三つの願い 〜男の夢〜
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■ 第四章 「第二の願い」9

「おかえりなさい」
 僕たちは女子寮に帰った。受付にいたのは、じゅんこさんだった。じゅんこさんは無表情にそういった。
「た、ただいま」
 じゅんこさんは、受付として、僕に、そしてすすむに抱きつき、ディープキスをして、僕の棒をトランクスの上から何回か揉んだ。また何か言われそうだな…あまり勃つような感じではなかった。

「君たち、これから何か用事ある?」
「はい、ちょっと約束あって」
 すすむはすかさず答えた。
 約束といっても、やるだけでは…まあ、挨拶に行くんだから立派な約束か…

「まさる君は?」
「え、ええと、別に用事はありませんが…」

 じゅんこさんの口もとにちょっと笑みがこぼれた。

「じゃあ、しばらく受付当番やって。今男子の受付がいなくて」

 僕は昨日を思い出した。確かに、昨日見た受付は男女ペアだったことが多かったが、いまはじゅんこさん一人しかいかなった。

「よかったじゃん、まさる、いっぱい抱きつけるぞ」
 そう、男子の受付は、昨日の雰囲気からいうと、帰ってきた女子を迎えて抱きしめてキスする役みたいだった。
「う、うん」
 でも、じゅんこさんとペア、というのはちょっと、いや、だいぶ緊張する。
「じゃあ、あとでな」
 すすむは、いつの間にかもう全裸になっていて、そう言うと中に入っていった。

「すすむ君、早く脱いで配置について!」
 僕も脱ぎ始めた。でも、さっきひろことやって、結構汗かいていた。これで多くの人を抱きしめるのはちょっと気が引ける。

「…じゅんこさん、ちょっとシャワー浴びてきていいですか?」
「10分で戻ってきて」

 僕は脱いだ服と鞄を持って浴室に向かった。
 10分…昨日のように、誰かに声をかけられてセックスすることになったらどうしよう…僕はちょっとそれを期待していた。これならもしかしたら言い訳になるかも…でもわざわざ10分と念を押したということはそうでもないか…
 そんなことを考えて、僕の棒は大きくなったりしおれたりした。

 それでも、心配(期待?)していたようなことは起こらなかった。
 風呂はまだそんなに混んでいなかった。入っているのはほぼ男女同数で、女子だけ余っていることはなかった。

 僕は手早くシャワーを浴びてバスタオルで拭き、受付に戻った。

 緊張の中、受付当番は始まった。
 それほど人は来ない。じゅんこさんは黙って立っている。僕は思い切って口を開いた。
「じゅんこさん、僕、受付当番初めてなんです」
「まあそうだろうね」
「受付当番って何をすればいいんですか?」
 じゅんこさんは軽くため息をついた。
「…受付の基本的な仕事は、来たお客さんに訪ねるユニットがどこかを案内したり、招待されていない不法侵入者を通さないようにしたりすることだけど、まさる君だとまだ誰が不法侵入者かとか分からないでしょう。というわけで、それは女子側でやるから。」
「はあ…」
 昨日僕たちをその扱いにしたのはじゅんこさんだったような。
「まさる君は、帰ってきた人を出迎えるのが仕事かな…本当は変なんだけどね。まだ受付が正規寮生だけだった時、誰かが帰ってきた男子実質寮生にハグとかキスとか始めて…それから“正規寮生も同じように出迎えてほしい”って意見とか出て、今のような形になったわけ」
 まあ、それだけだったら、気楽でいいのかなあ。
「そのうち、みんなの顔と名前くらい覚えるだろうけどね…覚えたら不法侵入者追い払う方もやって」

「はい…あの、仕事はわかったのですが、何時間くらいやるんですか?」
 じゅんこさんは、A4くらいの紙を見た。
「3時間くらいやってもらえるとありがたい」
 え…
「3時間も立ってるんですか」
「トイレくらいは行っても大丈夫。女子の受付がいるから、受付が空にはならない」
「じゃあ、僕ひとりで受付、というのもあるんですか?」
「それは基本的にない。女子は1時間で交代するし…まあ、男子の実質寮生が増えたら女子と同じように男子の当番も短くなるよ。そのうち」
 3時間…でも、3時間じゅんこさんとペア、でなくてちょっとほっとした。

「そういえば、受付って24時間いるんですか?」
 夜半過ぎとかに当番があったら、それはすごく眠いに違いない。

「あれ、聞いてない? 24時からは、外からはIC学生証をカードリーダーにかざして開く…でも当然正規寮生しか通れないから、もし24時以降に一人で入ろうとすると、そのユニットの人に電話して内側から開けてもらうことになる。気を付けて」
「はい…」

 僕はここの食堂のカードリーダーは正規寮生しかダメなのを思い出した。あのときは何でわざわざそんな設定になっているのか分からなかった。でも、きっとここと連動しているんだろうなあ、と思った。

 もとの世界だったら、ここの玄関が誰の学生証でも開いたら大変だ。

 しかし、もし遅くなったら、場合によっては、じゅんこさんを起こして開けてもらわないといけないのか…それは避けたい…

「じゅんこさん、やっぱり、実質寮生の学生証で玄関とか開くようになるのは難しいんでしょうかねえ」
 じゅんこさんは、何言ってるの? というような表情をした。
「そのためには、大学側が実質寮生を正式の寮生って認めないといけない。そのためには、ここが女子寮じゃなくて男子も住める寮と認められないといけないでしょう。それは、まだちょっと道は遠い…本当は、ルールに則って正式に一緒に住めると一番いいんだけどねぇ…実質寮生は、厳密にいえば“正規寮生にたまたま連続して招待された人”の扱いなんだからね」

 まあ、確かにここは「女子寮」なんだよなあ…あれ? 実質寮生は招待された人、ということは、あいかもしほもいない場合、僕たちはどうなるんだろう??

 寮の中から、じゅんこさんと同じくらい色白の女子が歩いてきた。
「じゃあ、あとは頼んだよ」
 じゅんこさんの番は終ったようだった。
 さっきの疑問を解決する機会がここでは無いまま、じゅんこさんは去った。

 それで、この次にペアになった子とはほとんど会話を交わすことはなかった。ちょっとだけ交わした会話がタメ口だったので、たぶん同期か先輩だろう、としか分からなかった。
 それでも、この時間は多くの人が帰ってきて、迎える仕事もかなり忙しくなって、ペアの女子のことはあまり気にせずにすんだ。
 正規寮生は、帰ってくると札を裏返すので、少しは顔と名前を覚えることもできた。

「ただいまです」
「し、失礼、しま…いや…た、ただいま」

 久しぶりに知った顔、ゆみとあつしだ。僕は緊張がほどけるようで、しかし改めて棒は固くなった
「まさるさん、ただいまです」
「おかえり」
 僕は、そう言うと、Tシャツにパンティー姿のゆみに長めにディープキスし、きつく抱き締めた。やはり昨日のように、肌に糊が付いたようだった。(当然、そういう子はゆみだけではなかったが)
 今度はゆみのほうからもう一度キスをした。そして、耳の近くで小声でいった。
「あつし君、やっぱり今日も来ちゃいました。ほんとに実質寮生目指すみたいですぅ…あとで助けてくださいね」
 ゆみが一晩中あつしと2人きりで過ごしたくない、ということはよく伝わってきた。
「うん、なるべく助けるよ」
「きっとですよ」

 ゆみは、僕から離れた後、全裸になった後、立ちつくしていたあつしの手を引いた。
「ほら、ここで脱いで…まずお風呂行くよ」
 さすがに、放ってはおけないようだった。

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