夢魔
MIN:作
■ 第33章 終幕22
キサラは芝居がかった、仕草で真を見詰めると
「酷い…私が何をするって言うの」
キサラは、シナを作って泣き崩れた振りをする。
真は溜め息を吐きながら
「そんな、真似をしてもあなたの事は、解ってますよ」
真は、冷たい言葉をキサラに掛ける。
キサラは、尚も真に何か言おうとしたが、稔がキサラを探しに来て
「キサラさん、ここにいらしたんですか…」
稔は困ったような顔でキサラに告げる。
「あ〜ん、ご主人様〜。申し訳御座いません。わたくしめをお探しでしたか…」
キサラは真から離れ、床に身を投げ出すと、平伏して謝罪する。
「いえ、約束の時間迄はまだ1時間有ります。ここに、来られて居ると聞いて、顔を出したんですが…。その、ご主人様って止めませんか?」
稔は困惑してキサラに告げると
「いえ、この世界上下関係は絶対です。オーナーで有られる、ご主人様に失礼を働く訳にはいきません」
キサラは稔にキッパリと告げる。
稔は苦笑いすると
「お金を出しているのは、純です…。僕じゃ有りませんよ…」
キサラに告げる。
「いいえ。稔様、純様、庵様は1つのチームです。私はそのチームに服従を示して居るんです」
キサラは平伏しながら、稔に言い切った。
「まぁ、純が認めたのなら、仕方無いですね。こうして調教の相談にも、乗って貰うんですし」
稔は溜め息を吐くと、苦笑いを微笑みに変え告げる。
「そんなお言葉勿体無いですわ。私は僕です、どのようにでも、お使い下さい」
キサラは身悶えしながら、稔に言った。
2人の会話を聞いて
「えっ、これはどう言う事なんです?」
真が問い掛けると
「いえ、学校に男子生徒が増えるんですが、調教教師達だけだと力不足でして…。キサラさんの所の調教師に臨時講師を頼んだんです」
稔がキサラを読んだ理由を真に告げる。
「そう言う事、また真ちゃんとお仕事一緒に出来るのよ。嬉しいわ〜」
キサラが稔の後ろから、真に声を掛ける。
「それで、真さんにお願い何ですが、悟さんか整さんを少し、出向させる事は可能ですか? キサラさんのお店の方で、指導をお願いしたいんです」
稔が真に頼み込む。
真は稔の依頼に困った顔をすると
「都内に出向ですか…。少し難しいですね。実は、私達がここに居る事自体、特例中の特例なんです。私が下山する時には、有る種の修行をして、許可をいただいたんですが、あの二人はそれをして居ません。お山の方でも一時期[早く帰せ]とせっつかれた状態だったんですが、それを[治療の為]と言う事で、預かって居るのに…。都内は無理が有ります…」
真も自分達の苦しい事情を話す。
稔も真の事情を知らなかったため、キサラの頼みを受けたのだが、事情を聞いて、考え込んだ。
そこに話しを立ち聞きして居た、悟と整が乱入して
「真さん、大事な事が抜けてますよ」
「そうだ、そうだ。真さんがとっとと[宗主]を継げば良いんだ」
悟と整は、真に食って掛かる。
「お前達! 立ち聞きしたんですか?」
真が驚いて、二人を問い詰める。
だが、二人は一向に気にする事無く
「真さんが[宗主]を継いで、長老達を抑えれば良いんですよ。元々その為の[伴侶探し]なんだし、修行に入れば[邪気]も消せる。長老達も安心するし、良い事尽くめじゃ無いですか!」
「そうだ、そうだ。今は[宗主]も空位だし、弥生さんなら誰も文句言わないのに、真さんいっつも返事を先伸ばしして…変です!」
悟と整が真に指摘する。
真は二人に詰め寄られて、脂汗をタラリと流し、言葉を探す。
何度か口を開け閉めして、言葉を出そうとした真を整の言葉が遮る。
「真さん、弥生さんに修行させたく無いんでしょ…。[伴侶]の修行も辛くて苦しいから…、させたく無いんでしょ」
整の言葉を聞いた真は、解り易い程動揺し、誤魔化そうとする。
だが、その言葉も邪魔をされ、外には出なかった。
「真さん、もしそれが本当なら、真さんは弥生を馬鹿にしています。弥生は辛く苦しい修行に泣き言を言う女じゃ有りません」
稔の言葉は、真の胸を深く抉る。
真はガックリとうなだれ
「解ってます…、解ってますよ…」
ボソボソと呟いた後、スッと顔を上げ
「弥生に話して見ます」
決意を秘めた顔で、言い切った。
真は直ぐに、弥生に事情を話して供に修行してくれと頼んだ。
弥生は涙を流し、即答で承諾する。
美由紀も側女としての、修行をする事を申し出て、3人は本山に向かった。
長老達は真の申し出を諸手を上げて歓迎し、修行を承諾した。
だが、本山の移転の為、直ぐに修行には入らず、本堂が移設されてからと成った。
それまで1年間は、弥生と美由紀の基礎修行に当てられ、真達は月の半分本山に泊まり込む。
真の留守中は、悟と整が真の変わりに用務員を兼任しながら、メイド達の治療に充たり、玉置が戻り次第、治療に専念する事に成った。
この後、真が[宗主]に成ると市内に有る弥生の家は、[立川流治療院]と成り、厳重な秘密管理の基、会員制の治療院に成り、宗派の若手修行者の修行の場にも成った。
修行者はこの治療院で働く為、それこそ血の滲むような修行をし、試練に望む。
治療院は、最高の伴侶を得る可能性に、満ちた場所だったからだ。
そして、整は治療中に知り合った、明日香に強く惹かれ、伴侶となる事を申し出る。
整は明日香を伴侶にすると、市内に残り治療院を取り仕切る事に成った。
悟はSMの世界に強く惹かれ、キサラに教えを請い一流のサディストに成ると、高齢の玉置を手伝い学校の用務員と成る。
玉置は素直で人当たりの良い悟を気に入り、養子に迎え入れ学校を支えさせた。
悟は生徒達の気付かない才能を目覚めさせ、様々な道で成功させ始める。
悟に教わった生徒達は、悟を[心の主人]として常に尊敬し、慕った。
それはサディスト、マゾヒスト、更に男女関係なくで有る。
結果、学校を卒業し悟の眼鏡に適った、数名の者が毎年、真の元に[入信]するように成った。
悟は立川流の底辺を拡げ、整は立川流の後進を育て上げる。
そして篤が、金銭的バックアップをする事で、[宗主・真]の立川流は発展を遂げた。
■つづき
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