夢魔
MIN:作

■ 第33章 終幕23

 学校の受け入れ態勢が整うと、大量の編入生が学校を埋め尽くす。
 女生徒達は、彼らの姿を見て皆浮き足立ち、きゃあきゃあとはしゃいでいた。
 だが、初めの2週間は全ての編入生の導入期間とされ、今迄学校に通っていた者とは隔離され違うカリキュラムを受ける。
 導入期間の中には、PC教室での[覚醒]とサディストとしての[教育]が行われた。
 編入生はこの期間で、[粗暴者]や[加虐者]から、[サディスト]に生まれ変わる。

 そして、この2週間の間に、学校内では2つの問題が持ち上がった。
 1つは1・2年生の男子生徒による、[奴隷集め]で有る。
 1・2年生男子は、編入生達を一目見て認識した。
 今までのハーレム状態は終わりを告げたと、素早く理解する。
 それは心からの服従を受けていない、以前の権力に頼って支配していた生徒達にとって、致命的な事だった。
 必然確固たる服従を受けていない、サディスト達は大量のライバル出現の為、かなり焦りだす。
 そこで、自分達が目を付けていた、マゾ達を集め出したのだ。
 それも、かなり強引なやり方で行った為、苦情が出始める。

 この件の収拾に当たったのは、新生徒会の書記兼風紀委員長である、悦子で有った。
 悦子の発する圧力は、稔に治療を受け別の物に変わっていた。
 以前の暴虐性を完全に理性がコントロールし、雰囲気は深さと濃さを醸し出している。
 その上で、マゾヒスト達には慈愛の色まで、見せるように成ったのだ。
 それは、[女性版・稔]と言った雰囲気を纏っている。
 これは、悦子が稔に治療されてから、[人形]にした女生徒達の治療をする稔を手伝い、身に付けた物だった。

 稔の治療で自意識を取り戻し、快方に向かう[人形]達を見て、自分の愚かしい行動を悔やみ、欲望に対する歯止めの重要性を学び、自分の行った事を認め心から謝罪した。
 自我を取り戻した少女達に、悦子は謝罪したが許しは請わなかった。
 それは、生涯を掛け自分が彼女達に償う物で有ると、自分自身で決めていたからだ。
 だが、[人形]にされた少女達も、筋金入りのマゾヒストだった。
 大量生産された3人は、自我を取り戻し、悦子の調教を稔の治療で客観的に見て、自我が崩壊したのは、自分の弱さも有ると認め、悦子を責める事は無かった。
 中には、自分の耐性の無さを悦子に謝罪する者すら居た。

 だが、残りの2人は未だ完全に回復していない。
 久美は、自我が戻っては居ないし、ローザは自我は戻った物の、自己葛藤を克服出来ないで居る。
 久美の自我は記憶野の片隅に追いやられ、埋もれ切ってその断片すら見付からないし、ローザは元からのプライドの強さで、自己葛藤のラインが強固に成り過ぎて断てないで居る。
 2人供に、現状を打開する、何かのキーワードが必要な状態だった。
 今の2人の状態は、稔の治療により[悪くも成らないが、良くも成らない]と言う物だった。
 悦子はその2人を自分の手元に置き、甲斐甲斐しく世話をし、自分の罪を贖っている。

 そんな悦子が、今回の[奴隷集め]を許す筈も無かった。
 悦子は少しでも、悪評の有る男子生徒を取り締まり、関係者一同を集め取り調べを行い、否がある生徒には、容赦のない罰を与える。
 悦子の罰は思い上がったサディストに、冷水を浴びせるには十分な効果を持っていた。
 悦子の存在は、秩序を破ろうとする者には、恐怖の対象になる。

 だが、悦子はそんな男子生徒達に、必ずこう言った。
「良かったわね、取り締まったのが私で…。柳井様や工藤様や垣内様だったら、貴男達地獄に落ちてたわよ…。あの方達は、私なんかゴミに思える程、苛烈な方達よ…これからは、十分身の程をわきまえなさい」
 悦子の言葉で、ボロボロに成った違反者達は、何もしていない稔達を畏怖し服従する。
 悦子は稔達のカリスマ性を作りながら、編入生合流前に[奴隷集め]を沈静させた。
 そして、今度はサディスト達の間で、悦子は[恐怖の悦子様]と呼ばれるようになった。

 次に起きた問題は、マゾヒスト達のクレームだった。
 彼女達曰く[折角鍛えても、判断基準が有りません]、[嗜好の違う方とプレイするのは、怖いです]、と言う物だった。
 このクレームに試験制度が復活し、上級教師か特別講師3人以上の認定で、[表示]が許可されるように成る。
 学生達は自分のクラスと名前を左胸に、嗜好を右胸に、自分の技術を制服の左右の襟に[表示]する。
 それは勿論、入れ墨のような物では無い。
 それはネームプレートと各種に対応した[バッジ]で表された。

 右胸のバッジは十字に四角が嵌っているバッジで、十字にはそれぞれ目盛りが5個付いており、上は服従、下は被虐、右は羞恥、左は快楽と決められ、試験に合格する事で認定され、その上限を変化させる。
 ゲームなどで良く見られる、パラメーターのような物だった。
 左胸のバッジは色分けした数字で有る。
 1から10迄の数字が、赤、青、黄、緑、橙、紫、ピンク、白と色分けされていた。

 それぞれの色は、マゾヒストとサディストで対応する意味が違い、マゾヒストは被虐、服従、羞恥、奉仕、尿道、アナル、オ○ンコ、口に対応し、赤から緑は耐性を橙から白は開発度を表している。
 対する、サディストは被虐、服従、羞恥、奉仕、縄、打擲、性技、知識に対応し、赤から緑は支配力を橙から白は技術力を表している。
 それらが10段階の試験で認定され、購買部でバッジを購入出来るのだ。

 職員室の入り口横に、試験の申込用紙を入れる箱が置かれ、試験日は審判室のロッカーに入れられた、封書で示される。
 認定官はそれに相応しい者が宛がわれ、認定試験が行われるのだった。
 2週間後には、一部の生徒を除いて、ほぼ全員がバッジを付けて、自分の嗜好や能力をアピールした。
 バッジを付けていない生徒は、首輪を嵌めている。
 彼女達は、この時点で[主人持ち]の奴隷達だ。
 バッジを付けた生徒は、付けていない生徒を羨ましげに見詰める。
[私も早くバッジを外したい]その目は、そう物語っていた。

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