〜ん…)
 純は腕組みをしながら、真剣に考える。

 純が悩んでいるのは、絵美は随分前から知っていた。
 だが、[純が言わない事を、自分が詮索する訳にはいかない]絵美は、自分の力からそう考えている。
(あらあら、純君…隠し事は、身体に良くないわよ…。私は、怒らないし…。多分、怒らないし…。怒らないと思うし…。早く言ってよ…! 私も気が気でないのよ!)
 だが、理想と現実には、若干の開きがある為、絵美自体イライラとしていた。
 それが必要以上の甘えん坊に成って現れていたのは、言うまでもなかった。

 そんな2人がどちらも悩んでいる間に、学校は昼休みに入る。
 純と絵美が保健室の前を通ると、保健室からキサラと薫が出て来て、薫がお辞儀して廊下の奥に消えた。
 それを見送ったキサラが、純に素早く向き直り、キッと純を鋭い視線で睨み付け、顎をしゃくって第1体育館を示す。
 その視線、その仕草、それらが非常事態を示しており、純は慌てて第1体育館に向かった。
 その後ろに、何も指示をされない絵美が着いて行くのは、当然の事である。

 黒沢派の屯する剣道場に、純とキサラそれに絵美が入ってくると、黒沢はその血相に驚きながら、迎え入れた。
 キサラは、剣道場に入るなり、開口一番
「真ちゃんどこ!」
 迎え入れた黒沢に怒鳴り掛ける。
 黒沢は驚きながら、剣道部室を指さし
「食事を終えて、今し方中に入りましたよ」
 キサラに説明すると、キサラは剣道部室の扉を開け
「真ちゃん大変! あんたの伴侶、私の前任! とんでもない事になってるわよ!」
 中の真に向かって、叫んだ。

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