三つの願い 〜男の夢〜
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■ 第二章 教室で……3

 身長体重測定そのものは特に変わった事も無く終わった。僕たちはトランクスを脱いだまま廊下に出た。
 全裸の男子女子が集まった異様な部屋を出て、僕はちょっとほっとした。僕は何気なくその場の長椅子に座った。
「ちょっと、そこ。椅子座るときはパンツはいてね」
 隣の部屋の受付のおばさん看護師が僕を指して言った。まわりをよく見ると、全裸の人もいるが多くの人は下半身は再び何かはいていた。
 僕は、以前ネットで見た、西洋のヌーディストリゾートの体験記を思い出した。『全裸で歩いていても、レストランとかの椅子に座るときは汚れるのを防ぐためにマイタオルを敷くかパンツをはくかするのがマナー』というようなことが書いてあった。
 この世界も同じようなマナーらしい。

 僕たちはトランクスをはき、次の受付へすすんだ。尿検査だった。
「尿を提出してください」
 すすむはかばんから尿が入った小容器を取り出した。
 僕は尿を持ってきていなかった。今日が健康診断ということを忘れていて、慌てて出てきたので…
「あの…尿を採るの忘れまして…」
「では今採ってきてください」
 おばさん看護師は紙コップと小容器を差し出した。
「すすむ、ちょっと待ってて」
 僕は男子トイレに入ろうとしてドアを押した。

 ええっ?! 僕は心臓が二つくらい飛び出したような気がした。
 ドアを閉めてもう一回看板を確かめた。確かに黒く、丸と逆三角形の『男子トイレ』の記号だった。でもよく見ると、それをはがそうとした跡や大きく×で記号を消すような落書きがあった。
 でもここ男子トイレだよなあ…、小便器が並んでいる。僕はもう一回ドアを押して入った。
 そこには、小便器の前でパンティーを下ろしてしゃがんだ女子がいた。僕と同じように紙コップと小容器を持っていた。採尿は終わったようで小容器には黄色い液体が入っていた。そしてその女子は体内に残った尿を小便器に向かって放出していた。
 その後その女子は、立ち上がって目の前に置いてあったトイレットペーパーを少し切り取り、股間を拭いて、その紙をくずかごに捨てて手を洗って去っていった。
 立ちつくす僕の後ろからもまた女子が入ってきた。その女子は個室がいずれも使用中なのを確認すると(鍵はかかっていないところもあったが、そこはその女子が開けて確認すると誰か入っていた)何のためらいもなくパンティーを下ろして小便器の前にしゃがんだ。
…そうだ、採尿しないと。立ちつくしている場合じゃない…
 僕は小便器の前に立った。尿出さなきゃ…しかしこんなに硬くなった棒からどうやって出したらいいんだろう??
 それでも僕の二つ隣の小便器ではあとから入ってきた男子が普通に放尿していた。この世界では普通の風景なんだろうとは思うけど、これで立たないなんて僕にはまだ信じられなかった。
 僕は目をつぶって、今まで見た光景を頭から振り払おうとして、何とか採尿した。

「おまたせ」
「ずいぶん時間かかったな」
 僕はトイレで見たことを小声で説明した。
「おぉ、それはすごいな。でも男子トイレ使えるのは女子にとってもいいかもな。待ち時間減って」
 僕は昨日までの女子トイレの状況を思い出していた。この大学、ここ数年で女子比率が急速に増えて、女子トイレとかの増設が追いついていなかった。だから休み時間になると、女子トイレは行列になることがよく知られていた。
 放尿も恥ずかしくない、とすると待つより男子トイレに入るのは当然だろう。というか、男子トイレという名前さえ、この世界では使われていないかもしれない。

 尿を提出したあと、僕らはレントゲン、内科、と進んだ。説明するまでもなく、女子受診中も普通に男子は入れた。
 レントゲン室から出てくる女子も当然のようにパンティー一枚。上半身裸で聴診器を当てられている女子も当然のように目の前にいた。

 最後の部屋で血圧と採血だった。血圧を測るのはおじいさん先生だった。
「160−100…ちょっと高いですね。今まで高血圧と診断されたことはありますか?」
「いえ…」
 そりゃあこんな状況だ。ドキドキしているよ。
 
 最後に採血。朝食食べてしまったから血糖値高いかな。
 採血を終え、止血用のシールを渡された。
「血が止まるまで五分くらい、座って待っていてください」
 僕たちはその場に並べられた椅子に座った。
「すっげぇ世界だな。エロビデオでも見たこと無い」
 すすむが小声で言った。
「うん…、ちょっと目のやり場に困るけど…」
 それでもやはりまわりが目に入ってしまう。トイレからここまで一気に来たが、ここで落ち着いてみると、改めて男子と女子のペアやグループが目立った。そうしたペアやグループはやはり皆キスを交わし、胸を揉み合い、股間に手を突っ込み合っていた。男子も女子も、「あぁっ」、「あぁん」とか抑えながらも声を上げていた。
 僕の棒は、はちきれそうだった。我慢できなくなりそうだった。僕は手探りでかばんの中からポケットティッシュを取り出した。そして右手でトランクスの前を開き、棒を出して、握ろうとしていた。
「おい、それはやめた方がいい。誰もそれはやってないぞ」
 すすむはそう言って僕の右手を抑えた。
 僕はあたりを見回した。確かに一人でいる男子は、もちろん女子も、普通に座っていた。
「そんなことするより早く教室行こうぜ。教室に行けば、あいかさんもしほさんもいるんだ」
 すすむは勢いよく立ち上がって出口に向かって早足で歩き始めた。
「おい、待てよ。」
 僕はあわてて後を追った。
 あいか…これからあいかと会ってどうしたらいいんだろう? ほんとうに、願ったとおりセックスできるのか?? いっぱいすごい事を見たけど、「セックスが話すことと同じくらい気軽にできる世界」、僕はまだ半信半疑だった。

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