夢魔
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■ 第33章 終幕17

 真が本山での話し合いを篤達に告げると、篤達は自分の事のように喜んだ。
 そして、その話しを弥生が耳にする。
「真様…。は、破門って何の事です…?」
 弥生が驚きながら、真に問い掛けると
「いえ、もう終わった事です。何でも有りません」
 真はニコニコと微笑み、話しを誤魔化した。

 だが、そんな真を制して
「真さんは、邪気を身体に取り込んでしまい、[禊ぎ]の修行をするか、[破門]を選ば無きゃ成らなかったんです。 それで、真さんはアッサリ[破門]を選ばれて仕舞われたんです!」
 篤が真の立場を弥生に教えた。
「えっ…。邪気…。破門…」
 弥生は、呆然として、篤の言葉をオウム返しで呟く。
「篤…止めなさい。もう、良いんです…」
 真は篤を止める。

 だが、篤の言葉は止まらなかった。
「復讐心や、人を傷つけようとする気持ちで…」
 篤が告げようとすると
「篤、止めなさい!」
 真が鋭い語気で、篤を止める。
 篤は真の語気に押され、唇を噛み締め黙り込む。

 弥生は、篤の言葉を聞いて、愕然として分院での事を思い出す。
(わ、私だ…。私のせいで、真様…そんな事に成って仕舞われた何て…)
 弥生は真を見詰め、どうして良いか解らなくなる。
 真の夢を自分の軽薄な行動で、奪う事に成り掛けて居た事を今知ったのだ。
 弥生の身体が、小刻みに震え、涙が溢れ出す。
「わ、私…。何て嫌な女何でしょう…。大好きな方を窮地に落とし…、それに全く気付かない何て…。大好きな方の夢を奪う行為をして、平然としてた何て…。何て嫌な女なの…」
 弥生はその場に崩れ、さめざめと泣く。

 真はスッと弥生の横に座り、優しく撫でながら
「良いんです…。弥生が遭った目に比べれば、私の破門など、小さな事です。あんな目に会えば、懲らしめてやりたく成るのは、当然ですよ…」
 弥生を慰める。
 弥生はその真の優しさに震えながら顔を上げ
「私、私…。真様のお側に居る資格なんか有りません…。私を放逐して下さい! 私は、もう一生この身体を使いません…」
 弥生は泣きながら真に懇願する。

 真はそんな弥生の身体をキュッと抱きしめ
「悲しい事を言わないで下さい。それでは、私も死んでしまいます。私は弥生が居ないと、狂い死にしてしまいます。弥生と美由紀の居ない世界何て、私には何の価値も有りません…」
 真は隅に控えて居た、美由紀に視線を向け、コクリと頷く。
 美由紀は弥生が泣き崩れるさまを、心配な顔で見詰めて居たが、真が頷いて許可を出したため、一目散に弥生に抱き付く。
「弥生様、出て行く何て言わないで下さい。私、弥生様のお側を離れる何て、悲し過ぎます。真様もお許し下さって居られます。どうか、お考え直し下さいませ!」
 必死の顔で懇願する。

 弥生は泣きながら、美由紀を見、真に視線を向け
「真様…。どうか、弥生に罰をお与え下さい…。弥生が二度と愚かな事をしないように、厳しい罰をお与え下さいませ」
 罰を切望する。
 真は弥生にニッコリと微笑み、静かな声で
「篤…。満足ですか? これが、弥生です。こんな私をここ迄慕い、敬って下さる女性をあなたは、まだ、責めたいのですか? 私が、弥生に何も告げなかった理由。これで、解ったでしょ…」
 篤に告げる。

 篤はうなだれ
「はい…。申し訳有りません。軽率でした」
 真に詫びた。
 真はそのまま、弥生を抱きしめると
「弥生…。あなたに対する罰は、[もう、二度と私の側を離れると、言わない]です。守れますか?」
 優しい声で告げる。
「し、真様…。誓えます…ですが…それは、罰では…」
 弥生が反論しようとすると
「いいえ、罰です。私がそう決めたから、これはれっきとした罰です。それとも、弥生は私の決めた事に、不満が有るんですか?」
 悪戯っぽく、弥生に問い掛ける。
 弥生は真の言葉に、ブンブンと顔を左右に振り、真を見詰め
「はい…はい…。守ります…。従います…。服従します…」
 真に答える。

 真がニッコリ微笑んで頷くと、弥生は真の首に腕を回して抱き付き
「真様…。好き…、大好きです…。弥生、何でもします。どんな命令にも死んでも従います…。いつまでも弥生をお側に置いて下さいませ…」
 泣きながら、真に誓った。
 その、弥生の後ろから、美由紀がそっと弥生に抱き付き、ホッと安堵を浮かべ、頬摺りする。
 この3人の関係を見て、篤は自分の行動を反省し、同時に羨ましく感じる。
 それは、他の2人も同じだった。

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