夢魔
MIN:作

■ 第33章 終幕10

 笠崎の雰囲気に、誤魔化されそうに成ったが、ユックリと言葉を繰り返し理解すると、真は何も言えなく成った。
 そんな真に、純はユックリと口を開き
「弥生に美香…この2人に手を出しといて、俺が生易しい事で済ますと思ってんですか? 今は2人とも、俺のモノじゃないですが、俺に取っても、可愛い奴隷には違い無いんですよ…」
 腹に据えかねていた事を告げた。
 真は、そんな純の気持ちを考えなかった事を恥じ、頭を下げる。

 純達はマンション奴隷を家族と供に自宅に送り届け、教師達も解散させた。
 メイド達も家族の居る10人は家族の元に戻り、残りの22人は自宅が決まるまで、純の自宅マンションの空き室を使う事に成った。
 人体改造を受けた者達は、皆金田の自宅に引き取られ、モルモットにされた者達は、溝口の病院に運ばれる。
 金田の病院は、現在柏木の蔓延させた媚薬のせいで、惨憺たる有様になっていたからだ。
 マネーゲームは竹内達を叩きつぶしたが、その爪痕はまだ至る所に残っていた。
 ホテルはもぬけの殻に成り、それぞれ本来の屋根の下に戻り、安らいだ夜を迎える。

◆◆◆◆◆

 翌朝になると稔達は、金田の総合病院に向かった。
 病院の実権は、柏木の悪行を金田が表に出て、理事会に直訴した。
 理事会は金田の姿と、柏木の悪行の証拠がボロボロと出て来た為、医院長を解任し解雇を決める。
 だが、その柏木本人も、失踪して行方が解らなかった。
 次の医院長に、金田を戻そうとしたが、金田自体も医師を続ける事の出来無い身体の為、金田の妻梓が医院長に任命される。
 梓はその任命を受け、委員長の座に着くと、入院患者を全て一時転院させた。
 それは、柏木の残した爪痕を片付ける為だった。

 柏木は元から居た婦長やベテラン看護師は、全て解雇し半分を入れ替え、皆、若く美しい女性に変えていた。
 そしてその看護士達に、開発したばかりの媚薬を投与し、意のままに操っていたのだ。
 弥生が媚薬の成分を調べると、依存性の強い蓄積型だった。
 それは、合成麻薬と媚薬を混合した物で、3ヶ月も使ってしまうと、廃人に成りかねない危険な物だった。
 幸い投与が始まって2週間程だった為、依存性は消せるが、媚薬の効果が完全に抜けるには、半年以上掛かってしまう。
 その間、投与された彼女達は、身体中が発情し性的絶頂を求めてしまう。
 言わば[色情狂]状態なのだ。
 みな、ウットリと夢を見ている様に目を蕩かせ、身体を擦り付けて、欲情を訴える。

 稔はその光景を見詰め、腕組みしながら考え込む。
「しかし、おかしいですね…。この方達は、病院に入るとこう成ってしまって、私服の時には我慢していましたよね?」
 稔がそれに気付いて、弥生に問い掛けると
「あ、はい…。恐らく、白衣を着ると解放される様に、条件付けされて居るんだと思います。この薬は投与時にいくつか条件付けして、軽い洗脳状態にする効果も有りますから…」
 弥生が説明すると、稔は頷いて
「洗脳まで効果を付けるとなると、相当危ない薬ですね…。ですが、条件付けだと、それを書き換えられますね…」
 弥生に問い掛ける。

 弥生は頷いて、それを認めたが
「ですが、書き換えるとなると、以前より強いショックが必要に成ります…」
 稔にその難しさを告げた。
「大丈夫です、僕に任せて下さい。彼女達に秩序を取り戻します…」
 ニッコリと微笑んで、弥生に優しく告げる。
 弥生はポッと頬を染め、稔から視線を逸らすと、稔はスッと立ち上がった。
(もう、稔様ったら…。本当に美しいお方…、あれで、厳格なサディストなんだから…タチが悪いわ…。厳格なサディスト…? 秩序…? 僕に…任せて…って! あ、駄目、稔様!)
 弥生が稔の言葉の意味に気付き、稔を振り返った時には、遅かった。
 稔はサディストの圧力を全開にし、ボウッと見詰める看護士達に向かって宣言する。
「僕が、お前達の主人だ! 今後一切は僕に従え!」
 看護士達に命令した。

 看護士達は全員その圧力と雰囲気に呑まれ、ブルブルと震えると、全員床に平伏した。
 看護士達の脳は稔を主人と認め、それを焼き付けた。
「ねっ、大丈夫だったろ」
 稔は弥生に視線を向けて、小首を傾げてニッコリと微笑む。
 弥生はその様を見て、大きな溜め息を吐き
「稔様…。この子達、これで生涯、稔様の奴隷ですよ…」
 ウンザリとした様子で、稔に告げる。

 稔は[へっ?]と小さく驚き弥生に理由を求めると
「稔様以上に、強いプレッシャーを持った、サディストが現れて、この子達の洗脳解かない限り…。書き換えは出来ません…」
 弥生は稔に説明した。
 稔は弥生の説明で、やっと意味を理解し、自分のミスを理解する。
「この事は、美香ちゃんにちゃんと報告しておきます…」
 弥生がそう告げると、稔は情けない笑いを浮かべ
「ご免なさい、僕から説明するから…。暫く黙ってて下さい…」
 弥生に懇願した。

 すると、その背後から
「稔様…。もう、忠誠をお集めに成られたんですか?」
 梓がニッコリと微笑みながら、ツカツカと歩いてくる。
 その微笑みは、作った様に張り付いていた。
「いや、梓…これは、手違いで…」
 稔は梓に言い訳しようとするが
「どうされました? 梓の物は、ご主人様の物…何を言い訳なさる必要が有るんですの…? お前達、ご主人様に、ご挨拶なさい、心からご奉仕するのよ…」
 梓が看護士達に命じると、看護士達は一斉に白衣を脱ぎ捨て、稔に群がった。
「あ、梓〜…」
 稔は絶叫を上げ、看護士の中に埋もれて行く。
 ともあれ、金田総合病院の看護士達40人は、稔を主人とする事で、快方に向かう事となる。

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