夢魔
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■ 第32章 崩壊26

 真が動かない身体を、必死に藻掻かせ、白衣の男を睨み付けると
「やっぱり、筋弛緩剤を打って、喋れる筈が無いか…。全く、あの執事もオーバーだな…。そんな化け物絶対居る筈がない…」
 そう言うとポケットの中から、コインを取り出し
「表が出たら解剖、裏が出たら耐久テスト…」
 ボソボソと呟いて、コインを親指で弾く。
 クルクルと回りながら、弾かれたコインが弧を描いて床に落ちると、コインは[500]と書かれた文字が上を向いていた。
「おい、[犬]を連れて来い。それと、新しく調合した、催淫剤もだ」
 白衣の男がそう命じると、助手がさっきとは別の方角に進み、暫くすると帰ってくる。

 戻ってきた助手の手にはリードが持たれ、リードの先には、その種類にしては、かなり大きい、白っぽい犬が引かれていた。
 助手に引かれて来たのは、大きな白いブルドッグだった。
 無論本当のブルドッグでは無い。
 犬のブルドッグに、酷似した生き物。
 その生き物は、毛髪が全く無く、頭頂部から垂れ下がる耳を持ち、鼻の頭は綺麗にひしゃげて上を向き、小鼻が歪に変形し、鼻の穴は線を引いたような細さで潰れている。

 元々ブルドッグに似た顔が、更に形を変え酷似させられていた。
 手足や肩、股関節の関節は腱を切られ、歪に矯正され従来の機能を無くしている。
 手は全ての指の皮膚を切開され、骨を曲げた状態で、再縫合され二度と開く事は無く、掌にはシリコンの肉球が埋め込まれていた。
 足先は、踵の骨が根刮ぎ奪われて、シリコンで指の直ぐ後ろに、人造の踵が付けられ、二足歩行どころか直立する事も不可能に成っている。
 お尻には短い尻尾が立ち上がり、左右に振れて動いていた。
 これも、シリコンをベースに、お尻の皮膚で作られた、血の通うこの生き物の身体の一部だ。

 股間に隆々とそそり立つチ○ポは、長さが25p太さは5pと長大にそそり立っている。
 長さの割に細いチ○ポには、理由が有った。
 そのチ○ポは、綺麗に上下で2分割され、縦に2本連なっている。
 尿道は下のチ○ポに残置され、機能を維持していた。
 常に勃起した状態なのは、分割されたチ○ポの中に、シリコンの骨格が埋め込まれ、その周りを海綿体が覆って居るからである。

 その生物の改造は、それだけでは無く、上半身にも有った。
 ダラリと口から垂れ下がった、舌は長さが30p程有り、舌先がカリ首のように膨らみ、表面にはビーズ大の無数のシリコンボールが埋め込まれている。
 醜い外見を強調された、SEX犬。
 それが、その生き物の役目だった。
 その生き物の、以前の名前は、金田満夫と言う。

 満夫は拉致されてから直ぐに、この分院で白衣の男に、念入りに人体改造をされた。
 頭部の整形手術、手足の改造、舌の変形、チ○ポの肥大・分化、全てこの白衣の男自らが行った。
 その妄執的な人体改造は、狂気に取り付かれた者の創造だった。
 徹底的に破壊し、見る者が見れば、オリジナルが解り、使用目的も解る。
 そんな人体改造が、白衣の男の手により、満夫の身体に施された。
 それも、白衣の男は、それが2度と復元出来ない方法を取り、満夫を変えたのだ。
 前歯を奪われ、手足も使えない満夫は、自ら命を絶つ事さえ出来ず、自我を保ったまま飼い続けられた。

 白衣の男は注射器を取り出すと、やせ細った弥生の左手を持ち
「この媚薬は、こいつが最後にデザインした物だ、その効き目は今までの群を抜く。ただし、副作用も半端が無かった。コレの原液を注射した[丸太]は、3時間で心臓の血管がぶち切れて、死んでしまった。普段の100倍の快楽の中で死ねたんだ、本望だろう…。尤も、注射した時点で、自我はぶっ壊れてたがな」
 真に向かって、その薬の説明をしてニヤリと笑い、弥生の腕に注射器を立て、薬剤を流し込んだ。
 白衣の男が、注射器を抜くと、枯れ木のような弥生の身体が、ビクリと跳ね痙攣し始める。
「おい、こいつに突っ込んで、イカせろ。手を抜くなよ…、罰は解ってるだろ…」
 白衣の男が満夫に命じると、満夫の身体がブルブルと震え、瞳が恐怖に濁った。
 満夫は直ぐに弥生の身体に取り付き、2本のチ○ポをオ○ンコとアナルに挿して、腰を振り始める。

 弥生は真の目の前で、媚薬で官能を掻き立てられ、改造された満夫に犯された。
 真は筋弛緩剤で動かない身体を、何とかしようとするが、何も出来ない。
 真は目の前で繰り広げられる、光景に何も出来ない自分が、悔しくて仕方が無かった。
 それは、身を切り刻まれるより、心を苛み、血の涙が溢れる光景だった。
「この注射は、原液の10%希釈だ、2時間おきに10%ずつ濃くした物を注射する。何時間生きるかな? ハハハッ」
 白衣の男は、高笑いすると、真に告げた。

 ひとしきり笑った後、白衣の男は黒沢に目を向けると
「お前達は、これから[丸太]として、飼ってやる。まぁ、モルモットだ、こんな風に成るんだ」
 そう言うと、助手に合図をした。
 助手は高さ2m程のキャスターが付いた鋼製ロッカーを動かし、正面を鉄格子に向けた。
 そのロッカーの前面は、透明の扉に成っており、中が見て取れる。
 7列並んだロッカーの中には、老若男女を問わない、人間が1つずつ納められていた。
 その中には、久美の家族も居る。
 だが、その中の殆どが、視線を漂わせ、宙を見ていた。
 視線に意志がある者も居るが、悲嘆で染まっている。
 そのロッカーは、それだけでは無く、後ろにまだ3列続いていた。
 ロッカーが全て満たされていた場合、28人の者が人体実験に使われている。
 その全ては、この近辺に住んで居た、行方不明の家族だった。

 白衣の男はロッカーの中から、久美の母親を出すと、その場に立たせる。
 久美の母親の身体は、悲惨の一言に尽きた。
 身体中に裂傷、切傷、刺し傷、擦過傷、火傷様々な傷跡が有り、左の乳房は、一文字に上下に爆ぜている。
 久美の母親の視線は宙を彷徨い、フラフラと揺れながら立つ。
「コレの自我は、もうどこかに消えている。今は夢見気分だ。何をしても快感に感じてしまう。そう言う薬を投与したからな…」
 そう言って、白衣の胸に挿していたボールペンを逆手に握り、久美の母親の右の乳房に突き刺した。

 何の遠慮会釈の無い刺し方で、ボールペンはその半分程迄、久美の母親の右の乳房にめり込んでいる。
 だが、久美の母親は眉一筋動かさず、平然とした表情で立っていた。
 しかし、それとは裏腹に、久美の母親の下半身からは、プシュ、ビチャ、プシューと、潮を吹くように愛液が溢れ出している。
「神経伝達が組み替えられる薬だが、投与限界を超えたら自我迄どこかに行ってしまった。肉体は反応するが、人形と一緒だ。意識が反応しないから、木偶人形か…はははっ」
 白衣の男がそう言うと、助手がボールペンを突き刺したまま、久美の母親をロッカーに戻す。

 白衣の男が黒沢に視線を合わせ
「せいぜい、我々の役に立ってくれ、簡単に死ぬんじゃないぞ…」
 薄笑いを浮かべ呟いた。
 黒沢が睨み付け、ギリリと歯を鳴らすと、白衣の男が高笑いをする。
「柏木医院長、そろそろ病院の方に、戻られる時間ですが…」
 助手の1人が高笑いしている、白衣の男に声を掛けると
「おお如何、今日のパーティーの前に、論文を仕上げんとな…」
 柏木は腕時計を見ながら、慌ててその場を立ち去った。
 助手達は鉄格子に向けて、麻酔銃を構え発射する。
 麻酔薬が黒沢達に打ち込まれ、3人は昏倒した。

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