夢魔
MIN:作

■ 第33章 終幕28

 この頃稔に病医院長の座を明け渡した梓は、稔の指示により市長選に出馬する。
 圧倒的多数の支持を受け、梓が市の政権を握ると、直ぐに市議会を解散させ、市議会選を行った。
 この選挙には多数のジェネシスグループの会社OBや、純の息の掛かった有力者が当選し、現職市議達が次々に落選する。
 こうして、市の運営権も純が握ると、純は予てからの計画を実行した。
 それは、土地整備計画である。
 この土地整備計画が始まる時点で、市内の[SM潜在性]住人は95%に達していた。
 この計画で残りの5%がこの市内から、好条件でよその市に移る事になる。

◆◆◆◆◆

 あの解放から5年以上が過ぎても、竹内家のメイドだった者達は、沙希の支配を未だに望み、庵に服従を誓っていた。
 破壊された身体は、外科的内科的治療により、全く目立たない物に戻っている。
 性的虐待を受けた彼女達だったが、沙希に出会いその性癖を目覚めさせ、庵に出会い深くのめり込んで行った。
 手に職を持たず、血縁者も居ない彼女達は、身を寄せ合い生活する事を希望し、それに純が応えてやる。
 全寮制に成ったため、学校の敷地内に新たに出来た、寮の管理を始め、学校の運営業務を引き続きさせた。

 そんなメイド達のリーダーは、庵に気に入られた響子が成り、他のメイド達を引っ張って行く。
 メイド達はシフト制の勤務を取り、完全休業の日と、昼間学校の事務と食堂、購買部で働く日、寮母として学生の面倒を見る日、それと特別勤務の日に分かれ働いた。
 特別勤務の日とは、世界を飛び廻る所有者の変わりに、[ご主人様]に仕える日の事だった。
 メイド達は庵と沙希の新居で、以前身に付けた、仕事の能力を存分に発揮する。
 しかも、仕えるのは自分達の恩人で、匂い立つ程の良い男で、憧れの象徴なのだ。
 メイド達はこの特別勤務に、偏りが無いか厳重にチェックし監督し有った。
 リーダーの響子ですら、平等に勤務日を割り振られる。

 だが、そのメイド達も、櫛の歯が欠けるように1人抜け、2人抜けと、数を減らして行く。
 次々と理想のサディストに見初められ、[主人持ち]に変わって出て行った。
 マンション奴隷達もジェネシス社の本社勤務員や取引先のエリートサラリーマンに見初められ、最高のパートナーを見つけ従う。
 看護士達は媚薬が切れた後も、稔の支配を望み稔は可愛い奴隷達に最適の主人を探す。
 どの奴隷達も引く手数多だった。
 元々美しい姿に、女性として徹底的に磨かれ、献身的に付き従う事を自分の信条とする女性達で有る。
 その性情から、常に自分を磨き、美しく艶やかで居る事を忘れ無い女達。
 しかもその努力は、全て主人で有る自分のために行うので有る。
 手に入れたいと思う男が後を絶たないのは、当然で有った。

◆◆◆◆◆

 梓が市長に就任し、市の行政を握った頃、稔は溝口を訪ねた。
 溝口は稔の来訪を聞くと、急いで医院長室に駆け上がり、床に身体を投げ出し
「ご主人様、よくぞお出で下さいました」
 額を床に擦り付け、稔に挨拶をする。
 医院長室の扉が、カチャリと音を立てると、5人の美しい看護士が、扉のすぐ前で同じように平伏し、ジッと指示を待っていた。

 溝口は2年前、稔の許可を得て、奴隷と成った。
 稔の奴隷となった溝口は、県庁所在地であるこの市と地区の医師会をコントロールする仕事を任される。
 ジェネシスグループのバックアップも有り、溝口はその仕事を十二分にこなしていた。
 市議会の2/3を掌中に収め、地区医師会で理事に成っている。
 そんな力を持った溝口だが、未だに全てを捨てて、稔の側に仕えたいという願望が、消えないで居た。

 稔は溝口に立つように指示すると、優雅な動きでソファーに座り
「近くまで来たから、顔を出しただけです。調子はどうですか?」
 溝口に微笑みながら、声を掛けた。
「は、はい。有り難う御座います。業務の方は第2溝口病院を建設中で、市議会の取り込み工作も、医師会のコントロールも順調であります」
 溝口は稔の足下に移動して、報告する。
「そうですか、よく働いてくれてますね…」
 稔が溝口の労をねぎらうと、溝口は恐縮して感謝を告げた。

 その会話が途切れたタイミングで
「失礼致します」
 小さな声で、1人の看護士が稔の前に、コーヒーを差し出す。
「ああ、由美子さん。お腹が少し目立つように成りましたね」
 稔が看護士に、微笑みながら声を掛けると
「はい、5ヶ月目に入りました…」
 由美子は頬を赤く染め、ウットリとした目で稔を見ながらお腹を押さえて報告する。

 由美子の左手の薬指には、溝口とお揃いのリングが嵌められていた。
 だが、溝口の奴隷だった由美子は、その容貌を大きく変えている。
 168pの大柄で肉付きの良い豊満だった身体は、見事に鍛え上げられ、モデルのようなスタイルに変わり、幼女のような小振りな丸顔は、妖しい色気を放つ、女のそれに変わっていた。
 クルクルと輝く大きな黒目がちの瞳が、以前の由美子と被る程度で、殆ど別人に成っている。
 5年前の事件が落ち着いてから、溝口は事ある毎に由美子を連れて、稔の紹介先に行き調教を依頼した。
 調教を受けるたびに、由美子の内面はマゾヒズムを目覚めさせ、服従の意味を知り、溝口に全てを委ねる。
 内面が変わって行った由美子は、妖しさを纏い、女としての自信を持ち、美しさを身に付けていった。
 そして、3年が経ち磨き上げた由美子を、溝口は心から愛し、終生の契りを結んだ。

 そんな由美子が懐妊し、稔が4人の看護士を金田病院から出向させたのだ。
 看護婦長で有る由美子の穴を埋め、由美子の世話をし、溝口のサポートを行える優秀な奴隷を稔が送り込んだ。
「みんなは、良くやっていますか?」
 稔の問い掛けに、由美子は大きく頷き
「はい、皆様とても有能なお方で、直ぐに私の穴を埋められて、大変助かって居ります。ご主人様も、毎夜熱心なご奉仕を受け、喜んで居られます」
 稔に報告すると、溝口が慌てて由美子の言葉を遮り
「いや、それはその…、どの方も、大変素晴らしくて、いや…あの…」
 しどろもどろに言い訳した。

 稔はクスリと笑うと
「彼女達が望んでやってる事です、僕の命令では有りません。良い訳は必要ないですよ。それより、由美子さん身体に気をつけて、元気な赤ちゃんを産んで下さいね…」
 溝口に言って、由美子に向き直りお腹を撫でながら、優しい声で告げる。
 由美子はそれだけで、心を満たされイキそうに成ったが
「はい、有り難う御座います…」
 必死で我慢し、稔に感謝した。
 この時溝口は、稔の本当の来訪理由を理解する。
 稔は自分の仲間である溝口の家庭を気遣い、顔を出して様子を見に来たのだった。
 溝口はその稔の心を理解し、更に心酔し傾倒して行く。

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