夢魔
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■ 第32章 崩壊19

 剣道場に黒沢派の教師、真、キサラ、目覚めた狂、それに絵美が集まっていた。
 キサラが薫から聞き出した情報を全員に伝え、事態はかなり切迫している事を知らせる。
 話を聞き終えた狂が、[ふ〜]と大きく溜め息を吐き、全員の顔を見渡して
「さってと、取り敢えず、軽い問題から潰して行くかな…」
 ボソリと呟いて、絵美を見る。
 絵美の顔は、ジッと全裸のクラスメート見詰めていた。
 特攻少女達は、絵美が狂の所有奴隷だと聞かされていて、視線を合わせられずに、俯いている。

 狂はそんな光景を見て、ボリボリと頭を掻き
「絵美。ちょっと来い」
 絵美を手招きして呼びつけた。
 絵美が唇を尖らせながら、狂の前に来ると
「あの3人登校して来ないと思ったら、こう言う事だったんですね…」
 ふて腐れた声で、狂に問い掛ける。
「ああ、純が奴隷として教育する為に、ここにぶち込んだ。俺も、純の記憶を漁って、解ったんだが、こりゃお前のせいでも有るんだぞ」
 狂は絵美を指さし、ジッと見詰めた。

 絵美は狂に指摘され、何の事か解らなかったが、ドキリとした。
「お前、あの3人組が、純に迫った後。純と口利かなかったろ…。それが原因でこの3人の事、あいつは相当怒ってた。そして、注意したにも拘わらず、この3人組はここに忍び込んだんだ」
 狂がそう言った瞬間
「え〜〜〜っ! ここに?」
 絵美が大声を出して驚き、3人組に目を向ける。
 3人組は絵美の驚きに、今は頷け、縮こまってしまう。

 狂は絵美の頭に、がしっと手を載せ、クルリと自分に向かせると
「それで、この3人組の暴走を止める為と、お仕置きの為と、知識を与える為に、純は3人を奴隷にし、ここに預けたんだ。で、こっからは、おいそっちの3人ちょっと来い」
 純の気持ちと考えを説明し、3人組を呼びつける。
 3人組は、素早く駆け寄り、狂の足下に座ると
「おい、こいつは俺の所有奴隷だ。意味が分かるか? こいつは俺に全てを委ね、俺はこいつの全てに責任を持っている。今のお前等なら、この意味は分かるよな?」
 狂は3人に絵美を示して、問い掛けた。
 3人はシュンと小さく成り、コクリと頷く。

 狂は大きく頷くと、3人に向き直り
「俺は、自分の奴隷は常に1人だと決めている。だから、お前達の主人には成れない。教育の場は与えてやった。お前等も自分の身体と心を磨けただろうから、これからは、お前等に相応しい主人を捜せ」
 狂は3人を突き放した。
 その言葉を聞いて、3人はガックリと項垂れ、長い付き合いのキサラは溜め息を吐く。
 狂が結論づけて、絵美を見た瞬間、その顔が驚きに染まる。

 絵美がボロボロと涙を流していたのだ。
「絵…美…? 何で、泣いてんだ…?」
 狂が問い掛けると、絵美は泣きじゃくりながら
「絵美は…絵美は今凄く幸せです…。大好きなご主人様に大切にされて…いっつも一緒に居て貰って…。優しく育てて貰ってます…。でも…、でも、それってズルです…。同じように、狂様を慕ってくれている子を…。狂様の為に努力した子を…。私みたいに、甘えてるだけの存在が、邪魔するなんて…ズルです。私、そんな卑怯な女に成りたくないです…。狂様の横に胸を張って、立って居たいんです…。絵美は、怒りません、文句も言いません、仲良くします…。だから、だから狂様…この子達も、ちゃんと見て上げて下さい…。知らない振りするの…辞めて下さい…」
 自分の気持ちを狂に打ち明けた。

 絵美の言葉を聞いた、キサラが狂に話す。
「狂ちゃん…、あんたさ多分昔のトラウマに囚われてるだけよ…。それで、自分の鳥籠にその子を押し込めてるだけ…。その子は自分も成長したいと思ってんの、あんたを凄い人って思ってるから、自分が釣り合って無い、努力が足りないって思ってるのよ…。女はね男で磨くモンだけど、それだけじゃ駄目なの。悪い言い方だけど、踏みにじった女の数が要るのよ。争い奪った実績が自信に成るの。女の戦いは、男が思ってる程優しくないのよ…。だから、ライバルが欲しいって、その子の気持ちも考えて上げて」
 狂はキサラの説明で、絵美の気持ちを少しだけ理解する。

 狂は絵美を見詰めると
「良いのかよ…、俺はその女達を抱くぜ…。それで、俺の目がお前から逸れたらどうする?」
 真剣な表情で問い掛ける。
 絵美は涙を拭って
「逸れたらまた正面に行きます。戦って、狂様の目線の正面に絶対陣取ります!」
 狂に胸を張って答えた。
 狂は絵美の視線を真剣な表情で、真っ直ぐに見詰める。
 絵美の真剣な眼差しが、真正面から狂の視線を受け止めた。
 2人は暫くジッと見つめ合い、ピクリともしない。

 すると、狂の視線がフッと微笑んで
「わ〜った…、お前の意見を聞いてやる…。真さん…、黒沢先生…、キサラ…こいつが何か教えてくれって言ったら、頼むわ…。俺も、もう少し自分を磨くかな…稔達にこれ以上差を開けられちゃ、追いつけねぇしな」
 自分のポリシーをへし曲げた。
 狂は絵美の頭をポンと叩いて
「お前はやっぱり、俺好みの良い女だ。気は強いし、良く回る。優しい上に芯がある。愛してるぜ絵美」
 絵美を褒め、驚く絵美の唇に唇を重ねた。
 絵美は狂が唇を放すと、ウットリとした表情で惚ける。
「お前等も、俺にこれぐらい言わせる女なら、俺はいくらでも奴隷にしてやるぜ」
 狂は3人の女性徒に告げると、3人は顔を真っ赤にしながら、ブンブンと首を縦に振った。

 狂は真に向き直り、3人の女性徒の中で誰が、一番仕上がりが早いか聞くと、消極的な少女だと教えられたが、試験が目的ならば、この3人の誰が受けても、結果は火を見るより明らかだと教えられる。
 狂は黒沢に消極的な少女を試験にエントリーし、他のB組の生徒は全てキャンセルさせた。
 トップが確定しているのに、他の少女を出す必要もない為だ。
 その後キサラにクラス委員長の管理奴隷の査察の便宜を依頼し、クラス関係の問題を解決する。
 真と黒沢とキサラに次の集合時間と場所を教えると、昼休みの会合を解散させた。

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