夢魔
MIN:作

■ 第32章 崩壊76

 明日香は純の指先が肌に触れ、それをなぞって、何時までも押さえられているような感覚に戸惑い、息を荒げ始める。
(こ、この縄…凄く、気持ち良い…。ううん、心地良い…。工藤様がずっと肌に触れてるみたい…)
 明日香は頬を赤く染め、時折ゾクゾクと身体を震わせ、その身を純に委ね、快感に浸り始めた。
 純の指は明日香の身体を縦横無尽に這い、明日香の身体に快感を刻み込む。
 その動きは、澱み無く滑らかで、まるで明日香の身体に設計図が書かれているように、躊躇いが無かった。
 十数分純の手指が、明日香の身体を行き来すると、明日香の身体は縄で出来た、ボンテージの様に明日香の身体を彩っている。

 明日香の大きな乳房は、根本で絞り出され大きく突き出し、その乳房をそれぞれ鳩尾辺りから2本の荒縄が斜めに走り、肩の方に消える。
 乳房を斜めに割る荒縄は、乳首の真上を通り本来では、乳首を責める用途で使うのだが、この場合は明日香の屈辱の場所を隠していた。
 肩に向かった縄と、腕の付け根に結んだ縄で出来た三角形を、綺麗に縄が目隠しし、明日香の肩口の傷を隠す。
 明日香の引き締まったお腹を走る荒縄は、蜘蛛の巣のように放射状に身体に巻き付き、縊れた腰を強調して、足の付け根に巻かれた縄と合わさり、肩と同じように荒縄が、恥骨から太股の前面を覆い隠している。
 だがその隠している縄の束は、明日香の大きなお尻には、一本も掛かって折らず、まるで巨大な桃のように、明日香のお尻を強調した。

 純は縛り終えた明日香を立たせると、鏡にその姿を映し
「どうだ、出来たぜ。ワンタイムボンテージスーツだ…」
 妖しく笑いながら、耳元に囁いた。
 明日香の顔は、熱に浮かされたように赤く染まり、瞳は潤みきっている。
「ほうっ…」
 明日香は自由な両手で、軽く縄に触れ、その感触で思わず熱い吐息を漏らす。
(凄く綺麗…、これが私…? 私の身体って…こんなにいやらしいの…。まるで、SEXの為だけの身体…)
 ウットリと見詰める明日香の目が、大きく見開かれ、そして、ポロポロと涙を溢れさせる。
(工藤様…隠して下さった…。私が、一番見られたくない物…。屈辱の証…)
 明日香の涙は、明日香の一番嫌な物を覆い尽くし、しっかりと守っていた。
 番犬に陵辱され出来た傷跡を、純の縄は巧みに隠し、明日香の美しさだけを際だたせていたのだ。
 正にそれは、オーダーメードのワンタイムボンテージスーツで有った。

 しかし、そのボンテージスーツは、作者の手により、別の意味を持つ。
 涙を流す明日香に、純はソッと寄り添い、その肌に指を這わせ
「綺麗だろ明日香…、それにいやらしい…」
 甘い囁き声が、明日香の耳元で響く。
 その瞬間、明日香の子宮と全身が、激しく打ち震えた。
(あく〜〜〜ん…、あふ、す、凄い…。全身をいっぺんに愛撫されたみたい…)
 明日香は全身をビクビクと痙攣させ、頭を反らせて喉を立てると、口をパクパクと開け閉めする。
 快感が強過ぎて、声に成らないのだ。

 純はニヤリと微笑むと、明日香の身体を優しく愛撫しながら、明日香をコントロールする。
 純が指を這わせると明日香の快感が弾け、純が囁くと明日香の羞恥が掻き立てられた。
 弄ばれ、嬲られて、辱められながら、それに逆らえず、言葉の通りに痴態を晒し、官能を貪る。
 恥辱に染まり、官能に翻弄され、従う事に歓喜する。
 明日香の官能は初めて感じる充足感に極限まで燃え上がった。
 明日香は純の縄を味わい、絶妙な指使いで何度も絶頂を貪って、羞恥を感じ、心を蕩かせる。
 その様は、[翻弄]と言う言葉がピタリと当てはまり、明日香の心の真ん中に、純が[雄]として鎮座した。
 明日香は、[ハァハァ]と荒い息を吐き、ベッドの上で官能の残り火に浸る。

 純の手で緊縛を解かれた明日香は、その喪失感に震えた。
 以前にも緊縛は経験したが、その時は開放感でいっぱいだった物が、今は全く逆で有った。
 明日香を満たす物が、根刮ぎ抜け落ちた喪失感に、明日香は思わず身体を抱きしめる。
[もっと、包まれて居たい。もっと、拘束して欲しい]明日香の心の中に、その思いが強く木霊した。
 涙を湛え、恐ろしい程の喪失感を感じる明日香に、純はソッと手で触れ、その思いを鎮めるように優しく這わせた。
 明日香はその喪失感を、埋めるような優しいタッチに、純の目を見詰める。
 その瞳には、意志が有り、優しさが有り、厳しさが有り、慈愛が有り、支配が有った。
 純の視線は例えるなら[威厳有る慈愛に満ちた王]と言った物だった。
 明日香はその瞳で、ずっと貫いていて欲しいと心から願い、何時までも見ていたいと、心から思う。
 だが、純はフッと微笑むと明日香から身を放し、ベッドから離れる。

 純はソファーに腰を掛けると、ディーバックを引き寄せ、中から10cm×5cm×5cm程の箱を取り出し
「これを、屋敷の部屋中にバラ撒け。1個で6畳分だ…」
 箱の中から、リバーシーの駒のような物を取り出し見せる。
 明日香は強い思いを湛えた顔で純を見ると、純は真剣な表情で説明を続ける。
「こいつは、催眠ガスが噴出するチップだ。部屋中にバラ撒いた奴は、俺達がリモコンで作動させる。だが、犬達は庭に放される前、これで眠らせろ。ガスの噴出は、10秒で終わって5秒で拡散する」
 純はそう言うとチップの白面を上に向け
「白面を強く押せば、30秒後にガスが出て、黒面だと3秒後だ、間違えるなよ…。犬共は、お前達を逃がす時に可成り邪魔になる」
 純が告げると、明日香は事の重大さを悟り、自分の感情を抑えつけ、真剣な表情でコクリと頷く。

 純は突然、真剣な表情の明日香の頬に、軽く唇を押し当てると
「お前のオッパイも、足と肩の傷も、これが終わったら治してやる。嘘みたいな人が、仲間にいるからな…」
 明日香に優しく告げた。
 明日香はその言葉を聞いても、暫く意味が分からず呆けていたが、次第に言葉を理解し
「こ、これ…治るんですか…。本当に、治るんですか?」
 眼を剥いて純に問い掛ける。
「ああ、多分治る。元々乳首は、ちゃんと治療さえすれば、元に戻るんだ。それにその肩と股の傷に似た、傷を治したのも見たしな…。最低、目立たなくはしてくれる筈だぜ」
 純が微笑みながら告げると、明日香の両目からポロポロと大粒の涙が、流れ落ちた。

 純は優しく微笑み、10歳以上も年上の女性の頭を撫で
「な、だから頑張ってくれ…。お前達の働きで、全て決まるんだ…」
 優しく抱擁する。
 明日香は気付いていた。
 純が丁寧に傷を避け、自分の身体を愛撫していた事を。
 明日香の心を責めるが、決して傷口には、触れなかった事を。
 いや、厳密には愛撫も触れる事も有った。
 だが、それは労りに満ちた手で、優しく慈しむような触れ方だった。

 明日香は初めて優しい手で、心ゆくまで虐められた。
 明日香は[マゾヒストで良い]と本気で感じた。
 甘い毒のような痺れる快感。
 それを純に感じさせられ、明日香の心は蕩けてしまう。
 明日香はそれを深く感じながら、純の腕に抱かれ、いつまでも泣いた。

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