夢魔
MIN:作

■ 第33章 終幕1

 佐山は竹内グループの崩壊を学校の生徒会長室で知る。
 佐山が目覚めると、佐山の周りには誰1人、居なかった。
 佐山はその状態に苛立ちを覚え、手を叩いて奴隷を呼びつける。
 だが、それに応える者どころか、返事1つ戻ってこない。
 訝しんだ佐山が、ベッドから降りると、執務室からテレビの音声が流れて来た。
 その音声は、地元のローカルニュース局で、しきりに竹内の名前を呼んで居る。
 佐山の意識がそのニュースの内容に向き、耳をそばだてて、内容を理解した時、佐山の顔が凍り付いた。
 佐山の脳に[竹内グループ破産。県内で過去最大級の負債]と言う言葉が認識される。
「な、何だ…。このニュースは…、倒産…。おい、冗談じゃないぞ…お、お終いだ…。くそ、粗方の金が無くなった、この先どうすんだ!」
 佐山は歯噛みしながらテレビを見詰め、自分の財産が消えた事を呪った。

 しかし、ニュースは更に竹内グループの崩壊より、ショッキングな報道を始める。
『え〜、ここで緊急ニュースが入りました。竹内グループ会長、竹内伸一郎容疑者が関与する。様々な事件が証拠物件と供に各関係メディアに送られて来ました。私達は、その件に関して直ぐに正否を確かめて居りましたが、検察庁が正式に逮捕状を請求しました。現場から中継です』
 ニュースのアナウンサーが告げると、現場レポーターが報道陣でごった返す、竹内邸の前で話し始める。
『こちら、現場の宮垣です。竹内容疑者の自宅前は、倒産を聞きつけた債権者や報道陣でごった返しております。ですが、竹内邸内からは、一切の物音がせず息を潜めた様に静かな状態が続いて居ます。あっ、今、警察のパトカーが到着しました。大勢の警察官が、竹内邸内に入り…、これは、任意同行でしょうか…。いや、逮捕です。逮捕状が発行されているもようです…』
 現場リポーターは、興奮気味に状況を生中継する。

 佐山はそのニュースを、愕然とした表情で見詰めていた。
 そして、直ぐに自分のパソコン内に、自分が事件に関与していた証拠が残っている事に気付き
「しまった! アレを見られたら、俺まで捕まっちまう! 姿を急いで隠さんと」
 寝室に急いで戻り、服を着込む。
 エレベーターに飛び乗り、1階に降りるとそこには、キサラが立って居た。
 キサラは深紅のボンテージスーツを纏い、肩に一本鞭を掛け、腰に手を添え仁王立ちして居る。
「お、おお。俺は、一旦身を隠す。今晩中には、奴隷達を全員連れて行くから、準備をしてろ」
 仁王立ちするキサラに、佐山は命じた。

 その命令を聞いたキサラの唇が、キューッと吊り上がり、酷薄な笑みに変わり
「誰が何処に行くって? 誰を何処にやるって? …。あんた、馬鹿じゃない…。まだ気付かないの?」
 佐山に氷の様な声で問い掛ける。
 佐山はそのキサラの問いかけを聞いて、ギクリと顔を引きつらせた。
 慌ててキサラの顔を見詰めた佐山の表情は、ワナワナと振るえ口がユックリと開く。
「お、お前…まさか催眠術に、掛かって無かったのか…」
 佐山が震える声で、キサラに問い掛けると
「フフン…。あんな子供だましに、私が本当に掛かると思ってたの? あんな物、意志が強い者には、何の役にもたた無いわ…」
 キサラは嘲る様に、佐山に告げると、呆然とする佐山に向かって
「私の[新しいご主人様達]から、命令を頂いたわ…。お前を[連れて来い]ってね…」
 クスクスと笑いながら、小馬鹿にした様な声で佐山に告げた。

 そして、キサラは胸の谷間に、挟んで有った携帯電話を取り出し
「これ、お前の生命線よね…。こん中に、ゴマンと詰まってるみたいね、お前の毒牙に掛かった人の情報…。ご主人様に差し出したら、どんなご褒美が貰えるか楽しみだわ〜」
 眼前に翳しながら小さく呟いて、ニッコリと微笑む。
 その携帯電話を見た、佐山は自分のズボンのポケットを押さえ、紛れも無く自分の物だと認識すると
「や、ま、待て! 待ってくれ…。それには、俺の全てが詰まってる! 頼む、返してくれ」
 顔を情けなく歪め、キサラに懇願する。
 キサラは酷薄な視線を佐山に向け
「あんた、本当に馬鹿ね。[返せ]って言われて、[はい、どうぞ]って渡すと思う? レベル低…。はぁ〜、もう良いわ、言われた事だけ、やって帰ろ…」
 キサラは1つ大きく溜め息を吐くと、肩に掛けていた一本鞭を掴み、勢いよく振り抜く。

 キサラの放った鞭は、目にも止まらぬ早さで、正確に佐山の喉に巻き付いた。
 佐山は[グゥッ]と言う声を漏らし、喉を両手で押さえる。
 巻き付いた鞭は、佐山の喉を締め上げ、呼吸を完全に止めた。
「は〜い、こっちへいらっしゃい。お前に相応しい物を上げるわ」
 キサラはそう佐山に笑いながら言うと、グイグイと一本鞭を引き寄せ、佐山を手元に引き込む。
 呼吸の出来無い佐山は、口を大きく開いてキサラに引かれるまま、這い蹲って足下まで進んだ。
 足下で大きく口を開いた佐山に
「ほら、お咥え!」
 ボールギャグをねじ込み、固定する。

 キサラはボールギャグを咥えさせると、鞭を器用に手首の返しだけで外し、金属製の大きなマジックハンドを佐山の首に嵌めた。
 金属製のマジックハンドは、リードなどと比べると、遙かに自由度を奪い、ハンドラーの意志をダイレクトに伝える。
 キサラが持っている取っ手を捻れば、その動きは即佐山の首に付いた、金属環に伝わり首を捻り上げた。
 キサラは酷薄な薄笑いを浮かべ、グイグイ金属棒を押し、這い蹲った佐山を無情に操作して、運動場へ向かう。
 運動場には、8台の大型バスが駐まり、その中には佐山に催眠を掛けられた生徒と佐山の部下が乗っている。
 キサラが一番手前のバスに乗り込むと、佐山の部下は怪訝な表情を浮かべるが
「あっ、良いの、良いの。こう言うプレイだから、気にしないで良いわよ」
 キサラの言葉で、全員が納得し指示に従った。
 キサラが運転手に目配せすると、大型バスは走り去って行く。
 その走り去るバスを教頭達と地下に避難した生徒達が見送り、姿が見え無く成るとそれぞれに解散した。

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