夢魔
MIN:作

■ 第32章 崩壊70

 佐山の部屋に入った明日香は、佐山の前に立った。
 佐山は明日香に直径3p程のプラスティック球を渡し
「それを飲み込め」
 短く命じる。
 明日香は言われた通り、手に持ったプラスティック球を何とかして、嚥下すると佐山は盗聴器のスイッチを入れた。
 チェックを済ませると、佐山は頷き
「スッ裸になったら、マイクが隠せねぇからな…。これで、お前達の会話は、全部筒抜けになる」
 明日香に告げると、明日香の首輪を外し、買い出し用の車の鍵を渡す。

 明日香が部屋を出て行くと、佐山は興味を無くしたように、パソコンに向かう。
 TNシステムズの自分のデーターベースに入り、画像ファイルを選別する。
 伸一郎の調教風景を、アダルトビデオ業者に横流しする為だ。
(こんな映像でも、馬鹿に成らんからな…。これで、1千万円ぐらいには、成るだろ)
 膨大な量の鬼畜データーを選別し、フォルダーにまとめ出す。

 佐山が作業を初めて20分程で、盗聴器のスピーカーから音声が流れた。
『あっ、こ、こんにちは…。今日は、どう言ったご用件でしょう?』
 明日香が上擦った掠れ越えで純に問い掛けた。
『おお、お前を抱くつもりで呼んだんだよ』
 純の言葉はストレートに明日香を求めた。
『あ、あの…。私、何でもします…。ですから、お願いが有ります。貴方が持っている、プログラムを下さい』
 明日香はストレートに、プログラムを要求した。

 それを聞いていた佐山が、思わずズッコケる。
「こいつ馬鹿か? そんな事言って[はい解った]って、渡す訳無いだろう」
 その後純は暫く沈黙し
『お前、馬鹿か…。あれは、俺の切り札だぜ…。それをおいそれと渡せる訳無いだろ…』
(まあ、当然こう言うわな…)
『私はそのプログラムを、持ち帰らないと殺されてしまうんです…』
(おっ! 泣き落としか…、考えたな…。だが、あの小僧がそんな物に引っかかるかな)
『んだっ? それじゃ、あのプログラムは、お前の命と同じ重さなのかよ…。お前は、俺にそれを只で寄越せって言うのか?』
(そらそうだ、当然の言い分だ…)
『ですから、私はこの身体を差し出します。何でもします、お願いです。プログラムを私にお譲り下さい』
(その程度じゃ、無理だな…。こいつはシビアなんだぜ…)
『そこまで言うなら、試してやろうじゃねぇか…。お前が何処まで頑張れるかな。俺が気に入ったら呉れてやる』
(おっ、こいつ折れやがった…。ははぁ〜ん…、こいつ明日香を必死にさせて、嬲り物にするつもりだな…)
 明日香はこの後、佐山の考えた通り、純に辱められ、嬲られ抜いた。
 佐山はその音声の生放送を聞きながら、メイドを1人呼び、奉仕をさせてデーターを整理する。

◆◆◆◆◆

 黒沢は笠崎に連れられて、21人の奴隷教師と再会し、そのまま溝口の総合病院に向かう。
 総合病院に着いた黒沢は、真と弥生を筆頭に、森川家と金田達を連れて2台のバスに乗る。
 大型バスはそのまま山手の方に向かうと、林道を抜け保養地に向かった。
 この保養地は初め、市が開発した物だが、利用者が居らず東京の会社が買い取り継続したが、その会社が倒産して、不良債権として残った物だった。
 ホテルに続く道は、林道から分かれた1本道で、両側を切り立った崖に挟まれ、クネクネと曲がっている。
 この道は元々川の土手に作った物で、道路の3m下は河原が広がり、川が流れていた。
 1q程進み、何度目かのカーブを曲がると、外柵が現れ鉄の門に[管理地・部外者の立ち入りを禁ず・JUNエンタープライズ]と看板が立っている。
 その鉄門の奥の、小高い丘の上にそのホテルが現れた。

 黒沢はそのホテルを見るなり、噛み殺した笑いを浮かべる。
(これは、完璧に城だな…、正に籠城戦用には最適な構造だ…。しかし、工藤君…[もしかしたら]等と言いながら、迎え撃つ気が満々だ…)
 黒沢はそのホテルを見て感心し、純の意図を理解した。
 黒沢の笑いを只1人理解し、ニッコリと微笑みながら、笠崎がコクリと頷く。
 黒沢は笠崎の頷きを、軽く肩を竦めると、鼻で笑う。

 黒沢達が敷地内に入ると、その外装に驚く。
 見た目は、ボロボロで有るが黒沢は、ガラスの偏光度を見て、直ぐにそれらのガラスが、防弾ガラスだと見抜く。
 外壁に面した扉は、全て鋼製で鍵もかなり特殊な物だった。
 7階建てのホテルの3階まで、全てのベランダが取り払われ、壁面からの侵入を防止している。
「こいつは、要塞か…」
 黒沢が思わず呟いた程だった。
「この正面扉のガラスは、ダンプカーが80q/hで、突っ込んでも割れません。全ての窓もAAAクラスの防弾ガラスです」
 笠崎が説明すると、黒沢は溜め息を吐き。
「金掛かってるな…お前の趣味か…」
 笠崎に問い掛ける。
 笠崎はニッコリと笑ただけで、返事を返さなかった。

 中に入るとそこは一流ホテル並みの内装だった。
 奴隷教師達は目を丸くして、見とれていたが、黒沢だけは巧妙に隠された、隔離壁を見つける。
 笠崎は奴隷教師を誘導し、各種施設を教えた。
 厨房、食堂、大浴場を回り、最後に奴隷教師達を連れて、奥まった場所に有る、鋼鉄製の扉に案内する。
「ここが、このホテルの中枢、中央制御室です。建物内の温度管理から、浴室のお湯張り、外部の監視まで、全てを行います。ここを、コントロールするのは、最低6人必要です」
 笠崎が説明すると、黒沢は7人ずつに分け、それぞれ由香、直美、恵美を長にした、3交代制を組ませた。
 笠崎の説明を受け、奴隷教師全員が、操作方法を覚えると、1チームを残して解散する。

 黒沢は1人ホテル内を確認する為、歩いていた。
 フッと眼にした部屋では、真がモルモットにされ、傷ついた人達を治療している。
 それは、何かに取り付かれたように、真剣な表情で鬼気迫る物があった。
 その横で、真の治療を手伝う弥生もどこか暗く、沈んでいるように黒沢の目には映った。
 森川家に与えられた部屋では、美香の看病を梓が甲斐甲斐しく行い、金田の身体を美紀がマッサージしている。
 どちらも、微笑みを浮かべ、平静を装っているが、その心中を察すると、痛ましかった。

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