三つの願い 〜男の夢〜
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■ 第三章 女子寮で……14

 歩き出そうとした4人を、じゅんこさんが呼び止めた。
「ちょっと、服、要らないのですか?」
 また怖そうな声だが、さすがに、さっきの険しい雰囲気は、半分にはなっていた。
「あ…そういう訳では…受け取らせてください」
 僕は頭を掻きながら、服を受け取った。
「今度は、ちゃんと、2・S・E の籠に入れなさいね」
 じゅんこさんは、ユニット名を強調して言った。
「はい、今後は必ず…」

 僕たちは、再び浴室に入った。さっきよりは、少しは空いた感じがした。
 僕とすすむは、まず2SEの籠に服を入れた。
 ゆみは、メガネを棚に置いた後、一瞬でTシャツとパンティーを脱いで2SEの籠に放り込み、僕に抱きついた。
ゆみは、体中が…なんていうか…糊が付いたように…なっていた。
 
「今日は大変でしたよ」
 浴室に入って洗い場に向かい合って腰掛けた僕とゆみは、お互いの肌に素手でせっけんをつけ始めた。
 ゆみの話を聞くと、今日は学科の女子が一人休みだったので、普段以上の男子を相手にしなくてはならなかった…それで、学科は(本来僕は知ってるはずなので聞けない中での推測だが)工学部のどこかの学科。60人中、女子はたった3人という…
 うーん、この世界ではどういうことになるか、容易に想像できた。
「そうだったのか。おつかれさま」
 僕は、ゆみの肌に付いたものを、丁寧に洗ってあげた。
 そして、さっきよりは少し空いた浴槽に、二人で抱き合って入った。
「ふうっ、こうやって抱かれていると、何かほっとしますよぉ…大学では“はい、次。はい、次”っていう感じで、落ち着く暇も無いですから…」
 ゆみは眼を閉じた。僕は、ゆみの唇に舌を入れた。急流に乗ってきたような一日、僕も今日初めてほっとしたような気がした。
 僕も眼を閉じた。最初に入ったときよりぬるくなったお湯。このまま、ゆみを抱いたまま、寝てしまいそう…
 グゥウ〜
 寝てしまったわけではない。僕のお腹が鳴った…そうだ…夕食…
「あぁ、夕食食べに行こうと思っていたんだ…」
 すると浴室の入り口の方にある時計を見たゆみが立ち上がった。僕も一歩遅れて立ち上がった。
「そろそろ食堂二順目の時間ですね。行きます?早く行かないと無くなっちゃいますよ…あ、まさるさん、ごめんなさい、今日あたしカードチャージ残ってなくてお貸しできません」
「えっ?」
 うちの大学の学食、学生証のICカードにチャージしておけばカードで食べられる。寮にも食堂があってカードで食べられるのかな?
「僕のカードもチャージはしてあるけど」
「何言ってるんですかぁ〜ご存知でしょう。あそこのカードリーダー、正規寮生しかダメですよ。実質寮生とか、遊びに来てくれた人もいいと思うんですけどねぇ…大学事務、頭固いから〜 今日確かあいかさんいるはずですね。多分あいかさんから借りられますよ。ユニットに戻ってみましょう」

 これで少し“ジッシツリョウセイ”って分かってきた。この女子寮にほとんど住んでいる同然の、多分、男子のこと、か… 

 僕、ジッシツリョウセイ…女子寮に、実質、住んでる…今朝まで、見上げるだけだった、女子寮に…
 ということは、今晩は、一晩中、ここに?!

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