夢魔
MIN:作

■ 第32章 崩壊67

 慌ただしい金曜日が開け、稔達は高級カラオケボックスに集合していた。
 カラオケボックスには、稔、純、庵、黒沢、山孝、キサラ、教頭、京本、山源、悦子、薫、弥彦、それと笠崎の13人が集まった。
「さて、それじゃぁ、おっぱじめようか」
 純が軽い口調で告げると、全員真剣な表情で頷いた。
「今後の学校は、暫く理事長の介入は考えられないが、伸也と用務員の動きに注意しとけ…。あいつ等暫く学校から出ねぇ筈だからよ…」
 純の言葉に、キサラが首を傾げ
「ねぇ、それどう言う意味?」
 純に問い直すと
「あん? 言葉の通りだ。出たくても、出られねぇ…。東の野郎は、どっかで庵を見たんだろう。震え上がってたし、伸也はカジノと株で大負けさせてやったから。出歩きたくても金がねぇ」
 純はサラリとキサラに告げる。

 キサラは更に首を傾げ
「東は解るけど、伸也を大負けさせたって、どう言う事?」
 更にキサラが問い掛けた。
「ああん? ドラドは俺の店だ。それぐらい簡単だぜ…」
 純が当然のように答えると
「工藤様は、ジェネシス社の社長で御座います。この近辺にここ数年で出来た、外資系の店舗は、全て工藤様の所有で御座います」
 笠崎が丁寧な口調で、キサラに告げる。
「げぇ! じゃぁ、あんた大金持ちじゃない! ちょっと、そう言う事は早く言ってよね! あっ、て事は純ちゃんこれから、私のオーナーなのね…。あん、工藤様〜」
 キサラがシナを作りながら、純に擦り寄ってきた。

 純は仏頂面を作ると
「おい、今は冗談こいてる暇ねぇぞ…。まじめにやれよ…」
 キサラに冷たく呟く。
 キサラは[は〜い]と軽く返事をしながら、席に戻る。
「んで、話を戻すと、教頭とキサラが理事長サイド、京本先生と山源先生が教師達をまとめ、あんた達と弥彦で生徒をフォローしろ…。これだけの人間がいれば、どうとでも成る筈だ。まぁ、最長で10日程踏ん張ってくれ…」
 純が告げると、名前を呼ばれた7人は、皆一様に真剣な表情で頷く。

 純は満足そうに頷くと
「さて、ここからは、ダークサイドのお話しだ。キサラ以外は解散してくれ…」
 6人に、静かな威厳のある声で告げる。
 6人が頷き席を立つと、純は身体を乗り出し
「さて、黒沢先生と山孝先生…、あんた達と大貫先生でこれから、集まる人間達を守って欲しい。その中には、あんた達の奴隷教師、21人も入ってる。場所は郊外にホテルを確保してる…恐らく、バレる事は無いと思うが、もし襲ってくるとしたらヤクザ達だ。その時は最長1時間踏ん張ってくれ、庵か稔がフォローに行く、いざと言う時はこいつにも頼む…」
 純は笠崎を親指で指し示し、意味深な視線を黒沢に向けた。
 黒沢は純の意味深な視線を直ぐに理解し
(確かにあいつに頼むと、高く付くな…)
 クスリと小さく笑った。

 だが、黒沢は直ぐに顔を引き締めると
「所で、昨日行われたパーティーはどう成ったんだ? 誰か、酷い傷を負ったのか?」
 黒沢が低い声で問い掛ける。
「いや、誰も酷い傷は負っちゃいねぇ。舌を縦に裂かれた者も居たが、直ぐに治療した。後は笠崎のスタッフとキサラが全て上手くやった」
 純がそう告げると
「ホントおっかなびっくりだったけど、全員薬で眠らせたの。そうしたらこの人達、嘘の記憶擦り込んじゃうし、カメラの映像までCGで作ちゃったのよ。私、あんなの映画の中だけの話だと思ってた…」
 キサラが目を丸くしながら、笠崎を指さし黒沢に説明した。

 笠崎はただニコニコと微笑んでいたが、黒沢はその笑顔を見て
(ったく、食え無いヤツだ…。しかし、こいつを使いこなす工藤君は、末恐ろしいな…)
 純の能力を賛嘆する。
 純はそんな黒沢の思いなど何処吹く風で、淡々と説明する。
「笠崎の作ったビデオでは、21人全員が重傷に成っている。だから、今日にも出発して欲しい。こっちは救出した人間を逐次そっちに送り込むから、受け入れを頼む。言っとくけど、ホテルと言っても従業員は居ないぜ、全部あんた達で回してくれ」
 純が告げると、黒沢は頷いた。

 用件を終えた黒沢と山孝が立ち上がり、ホテルの場所を案内する為、笠崎も席を立つ。
 カラオケボックスには、純、稔、庵、そしてキサラが残る。
 純は苦虫を噛み潰したような表情で、大きな溜め息を吐き
「何で、お前がここに残ってる…」
 キサラに問い掛けると、キサラは身体をくねらせ
「いや〜ん、工藤様〜。私は、オーナー様の僕です〜」
 純に甘えた声を上げ、擦り寄ってくる。

 だが、稔と庵の表情を見て、溜め息を吐きウンザリした表情で肩を竦めると
「はい、はい。解りましたよ…、私はお邪魔ね…。ただね、これだけは聞いて。田崎の爺さん最近おかしいわよ…。かなりの土地を処分して、竹内の会社の株を買ってるらしいの…。前は、絶対に株には手を出さなかったのよ…」
 純に田崎の異変を知らせ、立ち上がった。
「ああ、知ってる…。今、あの爺さんが、持ってる株は竹内関連企業の株20%弱だ…今の株価で換算して、40億…。俺が居なけりゃ、間違い無く筆頭株主だ」
 純がそう告げると、キサラは不思議そうな顔をして
「でも、それじゃ、株の総数100%を越えるんじゃないの?」
 純に問い掛ける。

■つづき

■目次4

■メニュー

■作者別


おすすめの100冊