三つの願い 〜男の夢〜
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■ 第四章 「第二の願い」24

 よし…
 僕はルーズリーフを取り出して一枚外した。
 ええと、なんて書いたらいいだろう“あいかさん、抱きしめたい”これじゃあ、本当に抱きしめて終わりそう…“あいかさん、やりたい”…通じるとは思うけど、微妙だなあ。文字だと伝わらなくて“何やるの?”とか返ってくるかもしれない…“僕のち○ち○を、あいかさんの”…いくらこの世界でも直接的すぎるだろうなあ…

 僕は、結局シンプルに“あいかさん、セックスしよう”とだけ紙に書いて、四つに畳んだ。


 そのうち、講義の時間が迫ったことを示すチャイムが鳴った。
 僕は、おととい昨日と同じ席に座った。
 この講義は割と厳しい教授だからか、みな服を着始めていた。僕もTシャツを着た。
 やがて、僕の右隣にたえこが、そして、左隣にはあいかが、来た。
 たえことも、あいかとも「おはよう」と軽くキスをした。僕は、キスの後、下を向きながら「あいかさん…これ」とさっきの四つに畳んだの紙を渡した。
 あいかが、それを開いたか開いていないか確認できないうちに、教授がやってきた。

 板書する教授。僕は黒板を見続けた。でも、その文字はほとんど頭に入ってこなかった。
 あいかさん、どんな返事をくれるだろう? そもそも、僕なんかに返事、くれるだろうか…

 長い時間が経ったような気がした。でも、講義が始まってから10分か15分くらい後だった。急に、トランクスの上に手が置かれ、トランクスの上から僕の棒を握った手があった。僕は、驚いて下をみた。左側から伸びている、あいかの手だった。
 そして、あいかはもう一方の手で、僕にメモ用紙を折ったものを渡した。

 返事だ!

 受け取ると、あいかは棒を握ったほうの手も離した。僕はあいかの方をちらっと見た。あいかは何事もなく黒板に向かっていた。

 僕は改めて下を向き、震える手でメモを開けた。女子がよく持っているようなキャラクター付きのメモ用紙だ。

“今日17時、しぶ○に来てくれる?”

 しぶ○!! 若者の街、しぶ○で会える?? これでは、ほとんどデートではないか!
 やった! 声が喉元まで出かかった。講義中でなかったら本当にそう叫んでいただろう。

 僕は急いでもう一枚ルーズリーフを外して、こう走り書きした。

“ありがとう! もちろん行くよ!”

 さっきのあいかにならい、僕は左手であいかのパンティーの上から割れ目の上の方あたりを狙って指で押してみた。あいかが下を向いたところで、紙を渡した。

 今度は返事はすぐ戻ってきた。

 メモ用紙に、17時、しぶ○の、あの数字三文字のファッションビルのエレベーター前で、ということが書いてあった。

 ここからは、別な意味で、講義はまるで頭に入ってこなかった。


 2コマ目が終わった。
 昼休みだ。

 あいかは、さっきとはまた別の男子に誘われて行ってしまった。

 たえこはブラウスを脱ぎながら「食堂行く?」と誘ってくれた。

「ごめん、ちょっと用事あって」

 断ってしまった。
 さっきの講義中に、ちょっと計算していた。
 これから午後の講義3コマ目、4コマ目に出て、しぶ○に17時に行くには、大学から直接駅に行かないと間に合わない。
 しかし、このおとといからのTシャツにトランクス。しかも昨晩の銭湯以降、ゆみの口の中に出し、やってないけどゆみと一緒に寝て汗をかき、翌朝さちことやっているのに、まだシャワーすら浴びていないのだ。
 初デートなのにこれはまずい、と思った。

 僕は、急ぎ大学を出て家へ、まずは、おとといの朝まで住んでいたボロアパートに、帰った。

 閉め切ってあったその部屋はすっかり暑くなっていた。僕はまず窓を全開にして、ドアも開けた。
 そしてTシャツを脱ぎ捨て、そして思わずトランクスまで脱ぎそうになってしまった。
 いけないいけない。窓もドアも全開なのに全部脱いでは。ここは大学構内じゃない。
 
 僕は、旅行カバンを取り出し、そこらへんにあるTシャツとかトランクスとか靴下とかをあるだけ、あとはタオルや歯ブラシ、ノートPC、教科書類やノート、そしてたまにしか使わない制汗剤を詰め込んだ。
 そして雨戸を閉めた。しばらくは、たぶん第二の願いのときまでは、ここに戻ってくる必要はないだろう。
 そしてカバンを持った僕は、部屋を出ようとした。
 ふと後ろを見た。雨戸を閉めても、それなりに隙間があって多少明るい。あのやかんが、鈍く光っていた。

 僕は、やかんに一礼した。悪魔さん、ありがとう。

 そして、僕はトランクス一枚のまま女子寮の玄関をくぐった。
 さすがに昼間はそんなに人はいなかった。
 受付の女子とはいつもどおりキスしたが、荷物を置きに2SEに行き、浴室に行くまでは誰にも会わなかった。
 浴室は、2組洗い合っている男女がいるくらいで、空いていた。
 少しあとに、一人の女子が入ってきた。僕は初めて見るが、その子も僕のことは顔しか知らないようだった。
 軽くキスしたり、洗い合ったり、一緒に湯船につかって軽く自己紹介とか世間話とかをしたりしたが、それ以上のことはなかった。
 僕もそろそろ大学に戻らないといけないし、その子も大学に行くところだったようだ。

 大学に戻った。
 3、4コマ目は、大変長く感じた。これほど夕方が待ち遠しかったのは、どれくらいぶりだろう?
 棒は、もうずっと硬いままだった。それでも、3、4コマ目間の休み時間にひろこに「さっきのつづきしよ」と言われた時にも「ごめん、あした」と断ってしまった。頭のほとんどを、あいかが占めていた。

 4コマ目の後、僕は駅へと急いだ。
 あいかとの初デート! そして、あいかと、またセックスできるんだ!

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