夢魔
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■ 第32章 崩壊36

 佐山はパーティーの準備の為、学校に向かう車の中でその電話を受けた。
 佐山の携帯電話が鳴り、佐山は通話ボタンを押す。
『もしもし、私です。ご希望の女…、1人ですが、手に入れました』
 電話の相手は西だった。
 佐山は谷の言葉を聞き、初め何の事だか分からなかったが、直ぐに森川家の者だと気づき
「な、何? どこでだ? 誰を手に入れた!」
 慌てて地のまま西に問い掛ける。
『へへへっ、苦労しましたぜ、ボーナス弾んで下さいよ。捕まえたのは、姉の方です。隣の市の総合病院に隠れてました。多分、まだ他のも居ると思いますぜ』
 西が佐山に状況を説明すると
「何…、隣の市の総合病院…あんな所に…。あそこは、少し厄介ですね…。医院長は地区の医師会にも顔が利きますし、県議達とも親交が深い…。少し対応を考えないとこっちが、火傷します…」
 佐山は潜めた声で、呟いた。

 佐山の呟きに、西は[無理をしてでも美紀も掠った方が良かった]と、後悔しながら
『こいつはどうします。お届けは直ぐにしますが?』
 西が問い掛けて来ると
「ああ、頼みます。今日はパーティーでしたが、あんな物よりよっぽど楽しめる筈ですから」
 佐山は満面の笑みで、西に返事をする。
『今、バイパスに入った所ですが、場所はどこにしますか?』
 西の問い掛けに、佐山は少し考え
「これから、学校に行ってパーティーの準備をします。会長達も送らなければ成りませんから、少し時間が掛かります。いつもの倉庫に居て下さい、2時間程で、そちらに向かいます」
 佐山はそう言うと、通話を切り携帯電話を片づけた。

 携帯電話をポケットに落とし込んだ佐山は
「くくくっ…。やったぞ、手に入れたぞ…。あの、小僧共の傑作…。洗脳して俺専用の奴隷に仕上げてやる…」
 誰にでも聞こえる声で、独り言を言い悦に浸る。
「それにつけても、西は今日はかなりの仕事をしたな。目の上の瘤だった教師共を一掃して、尚かつ探していた奴隷まで見つけるなんて…。これは、ボーナスは弾んでやらんといかんな」
 佐山は西の働きを感心しながら、報酬を考えた。
 だが、佐山の頭は直ぐに美香の方に意識が行き
「確か…、あの娘の母親は、あいつと籍を入れた筈だな…。と言う事は、あいつとは戸籍上親子か…。こいつは面白い、あいつをもっともっと惨めな姿に変えて、あの娘とSEXさせまくるか…。奴隷と家畜の近親相姦ショーだ…」
 佐山は美香と金田を絡ませる事を思い描き、酷薄な笑みを浮かべる。

 車が学校に着くと、佐山は職員棟の最上階に行き、パーティーの準備状況を確認した。
 パーティーの下準備は、調教教師が奴隷教師を使い行っている。
 その準備も既に数回経験している為、皆手際が良く、殆どが終わっていた。
 後は懲罰を受けている[備品]の配置と、今日お披露目される、風紀委員長の人形のセットだけだった。
 佐山はフロアーを見渡し、その真ん中に有る物を見る。

 それは木の板と鉄パイプで出来た、三角形のテーブルだった。
 6本の鉄パイプで大小の三角形を作り、その三角形に金具で木の板を固定して作った、即席のテーブル。
 そのテーブルは、小さな三角形の頂点から、それぞれ長さ1m程の鎖を中心点で束ね、天井のクレーンが床から80p程の高さに吊っていた。
 木の板の外側には、赤いサテン地の布がグルリと周りを覆い、垂れ下がっている。
 そして、そのテーブルで尤も目を引く物。
 一辺に7つずつ載った、女性の美しい首と、その横に花のように開いた14本の掌だった。

 その女達は、西の働きにより、分院に捕らえられた3人の教師が管理していた奴隷教師21人だ。
 21人の奴隷教師は、全員が首と手を同時に固定する、木製の首枷をされ、それを鉄パイプで繋げられていた。
 21人の顔は、一様に大きく口を開き、舌をだらしなく出して、涎を垂らしている。
 彼女達の口にはリングギャグが嵌められ、口を閉じる事が出来無く成っていた。
 そして、苦痛に染まるその顔と、サテン地の布の奥から聞こえる、チャラチャラと金属の擦れる音が、彼女達に別の何かが付いている事を教える。

 佐山はそのテーブルに近付くと、一番手前にいた直美の舌を摘んで、弄びながら
「お前達の処分も見てみたかったが、今回はビデオで我慢する。さて、何人壊れるかな? くくくっ」
 嫌な笑い声を上げ、直美達を震え上がらせた。
(騙された…。あの男に…、私達全員騙されたんだわ…。あの男に頼まなくても、私達は全員ここに参加させられる筈だったんだわ…。悔しい…)
 直美は主人を嵌めた男に、嫌々抱かれ奉仕をした事を、心から後悔した。
 そして、騙された自分が、どうしようも無く悔しかった。

 佐山がそんな直美の顔を弄んでいると
「あら、佐山さん。ごゆっくりなのね」
 背後からキサラが声を掛ける。
 佐山が後ろを振り返ると、赤い皮のボンテェージスーツを身に纏った、キサラが腕組みして立っていた。
「おお…。流石現役の女王様ですな、とても良くお似合いです…」
 佐山は執事の口調に戻って、キサラの衣装を褒めると、その雰囲気の違いに気付く。
(ん? この女…、以前と俺に対する意識が違うぞ…)
 キサラの立ち姿や視線から、滲み出している敵意を敏感に感じ、ピクリと佐山の笑顔が固まる。

 キサラも佐山の表情の変化を一瞬で読み取り、フッと表情を崩すと
「フフフッ…、視線が怖かったかしら? そんなに、ビクつかないで。この格好をすると、どうしても気合いが入ちゃうの…」
 佐山に女王様の視線で、良い訳をした。
「いえ、いえ、流石は一流を張る歴戦の強者…。私も、思わず怯んで仕舞いました…」
 佐山はペコリと頭を下げ、キサラに笑って誤魔化す。

 どちらも、今の一瞬のやりとりで、双方が何を感じているか理解した。
(この女、何かを嗅ぎつけ、スタンスが変わったな…。まあ、良い…この女も、その内モルモットにしてやる…)
(おぉ〜おっ…流石に目が利くわね…。臆病な狐は、敵を嗅ぎ分けるのが早いわ…。私も甘く見てたわ…)
 2人はお互いに作り笑いを浮かべ、挨拶を交わす。
「私は、この後野暮用が有りますので、今日のパーティーは欠席します。後の事はお任せして宜しいですか?」
 佐山がキサラに依頼をすると
「ええ、構いませんわ。後の事は、全て私に任せて下さいな…」
 キサラが不適な笑顔を浮かべ、佐山に告げる。
 佐山はキサラに丁寧に頭を下げ、サロンを後にすると、エレベーターの中でジッと腕組みをし、キサラが何を知ったのか考えた。
 だが、それも分からず[そんな物は結果だけ知ればいい]と、割り切ってスタンスを決める。
[次に排除するのは、あの女]と佐山は判断を下した。

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