夢魔
MIN:作

■ 第33章 終幕2

 キサラ一行がホテルに到着すると、奴隷生徒、教師達と調教生徒、佐山の部下とそれぞれに分散させ、各自の催眠を解き始める。
 奴隷生徒の催眠は集団催眠の為、簡単に催眠を解く事が出来た。
 教師達と調教生徒には催眠が掛かって居らず、休養を指示し、佐山の部下達もキサラが手に入れた携帯電話のお陰で、かなり容易に催眠状態から解放する。
 佐山の部下にされていた者達は、様々な業種だったが、その多くはチンピラと呼ばれる者達であった。
 だが、稔達はそんな者達も分け隔て無く、懐に取り込み催眠による障害をケアして行く。

◆◆◆◆◆

 フォックス達は休暇を終え、バカンスから帰ると顔面を蒼白に変える。
 それは、当然自分が投資した、竹内グループが倒産した事実を知ったからだ。
「な、なんだこれは…。何の冗談だ…」
 フォックスは自分の持ち株数が、20%を越える会社の株価暴落を見て、愕然とする。
 フォックスは慌てて自分の腹心の部下を呼び出すが、その部下はもう会社を辞め、アメリカ国内にも居なかった。
 ガックリと肩を落とし、自分が嵌められた事を知ったフォックスは、直ぐに気を取り直して状況分析を始める。
「ぐぅっ…。何だこの会社…、ここまで、酷い会社は無いぞ…。スカスカのクズ会社じゃないか!」
 フォックスは純のリークで明らかに成った、竹内グループの粉飾決算や資産状況を見て、顔を歪めた。

 フォックスは直ぐに自分の個人投資を任せている、ファンドマネージャーに連絡を入れたが、一切相手にされず電話を切られる。
 それは、フォックスの資産が消えてしまった事を意味していた。
 ビジネスライクな欧米では良くある事だが、ここまで典型的なのは、フォックスが嫌われていた以外の、何物でもない。
 フォックスは資産を計算し、呆然とする。
 現状で250億円を越える損失を出していた。
 月曜日に成って市場が開けば、その損失は更に増えるで有ろう。
 フォックスはその事実を認識し、電話機を元に戻すと、ソファーに倒れ込む様に座る。

 両手で顔を押さえ、深い溜め息を吐くと、顔を覆ったまま、笑い始めた。
「ふははははっ! やられた…、完全にしてやられたわ…。あの猿め! 下等な猿にここまで、嬲られるとはな…。しかし、会社はやらんぞ…。儂の会社は、祖父が築き上げた物だ! あんな猿には絶対わたさん」
 フォックスは高らかに宣言して、両手を顔から外す。
 その双眸は暗く沈み、憎悪に燃えている。
 自らが裏切り、そのしっぺ返しを喰らっても、フォックスは筋違いの憎悪を向けた。

◆◆◆◆◆

 竹内グループが崩壊した事件は、直ぐにホテルにも届き、ホテル内は喝采に包まれる。
 皆が手を取り合って、喜んでいると
「皆さん、まだ手放しでは、喜べません。今、工藤君から連絡を貰ったんですが、メイドの方とマンションに住んでいた方は、暫くの間、ここで暮らして貰います。あなた方の身柄が、佐山に売られて居ました…。今、その組織が市内で動いています。危険が無くなる迄は、ここに居て下さい」
 黒沢が現状を説明する。

 黒沢は全員落胆するかと思いきや、皆黒沢に笑顔を向け
「はい、解りました。家族も一緒で良いんですよね」
 などと、質問を返して来る。
 ここに居る全員、自宅に戻るより、このホテルでの生活が快適で、楽しく成って居たのだ。
 同じ不安を抱えた者達が、寄り添い合い助け合い、経験した事の無い[癒やし]が有る生活は、彼女達を魅了していた。
 それに、お互いの傷を知って居るだけ有って、話しも合い、気持ちも通い合い、旧知の間がらのように打ち解けていたのだ。

 その頃純は、以前梓の露出調教時に取り付けさせた、金田の病院内の監視カメラの映像を見て居た。
 柏木が実権を握って、1ヶ月程で有るが、分院での狂気じみた行動が気に成り、実状を把握するつもりで、カメラを繋いだ。
 映像を見た瞬間、純の動きが止まった。
 総合病院は、その様相を完全に変えていた。
 看護士は、白衣をはだけ裸身を晒し、男に媚びを売りながら、腰を振っている。
(あの看護士見覚えが有る。まだ、二十歳そこそこなのに、落ち着いて品の有る看護士だった…。一体、どう言う事だ…)
 純が訝しげに、眉をひそめて画像を切り替えると、至る所で看護士が身体を開いて、入院患者に抱かれている。

 そして、純はその理由を知った。
 弥生の作った媚薬が、原因だった。
 看護士達は、ナースセンターで自らの身体に注射針を立て、薬液を注射しうっとりと顔を蕩かせる。
 純は痛ましそうに顔を歪め、柏木の罪をまた一つ確認した。
(あの馬鹿医者…止まる所を知らねぇな…)
 純は柏木の暴走に対する罰を思案する。
 だが、純はフッと考えを変え、以前から考えて居た事を実行に移す。

 純は急ぎ自分の傘下の業者に電話すると、有る物を今回の関係者全員に配らせる。
 そして、自分はパソコンを操作して、有るサイトを立ち上げた。
 アドレスを知らなければ、決して見る事は出来無いサイト。
 純が送った物を持たなければ、全く意味のないサイト。
 純はそれを立ち上げ、笠崎の迎えの車に乗り込んだ。
 純は全てをやり終え、ホテルに向かう。
 自分達の真価を問いに。

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