三つの願い 〜男の夢〜
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■ 第四章 「第二の願い」18

 じゅんこさんも、一缶開けたようだ。そして、すばやく立ち上がった。

「じゃあ、今晩は、私と仲良くしてよ」

 そういってじゅんこさんは、あつしの手を取った。

「は…………はい…」

 あつしは、不意を突かれたようだった。

「じゃあ、まさるくん、ゆみちゃん、おやすみ」
 じゅんこさんはゆみと僕の方を向いてそういい、あつしの手を引いて談話室から消えた。
 ドアが閉まるか閉まらないかのうちにじゅんこさんがあつしに激しくキスしたのが見えた。


「まさるさぁん…」

 2人が消えてすぐ、ゆみが僕の隣にきて、キスをした。
 そして、ぼくとゆみは、自然にカーペットの上に寝転び、抱き合って、数分間、舌を絡ませた。
さっきゆみの口に注ぎ込んだ僕の液の味は、ビールの味の中に薄れ、まったく気にならなかった。

「ごめん、ゆみ、助けに行けなくて」

 唇を離したあと、僕はすぐにそう言った。

「いいですよ。じゅんこさんにつかまったらなかなか離れられないでしょう。でも、じゅんこさんがあつしくんを連れて行ってくれてよかった…」

 そういって、ゆみはさらに強く僕を抱きしめ、再び口の中に舌を入れた。
 数時間ぶりにゆったりした時間になった。僕もゆみをさらに抱きしめ、再び舌を絡ませた。
 それでも、当然ながら、体の一か所だけは、リラックスとは反対に動いた。
 当然、その状態はゆみに伝わったろう。

「今日はとっても疲れました…まさるさん、このまま、一緒に寝てもらっていいですか?」

 このまま、ゆみとゆっくりやって、眠りに落ちる、それはこれまでの状況に比べてかなり魅力的に思えた。

「ああ、もちろん」

 僕たちは立ち上がり、洗面所に行った。ゆみが歯を磨いている間は、後ろからゆみの胸を揉んでいた。そしてきのうと同じように、ゆみから歯ブラシを借りて僕も歯を磨いた。

 そして「ゆみと まきの しんしつ」に入った。ゆみが電気をつけ、内側から鍵をかけた。
 ベッドは同じように置いてあるが、きのうの「あいかとしほのしんしつ」より物が少なく、シンプルに見えた。
 
 ゆみはすぐに電気を常夜灯にし、僕の手を引いて左側のベッドに入った。
「なんかまさるさんと寝るの久しぶりですね」
「う、うん」
 僕はあいまいに答えた。
 実際には当然初めてだ。

 そして、ゆみと僕は軽くキスをしたあと、並んでベッドに横になった。
「じゃあ、まさるさん、おやすみなさい…ごめんなさいね。疲れてて…」
 ゆみは、自らにタオルケットをかけ、その端を僕に渡し、眼を閉じた。
 そして、すぐに眠ってしまったようだった。

…そうか…“今日はとっても疲れました”って言っていたなあ。“一緒に寝る”っていうのは
やることでなく、本当にただ一緒に寝ることだったんだなぁ…

「まさるさぁん…あしたやりましょうねぇ…」

 ゆみがそう言った。眼は閉じたままだった。
 寝言だったのかもしれない。

 僕は、渡されたタオルケットをかぶって、目を閉じた。再び、ゆみの肌のぬくもりが伝わってきた。

 ああ、この、棒、どうしよう…

 僕は起き上がり、常夜灯の赤い光の中、目をこらした。

 ティッシュが見つかった。

 僕は、ティッシュを手に取り、ゆみの寝顔を見ながら、この世界になってから初めて“独り言”をした。





 何回目だろう。眼が覚めたのは。

 外はすっかり明るくなっていた。

 前回目が覚めた時までは、まだゆみは寝ていた。しかし、今回は、この部屋には僕ひとりが残されていた。
 何時だろう…時計は枕元にすぐに見つかった。
 1コマ目がはじまるちょっと前だった。僕たちには1コマ目は講義無いから関係ない。

 僕は時計を重しにしたメモを見つけた。
“まさるさん、ごめんなさい、起こすの申し訳ないんで、先行きます。今度やってくださいね ゆみ(ハートマーク)”
 こう書いてあった。
 ゆみとか理系だと忙しそうだし、1コマ目から大学に行く必要があることはよくわかる。

“今度やってくださいね”はうれしい。でも、今度がいつ来るのか、僕にはよく分からなかった。


 はぁ…これからどうしよう。
 僕の棒は、朝当然そうであるような状態だった。
 それでも、人のベッドはいずれにしても落ち着かない。僕はベッドから起き上がり、部屋を出た。

 ユニットはしんと静まっていた。あつしは、ゆみと同じ学科なのだから当然大学に行ったろう。じゅんこさんも、いる様子はなかった。それなりに忙しそうだったからやはりもう大学に行っているのかもしれない。

 僕はぼんやり通路に立っていた。手は自然に棒のあたりをいじっていた。


「おはよう!」
 後ろから声がした。僕はびくっとして、手を棒から離した。
「すすむ、おはよう」
 僕は声の方に向き直った。
「俺、あれから10人とやったぞ! まさるは?」
「…ええと、やったのは2人。口内も入れると3人…回数はもうちょっと多いけどな…」
「そうか、それはちょっとさびしかったなあ」

 すすむばかり、何でできるんだろう…

「ああ、僕だってもっとやりたいよ……」

 そして、僕は思いついた。

「なぁ、第二の願いなんだけど…“セックスしたいと思ったら、その人とセックスできる世界にする”っていうのはどうだろう?」

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