夢魔
MIN:作

■ 第33章 終幕27

 純達が竹内グループを手に入れてから、2年の月日が経った。
 稔達は学校を卒業し、それぞれの道に進んで居る。
 稔は医師免許を修得するため、国内の大学に進んだ。
 純はジェネシスグループの社長職に就任し、グループを切り盛りする。
 庵は稔と同じ医師を目指すべく、稔の同級生として大学に通う。

 稔と庵は、県庁所在地が有る隣の市の国立大学に通ったが、大学側は大いに困ってしまった。
 2人とも既に、アメリカの有名大学を卒業し、博士号まで持っているので有る。
 国立大学とは言え、中央の大学から比べると、ランクが下がって居るのは、否めない。
 そんな学校に、2人の天才が通い始めたのだ。
 大学側は、それぞれ博士号を持つ、この異端の2人の扱いに困りながらも、教授達は虎視眈々と2人を自分の懐に取り込もうと躍起に成る。
 庵が医学部に入った事を知った、工学部の教授達は目の色を変え、医学部に抗議に行った。

 そして、この2人の存在を大学のキャンバスに居る、女性達が見逃す筈も無かったが、誰1人近付け無かった。
 それは、この大学に稔達の1年前入学して来た、美しき才媛の美香が常に寄り添い、その周りを稔達と同じ学校を卒業したグループが、覆って居るからだった。
 この学校の卒業生は、この大学内でも注目の的だった。
 成績は常にトップを争い合い、挙措や物腰の優雅さ、意志の硬さや胆力、知識の豊富さや弁舌の巧みさ、何を取っても一流なのだ。
 それに加え、女性の容姿の美しさや、色気などは他の学生と比べると、雲泥の差が有った。
 尤も、一番近付け無かった理由の最たる原因は、稔と庵の前に出ると普通の生徒達は、男女ともに一言も喋れなく成ってしまうからで有る。

 更に、稔と庵はこの時それぞれ、美紀、沙希と結婚し、籍を入れていたのだ。
 稔達は3人とも高校を卒業し18歳に成ると同時に結婚した。
 ひっそりと身内だけで、合同の式を挙げるつもりだったが、この結婚式は飛んでも無い事に成ってしまった。
 そもそも、稔達が卒業する時、学校の生徒や女教師達、果ては卒業生まで集まり、号泣する騒ぎに成ったのに、この3人が同時に結婚式をすると言う情報が流れれば、身内だけで出来る筈も無かった。
 正式招待者の教頭(この時校長)、黒沢(この時教頭)、京本(この時主任)、大貫(この時黒沢性)の4人が情報をリークし、サプライズパーティーを行う事になった。
 このサプライズパーティーは、教師、在校生、卒業生、マンション奴隷、メイド達が集まり1,000人近い人間が参加し稔達を祝福する。

◆◆◆◆◆

 純は結婚と同時に家を建てた。
 マンションに住んでも、本来は事足りるのだが、3人のメイドが必要な大きさでは無く、仕方なく校外に建てたのだった。
 3人のメイドとは、言わずと知れた[特攻娘]だ。
 美由紀、康子、琴音の3人は純の家に匿われてから、ズッと純に忠誠を示し、仕え続けた。
 勿論絵美もそれを了承し、3人を発奮材料にして、自分を磨き続ける。
 3人は常に自分達の2・3歩前に居る絵美を追い落とそうと、様々な努力を積み重ねた。

 その結果、絵美は美香や美紀に劣らぬ奴隷と成り、[特攻娘]達も一流の奴隷に成ってしまう。
 純の開くパーティー等で、3人が働き始めると、全ての男性の目が、3人に集まり取り合いになる程だった。
 純は良い伴侶を選ばせるつもりで披露したが、3人を誰かに預けてしまうと、選ばれなかった男達が、確実に敵に回る事になる。
 純の庇護から解放し、野に放てば、彼女達の身に危険が及ぶため、純は結果的に3人を手放せ無く成ってしまう。

 第一、絵美の大親友で、純が留守の時には、みんな平等な位置に戻り、悩みを打ち明け、笑い合い、たまに喧嘩もして、助け合い、競い合う間柄なのだ。
 純は[もう良い、お前達が本当に添い遂げたいと思う男が出来るまで、俺が面倒見てやる]と、実質の主人宣言をした。
 純以上の男が早々居る訳も無く、彼女達が純の元を離れる日は無いのかも知れない。

◆◆◆◆◆

 そしてスーパーマン庵とスポーツ少女沙希は、新たな能力を開花させた。
 それは、ゴルフだった。
 庵と沙希は溝口に誘われ、高校3年の時ゴルフコースデビューをする。
 溝口はシングルプレーヤーで、ゴルフにはかなりの自信が有った。
 そこで、何か勝てる物を探して稔達に挑戦したのだ。
 稔は忙しさを理由に、純は[興味無い]の一言で断ったが、庵だけが[普段世話に成ってるのに…]と誘いに乗る。

 その結果、溝口はシングルプレーヤーのプライドをズタズタにされる。
 庵は正確に自分の身体をコントロール出来る上、ゴリラ並みの筋力で有る。
 ドライバーを持てば、キャリーで400Y飛び、アプローチも力加減で自由自在。
 パッティングに至っては、空間把握能力でどんな複雑なラインも読み取った。
 沙希も柔軟な身体と正確な捻り運動を持ち味としており、庵の言う通りに打ってキャリーで300Y飛ばした。
 結果は火を見るより明らかだった。

 庵はコースレコードを大幅に塗り替え、沙希もレディースのレコードを塗り替える。
 溝口は2人に当てられ、散々なスコアに成りガックリと肩を落とす。
 キャディがこの規格外の2人に驚き支配人を呼びに行き、支配人が2人のプレーを見てプレー終了と同時にグ リーンに身を投げ出して[頼むから、研修生として登録してくれ]と懇願する。
 意味の解らない2人は、簡単に了承しコースの使用権を貰う。
 2人は気の向いた時にコースに出て、何度か支配人の勧めるまま試合にも出た。
 すると2人はいつの間にか、プロゴルファーに成って居た。
 だが、その時沙希はプロテニス界のアイドルプレーヤーに成っており、庵に至っては稔と同じ大学の学部に居た。

◆◆◆◆◆

 大学卒業後、稔と庵は医師免許を取ると、大学側の指示を無視して金田の病院で医者に成り、稔は梓の変わりに医院長職を引き継ぎ、庵は[職業形成外科医・副業プロゴルファー]と出鱈目な肩書きを持つように成る。
 沙希は沙希で、プロテニスプレーヤーとプロゴルファーの二足の草鞋を履き、どちらでも実績を上げた。
 庵は、ゴルフの試合に出ると、コースの難度が上がるため[Dr.ハンディメーカー]と呼ばれ、沙希はゴルフとテニスのグランドスラムを取り続けた事から[クイーン・オブ・クイーン]と呼ばれるように成った。
 2人の存在が純の学校を超有名にした事は、言うまでも無い。

 この弊害として、学校をマスコミが取り囲み、取材を申し込むが、当然中を見せる事など出来る訳もなく、学校内を取材出来ないマスコミは登下校の学生を狙い始める。
 この動きのために、学校は全寮制へと移行した。
 そして高校のあらゆる大会や競技会、発表会や展覧会に参加しては、優勝を掠って行く学校は、ドンドン注目度を上げ続け、きら星のような才能を輩出し続ける。
 徹底した秘匿性と、天才、鬼才、英才を作り続ける学校は、神秘のベールに包まれた、聖域のように成った。
 ジェネシスグループの力と徹底的なセキュリティーは、誰1人マスコミを寄せ付けなく成り、名前だけが人の知る所と成り、人々の憧れの的になる。

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