夢魔
MIN:作
■ 第33章 終幕16
この供給により、手狭に成った感の有る学校を広げる計画が、立ち上がる。
純は稔と供に、その計画を玉置に持ち掛けた。
稔が玉置に会いに行く事を聞き、美紀がお供を申し出る。
そして、その話しを聞きつけた真が、山の持ち主探しに同行した。
稔達が、溝口の病院に面会に行く。
だが、玉置は見舞いに来た稔達に会おうとしなかった。
「帰れ、帰れ!」
扉に枕をぶつけ、玉置が怒鳴る。
「おい、稔…。玉置の爺さん、何で怒ってんだ?」
純が問い掛けると
「さぁ…、僕にも見当が付きません…」
稔が首を傾げると、美紀がおずおずと手を上げ
「あの〜、ご主人様…。お爺ちゃまに、私達が病院を出た理由、お教えしました?」
美紀の言葉で、稔はハッとした表情に成り、大きな溜め息をひとつ吐く。
「忘れてました…。溝口さんもホテルに詰めて貰いましたから、誰も説明して居ませんね…。約1週間、ほったらかし状態です…」
稔が右手で顔を抑え、呟く。
「あ〜あ…。どうすんだよ、あの爺さんのフォローお前の仕事だろ…。あそこ迄怒らせてたら、話しも出来ねぇぞ」
純に追い討ちを掛けられ、流石の稔もへこみ始めると
「あ、あの〜。私がご機嫌伺って来て、良いでしょうか?」
美紀が申し出る。
美紀の言葉に、稔達が反応し
「美紀、頼みます。美紀だけが、頼みの綱です」
稔が美紀に頼み込むと、美紀は嬉しそうに微笑んで
「はい! 何をしてでも、お爺ちゃまのご機嫌を戻して見せます」
元気に返事をする。
美紀は、玉置の病室の扉をそっと開き
「お〜爺〜ちゃ〜ま」
玉置に声を掛け、中に入る。
稔達が入った時には、怒鳴り声で迎えた玉置も、美紀が入ると、何も言わず迎え入れた。
稔達が呆気に取られていると、10分程で扉が開き
「ご主人様〜。お爺ちゃま、解って下さいました。どうぞ、お入り下さい」
美紀がニコニコ笑いながら、稔達を呼んだ。
流石[熟年キラー]の美紀だった。
美紀が玉置の枕元に立ち、玉置に微笑み掛けると、玉置の表情もだらしなく崩れる。
稔がペコリと頭を下げると
「何か、大変そうだったらしいな…。だが、儂も仲間なんだから、蚊帳の外に追いやるような真似は、金輪際許さんからな」
ブスりと頬を膨らませ告げる。
「はい、申し訳有りません」
稔が素直に頭を下げると
「あ〜…。お爺ちゃま、約束が違〜う…。ご主人様を怒らないって、言ったのに〜」
美紀が頬を膨らませ、玉置に言うと
「いや、これは、違うんじゃ。美紀ちゃん、爺は怒っとらんて」
玉置は、慌てて美紀に言い訳する。
稔は、クスリと笑うと、玉置に今の状況を説明し始める。
「ふ〜ん…。なら、南と西の空き地を使え。あれも儂の土地だ、あの土地を使えば、今の学校の4倍ぐらいに成る筈だ」
玉置の言葉で、学校の拡大計画は、呆気なく解決した。
すると今度は真が身を乗り出して
「あのですね、東の山何ですけど、持ち主の方って居られます? もし、居られるなら、ご紹介頂けませんか?」
玉置に問い掛ける。
玉置は真に向かって
「東の山? 手前から3っつ迄は、儂の山じゃ。奥の2つは、隣の市に居る。知り合いじゃし、紹介してやろう。じゃが、何の話しをするつもりじゃ?」
玉置が真に問い掛けると、真は事のあらましを説明する。
真の話を聞き終えると、玉置は暫く考え込み
「そう成ると無理じゃな…、あいつは業突張りじゃ…。売りはしても、貸しはせんじゃろ」
玉置は真にボソリと答える。
真の希望としては、大小連なった5つの山が必要だった。
玉置が言う2つの山が、手に入らないと、真の流派の秘匿性が保て無い。
真が困った顔をしていると
「あの山2つ…。5億円は、必要じゃな…」
玉置は、山の値段をボソリと告げる。
真はその金額を聞いて、深く大きな溜め息を吐いた。
(5億円ですか…。そんな金額…どう足掻いても無理ですね…)
真が肩を落とすと
「んだ、それ位の金。俺が出してやるよ」
純が笑いながら、真に告げるが
「いえ…。それは、出来ません。そんな返せる当ても無いお金を借りられません」
真は純の申し出を断った。
「はぁ? 貸すんじゃ無い、やるんだよ。真さんの今回の働きから言えば、当然の報酬だ」
純が真に告げる。
真は純の言葉に、呆気に取られたが、首を左右に振り
「いえ、やはり駄目です…。それだと、宗派の技を金儲けに使った事に成ります…」
真は頑なに、純の申し出を断った。
すると、美紀がおずおずと手を上げ
「あ、あの〜…。純様が山をお買いに成って、真様にお貸しに成れば、丸く収まる気がするんですが…」
美紀が解決案をアッサリ提示する。
「お〜」
その場に居た全員が、感心の声を上げ、美紀の案が採用された。
真の宗派はこの市に引っ越しする事に決まり、真の破門問題は、不問に付された。
■つづき
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