夢魔
MIN:作

■ 第33章 終幕24

 そんな中、導入期間が終わったサディスト達やマゾヒスト達が、合流するため、学校のシステムが変えられた。
 基本的に生徒達は、登校してから下校時間まで、学校内に居れば何処に居ても、何をしても構わなかった。
 各教室では、教師達がSMに関する技術を講義し、その授業は何年生が学ぼうと構わない。
 教師達の講義は主に、学生側からのリクエストに対して、答えると言う形式の物で、定員制に成っていた。
 日曜日の朝に、生徒全員に翌週の時間割がメールで配信され、生徒達はどの教師の授業がいつ有るかを知る。
 そして、生徒達はその時間に、授業が行われる教室に向かうのだ。
 人気の有る教師の授業は、直ぐに教室が埋まるため、皆前の授業が終わる前に、廊下に並ぶ。

 だが、そんな自由な中でも、厳然としたルールが有った。
 それは、男子生徒は[体力の維持]、女生徒は[スタイルの維持]で有り、両方に[学力の維持]で有る。
 勉強の方は、それぞれ割り当てられた時間に、PC教室で装置を使って各科目の知識を頭に叩き込み、学力を上げる。
 生徒達は週末必ず、体力チェックとスタイルチェックが有り、それに不合格するとトレーニングが命じられた。
 更に半月に一度の学力試験で不合格すると、PC教室での授業時間が増える。
 これは、全てに於いて優先される物で、誰1人免除される者は居ない。
 生徒達は貴重な自由時間を無くさぬ為にも、体力、スタイル、学力の維持に余念が無かった。

 システムやルールが浸透して行くと、女生徒達は自分好みのサディストに擦り寄って行く。
 男女比はこの編入により3:7を少し切る程度に変わり、選べるパートナーが増え、それ程の混乱も起きなかった。
 美少女に擦り寄られ、身体を委ねられると、編入生達は、この学校が自分達にとってパラダイスで有る事を初めて認識し感じる。
 そして、ここを追われるような事は、絶対にしないと規則を守る事を、心に誓いパートナーを探し始めた。

 自分達の性癖を隠す事の無く成った生徒達は、学校側に新しい部活を申し出る。
 それは[緊縛研究会]で有り、[心理研究部]で有り、[露出倶楽部]で有り、[人体改造部]で有った。
 学校側はこの部活動を認め、各部に相応しい指導者を当てた。
 中でも[人体改造部]は、生徒の自主性を尊重し過ぎてはかなりの危険を伴うため、黒沢が顧問を務める。

 そして、この部活に入る為には、厳しい条件が必要とされた。
 それは、人体改造を行った者に対して、生涯面倒を見ると言う誓約で有り、相手の同意書で有り、経済的能力的背景で有る。
 こう言った事から、この部に籍を置けるのは、サディストとしての能力が高く、尚かつ人の生涯を支える経済力を持った、ごく一部の者だけと成った。
 因みにこの部の初代部長は稔で、副部長は庵だった。
 稔は[心理研究部]の部長も兼任し、純は[緊縛研究会]と[露出倶楽部]の部長に納まる。

◆◆◆◆◆

 学校全体にシステムが馴染み、生徒達が落ち着きだした頃、旧竹内グループで働いて居た者達全員に、有るアンケートが回された。
 それは、社長命令で必ず実施するよう、厳命された物だった。
 旧竹内グループの者達は、厚遇で再雇用してくれたジェネシス社に感謝していたため、皆真剣にそのアンケートに答えた。
 そのアンケートは、言う迄も無い稔の考案した[SM潜在性判定テスト]で有る。

 集計の結果、稔は大いに驚いた。
 旧竹内グループで働いて居た者は、殆どがSかMなので有る。
 稔はこの結果に驚いていると
「お前、今更だぜ…。竹内グループの者はよ、竹内がして来た事、殆ど知ってんだぜ…。それを黙認するって事は、SMの存在を認識してるんだ。この結果は当たり前だろ」
 純が稔に呆れながら告げた。
 稔は純の言葉に納得して、データーを整理し始める。

 そして、稔達はそのアンケートを徐々に市内全域に拡げて行き、市内の[SM潜在性]を調べ上げた。
 その結果この市内の[SM潜在性]は70%を超えて居た。
 これも竹内の悪行を風の噂で聞いていた、為であろうと分析する。
 そして、この結果を元にジェネシスグループが動き始めた。

 市内の個人経営を行っている店に、ジェネシスグループ提携店の契約話を持ちかける。
 個人経営の経営者は、体の良い乗っ取りかと思ったが、話を聞いて思わず飛びついた。
 それは破格の提携話だったからだ。
 商品の買い付け、輸送迄をジェネシスグループが行い、今までの8割の金額で納入する変わりに、ジェネシスグループの社員には[社員価格]として店頭価格の半額で販売し、尚かつ割引した分も補填する、と言う条件である。
 これに乗らないのは、経営者として無能である。
 提携店の契約話を持ち掛けられた店は、皆ジェネシス社と契約した。

 提携店はジェネシスグループの社員や家族が押し寄せ、買い物を半額で行い、他の市民は定価で買わされる。
 他の市民はこれに、かなりの不満を感じ始め、ジェネシスグループの家族を羨む。
 提携店から漏れた経営者も、市内の大部分を占める、ジェネシスグループの客を失い大打撃を受け、次々に店を畳み始めた。
 そうすると、他の市民は再び提携店で買い物をするしか無く、その格差に苛立ちを募らせる。

 苛立ちが他の市民に蔓延した頃、市内のジェネシスグループ傘下以外の会社から、社員の引き抜きが始まった。
 それ程厚遇では無いが、同職種の同ポジションを約束されると、皆その話しに食いついてくる。
 当然である。
 給料が同じなら、ジェネシスグループ傘下に入れば、この市内なら実質給料は1.5倍に成った。
 話を持ち掛けられた者は、全てジェネシスグループに転職する。

 それにより、様々なポジションの社員が抜けた、ジェネシスグループ以外の会社は、業績が落ちて行く。
 それとほぼ時を同じくして、この市内の地価が上がり始める。
 あっと言う間に、地価は1.5倍に成り、先ず借地の会社が撤退して行く。
 そして自ら土地を持つ会社自体、他の市に移転して行った。
 こうして、僅か数ヶ月でこの市内の人口は、28%が減少する。
 ジェネシスグループは、移転して空いた土地や、売りに出た家を全て買い占めた。
 この市内の空き地は極一部を除いて、全てジェネシスグループの物に成る。
 純はその報告を聞き、ニヤリと笑った。

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