夢魔
MIN:作

■ 第33章 終幕11

 日曜日の朝、学校では臨時総会が開かれ、全校生徒が集まっていた。
 全校生徒の集まる体育館の壇上には、純が立ち今後の学校方針を説明する。
「今後学校内では、階級やランク分けをしない。みんな、平等だ。但し、一部のクラス役員や生徒会役員、風紀委員にはそれなりの特権を与える。それがなければ、職務に支障を来すからな」
 そう切り出すと、純は全校生徒を見渡し、肝心な話を始める。
「でだ、これからは、お前達が強要されていた、性的訓練は一切強要しない。全て自発に任せる。したい者はしろ、したくない者はしなくて良い。教わりたい者は、それなりの指導者に聞けば良いし、何も規制しない。但し、校内で行われてる事に関して、一切他言無用だ」
 純は全校生徒に向かって、そう告げる。

 純の言葉を聞いた全校生徒は、皆水を打った様に静まりかえった。
 そんな中、1人の生徒が手を挙げ、純に質問する。
「済みません、私3年生なんですが、授業はどう成るんですか? もう受験も間近に迫ってますし、最近の…色々な事で、成績も落ちてます…。それについては、どうして頂けるんですか?」
 切実な声で訴えた。
「おう、良い質問だ。それについちゃ、ちゃんと打開策がある。視聴覚教室の機械覚えてるか? アレを使って、学習すると1学年のカリキュラムを1日で覚えられる。まぁ、スペック的にだがな、実際それをしたら、脳みそが付いていかない。と言う事で、1日1時間あそこで勉強すれば、200時間分の知識を得られる。遅れた分も直ぐに取り返して、お釣りが来るぞ」
 純は自信満々で女性徒に答えた。

 するとまた1人女性徒が手を挙げ
「あ、あの〜…。この学校…、男子生徒が少なくて…、折角練習しても…、試せないんです〜」
 抗議の声を上げる。
「はい、そこ! また、良い抗議だ! それも、考えてますよ〜。近々大量に、転入生が入ってくる予定だ。2/3は国外から入ってくる。その半分は、外国人だ。みんなちゃんっとSっ気が強いぜ…、まぁノーマルはこの学校に入れないから、当然だがな…一部Mも居るから、心配するな」
 純は3年生の風紀委員達を指さし、ニヤリと笑う。
 その言葉を聞いて、キャァキャァと指を差された一団が、小躍りする。

 すると、別の生徒が怖ず怖ずと手を伸ばし、ビクビクとした態度で質問する。
「あ、あの…申し訳有りません…。罰を…受けていた…私…達は…どうなるんですか…」
 それは、家畜生徒にされていた少女だった。
「おお、お前等か。勿論、罰なんて帳消しだ。お前等も、普通に学校生活を送ってくれ。以前の事は全て忘れろ」
 純はにこやかに少女に伝えると、少女はホッとしたのか、顔を覆い泣き始めた。
「はい、はい、は〜い! あ、あの〜どうやったら、工藤様とお付き合い出来るんですか〜?」
 少女が突然手を挙げ、純に質問すると
「ばっかじゃな〜い。あんたみたいな、躾の成ってない女が、工藤様と付き合える訳無いでしょ〜」
 別の場所で、罵声が上がる。
 その輪はドンドン広がり、収拾がつかなくなって行く。

 キャア、キャアと騒ぎ始めた480人の女子高生を教師達が納めようとするが、なかなか収まらない。
 そこに、庵がスッと純の横に並び
「黙れ!」
 一言恫喝した。
 それは、体育館の窓ガラスがビリビリと震えたかと思う程、鋭く威圧的な大声だった。
 女性徒の騒ぎは、ピタリと止まり、前列に並んでいた、何人もの女性徒は庵の風格に見とれ、その圧力に立ったままお漏らしをする。
 女性徒の騒ぎが収まると、庵はスッと純に頭を下げ、元の位置に戻る。
 女性徒達は殆どの者が、庵の事を知らない。
 特に1年と3年は接点が無く、初めて見る生徒も多かった。
 だが、それ故、庵の登場は衝撃的だった。
 [完全な雄]皆が、一様にそのイメージを持つ。

 皆、ドキドキと胸を高鳴らせ、庵の顔に見とれていると
「済みません、遅れてしまいましたね…」
 そう誤りながら、壇上に1人の学生が駆け上がる。
「おう、稔遅かったな? 何か有ったのか…」
 純が稔に問い掛けると、稔は照れくさそうに笑って
「少し、失敗しました…」
 純に答えた。
 女性徒達の目は、稔に釘付けになった。
 稔はその野暮ったい眼鏡を外し、自分の美貌を初めて衆目に晒した。

 2年生の女性徒達の間で、ヒソヒソと囁く声がする。
(誰…あの人…誰よ…。あんな人ウチの学校に居なかったでしょ…)
(え、でも…工藤様…[稔]って、仰ってたわ…柳井君? …)
(うそ…、柳井君…、眼鏡取ると…あんな格好良いの…?)
 2年生女子のヒソヒソ話がまた、燎原の火の如く広がり始めると、純が稔に合図する。
 稔はコクリと頷くと、純と入れ替わり壇上に立ち
「静かに!」
 凛と響く声で、女性徒達に告げた。

 女性徒達はその声にビクリと身体を震わせ、居住まいを正して稔を見詰める。
 それはまるで、王の威厳を持った言葉だった。
 [従わなければ成らない]そう彼女達に思わせる、雰囲気が漲っていた。
 女性徒達の殆どが、稔の声を聞き[傅きたい]と心から感じる。
 彼女達は稔の一言で理解した、[この方もサディストだ]と。

 稔は女性徒達を見渡し、涼やかな通る声で
「僕は柳井稔です。これから、生徒会長として、皆さんと意義有る学校生活を送りたいと思っています。どうぞ宜しくお願いします」
 女性徒達に挨拶する。
「俺は、また副会長だ、説明はさっき色々したが、まぁ、あんな感じだ頼むわ」
 純が軽い口調で挨拶すると
「会計の垣内庵だ、よろしくな」
 庵がボソリと挨拶した。
 女性徒達はモゾモゾと足を摺り合わせ、この新生徒会役員と、[お近づき]になる方法を模索する。

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