三つの願い 〜男の夢〜
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■ 第四章 「第二の願い」12

 数ページは読んだ。

 …だめだ。斜め後ろに、裸のじゅんこさんがいる状態で、集中できるわけはない。ここに座った時には一度やわらかくなっていた棒も、今はまた固くなっていた。
 どうしよう…僕は緊張してのどが渇いてきた。コーヒーでも飲みたい…でもどこに?? コンビニまで買いに行くか…服はたぶん脱衣籠にある。出歩くな、と言われているが…

 ここにコーヒーくらいありそうなような気もする。

 そうだ。

 僕は、以前の世界で同じ学科の院生と話したことを思い出した。

“近頃の講座の学部生は、すすんでコーヒーを入れようとしない”
“そうなんですか。でも、正直言って、どういうタイミングでコーヒー入れたらいいのか、僕がその立場だったらわかりません”
“自分がしてほしいことを人にしろ。コーヒーを飲みたいと思ったら「コーヒー飲みますか」とか言ってみんなの分を入れればいい”

 僕は立ち上がり、じゅんこさんの方に2、3歩あるいて、言った。
「じゅんこさん、あの、コーヒーなど、お飲みになりますか?」

 じゅんこさんは、僕の方を向いた。
「あぁ、お願い」

 よかった。

「あの、コーヒーってどこにありましたっけ?」
「知らないの? 談話室入ってすぐ左にポットがあって、そのまわりにインスタントコーヒーとかカップとかがあるの。あ、私はミルクだけだから」
「はい!」

 ドアを開けて出ながら、僕はほっとした。じゅんこさんがもし、本格的なコーヒーを作れと言ったら僕には自信がなかった。インスタントでいいのか。

 談話室に行く前に、ちょっとゆみの部屋の前まで行ってみた。でも、声も物音も聞こえなかった。また風呂に行っているのだろうか?

 誰もいない談話室でコーヒーを作り、もとのべんきょうべやに戻った。

「じゅんこさん、どうぞ」
 コーヒーカップをじゅんこさんの机に置いた。
「ありがとう」

 今度は顔も上げずに言った。

 あぁ。
 僕はコーヒーを飲んだ。とりあえず、のどの渇きは潤った。しかしだからと言って棒の緊張が解けるわけではない。


 いつのまにか、どうやってじゅんこさんに近づこうか、ばかり考える僕がいた。僕はじゅんこさんの方を見た。じゅんこさんは、右手で左肩を抑えるようなしぐさをしていた。

 よし。

「じゅんこさん、肩、お揉みしましょうか?」
「あぁ、お願い」

 やった、これでじゅんこさんに近づける。
 僕はじゅんこさんの後ろに立ち、数回肩をたたいたあと、肩を揉み始めた。

「…まさるくん…ご実家とかで肩揉んだことないの?」

 実は、そうだ。実家にいたとき、そういう親孝行とかは全然していなかった。
 僕は肩揉みに経験が必要とは考えていなかった。

「は、はぁ…」
「そんなんじゃ全然効かないよ。全体を軽く揉むんじゃないの。親指を使って、押すように…そこじゃない…もっと強く!」
「は、はい…」

 こんな調子で、ダメ出しされながら、10分以上は、じゅんこさんの肩を揉み続けた。さすがに疲れてきた…
「まさるくん、もういいよ。短い時間で結構うまくなったじゃない」

 はぁ、よかった…僕は腕をじゅんこさんの肩から離してだらりとさせた。

 その時、僕は見た。
 じゅんこさんは、目の前のティッシュを取って、股間に当てたあと、ゴミ箱に投げた。股間からティッシュを離すとき、細い糸を引いたように見いた。
 「濡れて」いる?
 僕の棒も、当然さっきから同じ状態だった。

 よし、これなら、大丈夫かな。

「じゅんこさん、胸、お揉みしましょうか?」

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