夢魔
MIN:作

■ 第33章 終幕14

 2人が感動に浸っていると、梓が病院から帰って来て、2人のピアスに気付く。
「あ、あぁ〜…。ご主人様…有り難う御座います…。私の娘2人とも、お側に飼って頂けるんですね…」
 梓は稔の前に平伏し、感謝の言葉を言った。
 稔は梓の帰宅に気付くと
「あ、梓にも、プレゼントが有るんです」
 そう言って、鞄の中に手を入れ、シルバーのプレートを取り出す。
 シルバーのプレートには[MITUO]と名前が彫られていた。

 梓はそれを見て、金田を見詰め、再び稔に視線を戻し
「わ、私は、もう、用済みですか…?」
 震える声で、稔に問い掛けると、稔はニッコリ微笑んで、首を左右に振り
「いいえ、梓は用済みに成った訳では有りません。ただ、僕の可愛い傷ついた奴隷に、寄り添って面倒を見て欲しいんです。僕より梓を必要としている者の所へ、忠誠を誓って欲しいんです。僕のお義父さん何ですから、ねっ、お義母さん…。僕達はこれからは、家族に成ります…。ずっと、一緒ですよ…」
 梓に告げる。

 梓は金田の方に視線を戻すと、金田が不自由な身体で、稔の前に走り寄り
「ご主人様…、それでは、梓さんが、あまりに、可愛そうです…。こんな…、こんな、姿の私に…」
 金田が必死に稔に抗議すると、稔は金田の前に手を差し出し
「その件については、梓の方に連絡があったと思うけど…」
 そう言いながら、梓に顔を向ける。
 梓は稔の言葉にハッとし、気持ちを切り替えて
「あ、はい。今日、医院長室に何本もの電話が入り、様々な方が来日のスケジュールを伝えてきました。ベン博士やシュワルツ博士、ロッテンマイヤー教授やクラウド博士など、世界中の名医や権威と呼ばれる方から、電話を頂いて、私はどうして良いのか解りませんでしたが、全てのスケジュールを受け取りました」
 今日病院で有った事を稔に報告する。

 稔は梓の報告に頷くと、金田を見詰め
「満夫、お前の身体は、出来るだけ元に戻します。それだけで無く、人体改造された人達や、傷ついたメイド達も、外科的に治療が必要な方達は、全て出来る範囲で治します」
 力強い声で、金田に告げる。
 金田は稔の言葉を聞いて、ガクガクと震え床に平伏すると、稔に感謝を告げた。
 稔は金田を優しく撫でながら
「その治療の後には、辛いリハビリの生活が待っています。ですから、梓は満夫の専属で側に付いていて欲しいんです」
 稔は梓に優しい声で、依頼する。

 梓は稔の深慮に気付かず、項垂れてしまう。
 そんな梓に稔は、意地悪い微笑みを浮かべると
「それに、僕は知りませんでしたよ…、あんなに梓が泣き虫で、甘えん坊だったなんて…」
 梓に告げると、梓は一瞬驚いた顔をして、稔を見詰め、直ぐにそれが何の事だか理解し、顔を真っ赤に染め俯いた。
 梓は、ホテルで金田が、自殺しようとした夜、金田に泣き付きながら猛抗議して、その後[罰]と言いながら、散々甘えたのだ。
「梓も解ってくれるね」
 稔がウインクして梓に言うと、決定的状況を押さえられた梓は、頷くしかなかった。

 稔は頷くと全員を見渡し
「今日は外に食事に行きましょう。純に連絡して、店を押さえます。梓と美香はこの間のドレスを着て下さい、美紀は出がけに僕が買って上げます」
 にこやかに告げる。
 全員が頷くと、稔は純に連絡を入れ、高級レストランとブティック、それとビューティーサロンを予約すると、準備に取りかかるよう告げる。
 稔のスーツは美紀が甲斐甲斐しく世話をした。
 だが、美紀は稔の準備を終えると、直ぐに部屋を出て行きどこかに急ぐ。

 稔や梓達の準備が終わると、美紀が金田と供にリビングに現れた。
 金田は驚いた事にスーツを身に纏っている。
 かなり関節や筋をいじられた金田にとって、普通の洋服を着るのは、かなり苦労する筈だった。
 驚く3人を見て、美紀はニンマリと笑い
「えへへへっ、パパのスーツ…、改造しちゃいました」
 ペロリと舌を出して、稔に告げる。
「満夫…辛くは無いのかい…?」
 稔が金田に問い掛けると
「はい、かなり、関節、にも、余裕が、有って、全然、大丈夫、です」
 金田は稔に報告する。

 梓は金田の姿を見て、美紀を見ると
「美紀ちゃん…、本当に有り難う…」
 目頭を押さえ、美紀に感謝する。
 美紀は金田の首に抱きつき
「ママの為じゃないモン。私がパパとお出かけする為に、作ったの」
 梓に向かって、頬を膨らませて言い、金田の頬に頬摺りする。

 それを見た瞬間、梓の涙がピタリと止まり
「美紀…、満夫様は私のご主人様なのよ…」
 静かに美紀に告げる。
「パパ〜、ママが虐める〜」
 美紀が金田に甘えると、金田は困った顔でオロオロとしながら、2人の仲裁に入った。
 稔はクスクスと親子喧嘩を見守り、稔の横にスッと美香が寄り添う。

 稔を見上げた美香が
「ご主人様…、本当に有り難う御座います…。私達親子…、稔様のお陰で、本当の絆を頂けました…」
 深々と頭を下げて、感謝を示す。
「僕は何もしていません。只、僕は欲張りなんです。大好きな物を全部側に置きたい…、それだけです」
 稔は美香にニッコリ笑って、優しく告げた。
 美香の頬は真っ赤に染まって
「嬉しいです…、稔様の[大好きな物]に入れて頂いて…」
 俯いて、モジモジとする。

 稔は美香の肩に手を回し、優しく抱きしめ口吻しようとすると
「あ〜っ! お姉〜ちゃんズルだ〜!」
「美香、抜け駆けは駄目じゃない! そんな子に育てた覚えは、有りませんよ!」
 今度は、2人が共闘して美香を責める。
「もう! 良いムードが台無し…。もう少し、喧嘩しててよ…」
 美香は唇を尖らせ、2人に怒った。
 3人は怒った顔を見合わせ、同時に笑い合った。

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