夢魔
MIN:作

■ 第33章 終幕18

 学校が平静を取り戻すと各部活動が再開される。
 沙希も久しぶりに、テニスコートに足を運ぶと、他の部員は既に集まって居た。
 他の部員が沙希を見る目が以前とは、全く違って居た。
 それは、庵のパートナーだと言う事が広まっていた事より、沙希の雰囲気が変わっていた事が大きな原因だった。
 沙希は庵とのプレーでマゾヒズムを満たし、メイド達とのプレーでサディズムを開花させて居た。
 そのため沙希の持つ雰囲気は、キサラのそれに酷似し、しなやかな身体から、[女豹]のような匂いを漂わせて居る。

 1年生の女生徒達の間では、[調教されたいお姉様]の堂々1位を獲得し、絶大な人気を得て居た。
 沙希が部長の3年生に挨拶すると
「あっ、お、おはようございます…」
 部長は緊張した声で、沙希に挨拶を返した。
 準備運動を終え、コートに沙希が入ると、その相手を部員達が争い合う。
 沙希が溜め息を吐いて、実力が尤も高い、副部長に依頼すると、副部長は喜々としてコートに入るが、沙希とストロークラリーが始まると、直ぐに引きつってしまう。
 沙希は7割程の力で軽く流すが、副部長は追い付くだけで、全力だった。

 僅か数分のラリーで、副部長は汗だくに成る。
 直ぐに次の部員と相手を代わるが、実力が落ちて行く相手に、全く練習に成らなかった。
 汗すらかかない沙希に対して、全員がグロッキーすると
「ハハハッ、ヤッパリこんな事に成ってたか」
 金網の向こうから、庵が笑い掛ける。
 庵の姿を見た沙希の顔が、嬉しそうに微笑み、小躍りした。
「イヤん、庵様〜格好いい」
 庵はテニスウエアに身を固め、ラケットを片手に金網を潜る。

 庵の腕には、まだ特殊セラミックのギプスが嵌り太陽光を反射して白く光っていた。
 庵がテニスコート内に入ると、部員達が一斉に緊張する。
 大型のライオンのような雰囲気に部員達は、身動き出来無い。
「邪魔する」
 庵が一言部長に告げると、部長はカクカクと首を縦に振り承諾した。
 庵はコートに入ると
「全力だ」
 沙希に告げる。
「はい、庵様」
 沙希は表情を引き締め前傾に成ると、ボールを地面につき、タイミングを整える。

 スッと上体を起こして、左手でトスを上げる。
 その迫力と美しさに、部員達が見とれて居ると、沙希がサーブを放つ。
 部員達がそれを目で追おうと、首を素早く巡らすが、その顔が庵の姿を捉える前に、沙希に向かって黄色い線が走る。
 それがボールの軌跡だと気付き、慌てて逆を向くが、既に沙希もボールを打ち返した後だった。
 部員達がジリジリと下がり、金網にへばり付いて初めて、2人のラリーが確認出来た。
 部員達が見守る中、2人のハイレベルなラリーが10分程続き、庵が浮き玉を沙希のコートに叩き込んでラリーを終わらせる。

 ビッショリと汗をかいた沙希に対して、庵は滲む程しか汗をかいて居ない。
「もう、庵様〜あまり無理を為さらないで下さい。腕の骨はまだくっ付いて無いんですから」
 沙希が庵を心配して言うと
「馬鹿この程度が無理に入るか…。夜の相手の方がよっぽど無理だ」
 庵は沙希の頭をガシガシと撫で、獰猛な笑顔を浮かべる。
 この微笑みを見て、テニス部員全員が子宮を収縮させ、熱い体液を流す。

 ベンチに座り休憩する庵に、部長が近付き
「あ、汗をお拭きしても宜しいでしょうか…」
 おずおずと申し出ると
「ああ、タオルを忘れたな…。好きにしろ」
 部長に頷く。

 部長は直ぐにタオルで、庵の額や頬、首筋などにタオルを丁寧に走らせる。
 それを見た副部長が急いで、庵に近付きしゃがみ込むと
「マ、マッサージしても宜しいでしょうか…」
 上目使いで、懇願して来る。
 庵が足を投げ出し
「好きにしろ」
 副部長に言うと、わらわらと他の2・3年生の部員達も庵に群がった。

 一方沙希には1年生部員達が群がり甲斐甲斐しく世話をして居る。
 庵は暫く好きなようにさせて居たが、部長に向かって
「良いのか、あれ…」
 無人のテニスコートを指差した。
 庵は練習に成って居ない事を部長に指摘すると、部長は慌てて
「あなた達早くコートに入りなさい」
 部長は庵の肩にタオルを掛け庵の肩を揉みながら指示を飛ばす。
 指示された部員達はブツブツと文句を言いながら、3面有るテニスコートに散って行った。

 暫くすると庵がスッと立ち上がり、テニスコートに近付くと、ラリーをして居る2年生部員に
「そこは、こう身体を使え。右手はこうで左足はこうだ」
 手取り足取り教える。
 2年生部員は、顔を赤らめ庵の手の感触を夢中で感じる。
 庵は次々にコーチングして行くと、庵が教えた部員達は、確かに動きが良く成った。
 コートに入らなかった部員達が、庵にコーチを受けている下級生に歯噛みをしている横で、部長は1人庵の汗を拭ったタオルに顔を埋め、大きく鼻で息を吸い、庵の匂いを嗅いでいる。
 この後部長は、そのタオルを大切そうにナイロン袋に入れ、常に枕元に置き、眠る前に匂いを嗅ぎながらオナニーをするのが日課に成った。

 庵のコーチングは理に適った物で有り、庵自体の指導力も有って、庵にコーチされた部員達は、メキメキと実力を上げた。
 県予選で個人と団体供に、あっさりとインターハイの出場を決める。
 その年のインターハイで1〜4位迄を学校の生徒が独占し、新聞を賑わせた。
 優勝したのは、勿論沙希で有る事は言う迄も無い。
 一躍学校は、女子テニスの有名校に成った。
 沙希はその容貌も有って、プロテニス協会から、熱烈なラブコールを受け始める。

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