夢魔
MIN:作

■ 第32章 崩壊47

 稔は美香を抱いた後、直ぐに支度を済ませ、黒いライダースーツに身を固めた。
 そのまま総合病院の地下に駐めて有る、愛用のバイクに跨る。
 フラットブラックに塗られたXR400モータッド。
 パワーの有る、デュアルパーバスだ。
 エンジンに火を入れ、稔は郊外の倉庫に向かう。
 狂から連絡を受け、装備品を整える為に、予定より少し早めに出発をする。

 倉庫に着いた稔は、装備を調え、分院を目指す。
 分院を囲む壁が見えた所で、稔は時計を確認する。
 時刻は19:40、行動開始時間まで後20分だった。
 稔は携帯電話を取り出し、切っていた電源をオンにする。
 携帯電話の電源が入り、個人情報を読み取った後、センターと通信した。
 すると、留守番電話サービスに、一件の情報が有った。
(ん? 美紀…。僕に電話なんて、何か有ったのか…)
 留守番電話サービスに連絡をするが、メッセージは入っていない。
 稔は気に成って、美紀に電話すると、電話は繋がらず女性のアナウンスが流れる。

 稔は首を傾げながら、留守番サービスに
「暫く電源を切ります。緊急の用件は、狂に入れて下さい」
 メッセージを入れて、通話を切り電源を落とす。
 稔はそのまま、路上の暗がりに息を潜め、目の前の3mの壁と、その脇に稔に鼻先を向け駐められている、GTRをジッと見詰めた。
 この時美紀は警察に拘留され、事情聴取を受けていた。
 母親の梓が身元を引き取りに行き、美香の携帯電話を受け取って、美紀が解放されるには、この後更に30分が必要だった。
 そんな事情を知らない稔は、ジッと息を殺し闇の中で待機する。

◆◆◆◆◆

 分院内では、30人の老若男女が、診察室に集まって居た。
 その内訳は黒沢、山孝、金田、人体改造をされた5人の女性、モルモットとして鋼製ロッカーに入れられていた、22人の人々。
 モルモットとされた者で、自我を保っていたのは、僅かに4人で後の18人は、視線が定まっていない。
 その中には○学校、ぐらいの幼い子供もいた。
 自我を保った4人の者も[自我を保っているだけ]と言える程、悲惨な状態で、その所業は非人道的等と、一括りにされる行為では無く、黒沢と山孝は柏木に黒い殺意を覚える程だった。
 ロープで縛られた研究員達は、ふて腐れたような顔をして、ブツブツと悪態を吐いている。

 2階では真が弥生に[気]を分け与え、回復を図っていたが、余りにも弥生の消耗が激しく、真の[気]が枯渇し大貫の[気]を受けている状態だった。
「あの様子じゃ、紗英は使い物に成らないな…。疲労が大き過ぎる…」
 黒沢が呟くと、山孝が
「やっぱり、新庄さんを連れてくるべきだったな…」
 ボソリと呟いた。
 すると、2階から大貫がフラフラと、全裸のまま降りてきて
「黒沢様…その3人、道場に上げて欲しいそうです…。弥生さんが、持ち直しました…」
 黒沢に依頼すると、黒沢と山孝が頷いて、3人を道場に連れて行った。

 道場に入った、黒沢は真の姿を見て、愕然とした。
 真の身体は、ガリガリにやせ細り、床に寝そべっている。
 それは、骨格に皮膚が張り付いているだけだった、弥生と同じように成っていた。
 それに対して弥生は、その肌に艶こそ無い物の、あれだけ細かった身体が、殆ど元に戻っている。
 弥生は真に縋り付いて、涙を流していた。
 大貫が戻って来て、弥生に指定された薬を注射器ごと渡すと、弥生の泣き声がピタリと止まり、ユックリと振り返る。
 振り返った弥生は、黒沢達が連れて来た研究員を見て、鬼火のような視線で睨み付けた。
「貴方達…悔やんでも遅いわ…。私が、貴方達に報いを与えて上げる…」
 背筋が凍り付くような声音で、弥生が告げると、弥生は研究員の1人に近付き、無造作に注射器を突き刺し、薬物を注入する。

 男の身体が、ビクリと震える。
 回りにいた研究員は、弥生が注射した薬物のアンプルを見て、顔を引きつらせた。
 弥生が注射した薬は、久美の母親が注射された薬、神経回路に作用し、感覚を組み替える薬物だった。
 久美の母親は、全ての感覚が性的快感に変わり、脳に伝えられ、身体が反応するように成ったが、その組み替えは投与された個人によって、どうなるかは解らなかった。
 男はその反応が、直ぐに現れ始め、顔をしかめる。
 男は全ての刺激が、[痛み]に繋がったようだ。

 弥生は縛られた男を押し倒すと、薬物でそそり立つチ○ポを、自分のオ○ンコに飲み込む。
 男の眼が大きく見開かれ、口が限界まで開かれる。
 その男の喉の奥から、絞り出す悲鳴が上がるが、弥生は憎悪を込めた瞳で見詰め、腰を捻り揺さぶった。
 男の絞り出すような悲鳴は、笛のように高くなり、やがて途絶える。
 弥生の腰の動きが加速し、男の身体がビクビクと震えた。
 本来なら、弥生が与える快感は極上の快楽で、男を蕩かせるが、この男はその強い刺激が全て[痛み]として脳が認識する。
「貴方が、遊び半分で混合した薬を打たれて女の子…。あの子の痛みは、こんなモノじゃないわ…。狂う程、搾り取って上げる…」
 弥生は男を跨いで、鬼気迫る瞳で、見下ろしながら腰の動きを更に加速した。

 10数分後、男は苦痛に顔をゆがめたまま、[ヒヒヒッ]と引きつったような笑いを喉の奥から漏らし、カラカラに干涸らびた身体を横たえる。
 弥生はそのまま、真の元に戻り、蓄えた精を真に与えると、次の研究員に向き直った。
 その瞳は、暗く冷たい。
 弥生はこの研究員達を、決して許しはしない。
 自分の身を陵辱したからでは無い。

 この研究員達は、人の命を何とも思っておらず、自分の遊びの為に人を破壊し、玩具にして嘲笑っていたのだ。
 弥生はその行為をまざまざと見せつけられ、自分の調合した薬が人を壊して行く様を見続けた。
 その壊れて行く人間に、老若男女の区別は無く、この男達に慈悲と言う言葉は無い。
 弥生はその壊れた人達の、全ての思いを背負って、この研究員達と、今ここに居ない他の6人、それと全てを指示した柏木に復讐するつもりで居る。
 弥生は[それが、最低限の自分の責任]と心に固く誓っていた。
 弥生の贖罪はその後2人の研究員を廃人にし、真を通常の2/3程の状態に戻す。

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