夢魔
MIN:作

■ 第33章 終幕15

 月曜日の株式市場が開くとジェネシス社の4人は、この株取引が純の罠だったと気付いたが、後の祭りだった。
 手持ちの株を手放しても、一切買い手が付かない。
 株価は下がる一方で、4人は自分達の資産が減って行くのをただ、指をくわえて見ているしか無かった。
 水曜日に成って、純の信用売りの決済期限が、来た時には、一株800円台迄落ちていた。
 純は、信用売りしていた株式80%分を底値で買い取り、残りの20%も様々な名義で、買い占めた。
 そして、ジェネシス・ジャパンが竹内グループを傘下に飲み込んだ。

 完全に純の筋書き通りの結果に成り、4人の副社長達は資産の9割を純に奪われる羽目に成った。
 そして純は、ジェネシス社の生命線で有る、クラウドシステムのパテント料を要求する。
 クラウドシステムの様々な特許は純の個人特許で有り、システム用の資材は、ネットワーク部門の資産で有る。
 これにより、ジェネシス社は莫大なネットワーク使用料を支払わなければならなく成った。
 新社長は、システムの変更を試算させたが、現行のスペックを維持しシステム全体を変更した場合、天文学的な数字に成る上、膨大な月日が掛かる事を知る。

 愕然とする新社長に、純は次の手を打つ。
 それは、株主総会の招集だった。
 純が解任される理由に成った、日本に対する投資は、見事に成功し投資した20億ドルを回収した上、グループ企業をひとつ資産ごと手に入れたのだ。
 そして、情報・ネットワーク部門を切り離した、愚行をつつかれては、グゥの音も出ない。
 新社長と残りの副社長が、個人的感情によりそれらを行った証拠も突き付けられて、4人は解雇された。

 純を追い落とそうとした4人は、逆に会社から追い出され、ジェネシス・ジャパンと提携を結ぶ事で事態を収束させた。
 純はこうしてジェネシスの本社を日本に移し、竹内グループを手に入れ、不穏分子を一掃し、業績を伸ばした。
 この事件で、数々の犯罪行為が有ったが、純は巧妙に情報を操作し尻尾を掴ませ無かった。
 そして、アメリカ全土からスタッフを呼び寄せ、竹内グループの再建に当たらせる。
 伸一郎のご機嫌取りでのし上がった、無能な役員連中は、軒並みクビを切られた。

 純はジェネシス社社長の業務を終わらせ、学校の増設工事を発注し、転入生の手続きを終わらせた。
 全ての煩雑な仕事を終わらせると、絵美を連れ絵美の母親が入院する病院に向かう。
 純は病室に入り、絵美の母親に改めて挨拶すると
「俺は、絵美さんを愛しています。性癖に難が有りますが、絵美さんも理解してくれて居ます。経済力には、自信も有ります…。絶対不幸にはさせません、だから絵美さんを俺に下さい!」
 いきなり、土下座して母親に懇願する。

 絵美はその純を見て、目が点に成り次の瞬間涙が溢れた。
[大事な話しが有る]と純に言われて着いて来ただけの絵美は、まさかこんな展開に成るとは、思っても居なかったのだ。
 絵美は純の横に並んで正座し
「母さん…、私はこの方の居ない人生は、もう考えられ無いの…。お願い…許可して…」
 涙ながらに訴える。

 絵美の母親は、呆気にとられた顔をニッコリと微笑ませ
「[綺麗なお兄ちゃん]ね…。本当に綺麗な方ね、希美がいつも言ってたわ…。あなたが言った事が本当なら、絵美の新しいお仕事もあなたの仕業ね…、新しい家も、この病院の手配も全部そうでしょ…?」
 静かに問い掛けた。
 純がコクリと顎を引いて頷くと、絵美の母親は絵美に顔を向け
「絵美…、この方との結婚…、家族の事を考えての事?」
 静かな声で今度は絵美に問い掛ける。

 絵美はブンブンと勢い良く頭を左右に振り
「そんな事無い! そんな事、絶対に無い。私、例え純様が一文無しでも、絶対着いて行く」
 絵美が強く否定する。
 その絵美の言葉を聞いて、母親がクスリと笑い
「[性癖に難]…、[純様]…。確かに雰囲気有りますモノね…。良いわ…、っていうか私がとやかく言える筋合いじゃ無いわよ…。絵美には苦労掛けっぱなし何だし…。好きにして良いけど希美達にあんまり、影響与え無いでね、選ぶのはあの子達なんだから」
 絵美の母親は、2人の結婚を承諾し、純に釘を差した。

 純がその言葉で、母親の顔を見詰めると、母親はクスリと微笑む。
[私も知らない訳じゃ無いのよ]とその微笑みが言っていた。
「でも、絵美は良い人に見初められたわね、男は経済力が一番よ。ねっ、[純様]」
 絵美の母親は純にウインクして告げると、居住まいを正し
「不束な娘ですが、どうか宜しくお願いします」
 深々と頭を下げて挨拶した。

 純と絵美は、親公認の主従と成った。
 純は帰りの車で大笑いし
「まさか、こんな展開に成るとはな…」
 一人呟く。
 絵美はキョトンとして、何も気付いて居ない。
 そんな絵美に、純は微笑み
「愛してるぜ」
 呟いて、口吻した。
 絵美は嬉しそうに純を受け入れ、抱きついていつまでも純に応える。

◆◆◆◆◆

 アメリカから呼び寄せたスタッフの家族は、稔がチェックをした[同好の士]で、子弟達は学校に通うように成る。
 それらに加え、取引の有ったヨーロッパやアラブ等からも編入を受け入れた。
 これだけで、100人程サディストの卵が学校に増員された。
 だがそれだけでは無く、稔のコネクションからも、庵のコネクションからも編入生が供給される。
 その結果3年生120人、2年生90人、1年生40人の計250人男子生徒が一挙に増える事に成った。
 この人数は、現在の学校のキャパシティの限界近い人数で、がら空きだった教室がほぼ埋まる人数で有る。

 編入して来る大半の生徒達は、当面の間、純が買った郊外のホテルを寮として使い生活させる。
 交通の便は悪いが、セキュリティーに関しては、完璧だったからだ。
 純は[財力]稔は[才能]庵は[運動]とそれぞれ突出した者を集めたのだ。
 セキュリティーに関しては、万全を期す必要が有った。
 下手に留学生達の身柄に何か有れば、国際問題に成り兼ねない生徒達も沢山居るのだ。
 但し、この生徒達は[自分の身分を一切公表しては成らない]と言う決まりを作った。
 それは、卒業してからトラブルの元に成り兼ねないと言う、配慮からである。

■つづき

■目次5

■メニュー

■作者別


おすすめの100冊