三つの願い 〜男の夢〜
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■ 第四章 「第二の願い」29

 プルルルルルル……

 何かが鳴っている…僕は眼をこすった。
 部屋の電話が鳴っているようだ、と分かるのに数秒、その電話がどこにあるか分かるのにさらに数秒かかった。

 僕は、まだ頭がぼーっとしたまま、電話を取った。

「あと5分です。5分以内に退出されない場合、通常料金をいただきますが…」

 …ああ、特別に、一時間1000円、って言っていたんだったなぁ。

「ふぁい、すぐ出ます…」

 僕は眼をこすった。ちょっと前、ここであいかとやった。でも、もうあいかの気配は無かった。
 僕はトランクスを穿き、腕時計をつけ、鞄と、あいかが置いていった500円玉を持って、立ちあがった。

 あいかがちょっと前に入っていったドアを開けてみた。そこは浴室だった。ここにはまだシャワーを浴びた跡が残っていた。
 
 一緒に浴びたかったな。

 でも、もうあいかはいないし、時間もない。

 部屋を後にし、エレベーターで降りて、相手の顔の見えない受付で1000円を払った。すると、出口の扉が自動的に開いた。

 6時半くらいかぁ。一年で一番日が長い今の時期だからまだ明るいが、もう日はだいぶ地面に近づいていた。心なしか、通りを歩いている人々は来るときよりずいぶん増えていた。それに比例して、露出度の高い人々も増えているようだった。


 夕食にハンバーガーのセットを食べてから、僕は駅に入った。


 帰りの電車は、帰りのラッシュが始まっていて動けないほど混んでいた。普通のサラリーマンとかに交じった露出度の高い人たちは、僕も含めてほとんど着替えずに電車に乗り込んだ。

 僕の前には、僕と同じくらいの背の女子がいた。下着姿のようだ。混んでいるから、当然密着している。僕の棒は、薄い布二枚だけを隔ててその子の股間に接しているようだった。もしも、その布がなかったら、そのまま入ってしまいそうなほどだった。
 目の前にある顔は、僕よりも少し年上の、どちらかというときれい系の人だった。
 香水と、汗が混じった、甘く生々しい香りがした。
 キスしたい衝動に駆られた。相手もそう思っているような気がした。

 しかし、あの広告が目に入って、僕は我に返った。
「痴漢は犯罪です」
 痴漢は犯罪、は、こういうときに成立するのかもしれない。

 犯罪者になるかもしれないところだった。
 僕はその女子から顔をそむけた。


 そのうちに、地上に出て最初の大きな駅に止まり、乗客が入れ替わって、とりあえずこの状況からは脱した。


 大学と寮の最寄駅についた僕は、面倒なのでトランクス一枚のまま女子寮へと歩いた。まわりは、さっきの街ほどは露出度は高くないがもう薄暗いこともあり、自分の格好はそんなに気にはならなかった。

 寮に帰った。すぐに汗をかいたトランクスと靴下を脱ぎ、廊下で絡み合う男子女子を避けながら、まっすぐ風呂に向かった。

「まさるさん、おかえりなさい…」

 風呂の扉を開けると、まず真っ先に、ゆみの声に迎えられた。
「ただいま」

「あっ、あっ…ゆ、ゆみさん…」

 ゆみは、椅子に座り、こちらを向いて、足を開いているが、顔や体はほとんど見えない。その足の間には石鹸まみれの男子がしゃがんでいるからだ。お互いに両手で肌をこすりあっていた。声からしておそらくあつしだろう。

 ゆみ…3日連続であつしの相手をしなければならないなんて…
 一言「今日は約束あるからいないよ」とか言ってどこかに遊びに行ってしまえばいいのに…ゆみなら、いくらでも男子の友達いるだろうし…

 あつしは石鹸に手を伸ばした。その時、ゆみと目が合った。助けを求めるような目…

 ここは、きのうの借りを返す時だ…

 僕は唾を飲み込んて、一歩、ゆみとあつしに近づいた。
 ゆみを助ける…格好のいい題目とは裏腹に、棒には一段と血液が流れ込んでいた。

「ゆみ、あつし君…3人で…洗おうか…」

 僕は思い切って、どちらの目も見ないで、言った。

「あ…ま、まさるさん、お、お、おかえりなさい…」

 あつしはうろたえたようだ。しゃがんだまま、ゆみから手を離して、そこで止まった。

 泡だらけのゆみが立ち上がり、僕の方に寄ってきた。

「まさるさん…」

 僕はまだ汗臭いままだったが、ゆみは抱きつき、そして唇を僕の顔に向け、顔をあげた。僕の唇もゆみの顔に近づけ、そして少しの間舌を絡ませた。

「そうしましょう! じゃあ、あつし君、背中のほうお願い。まさるさん、ここ来てください」

 再び座って足を開いたゆみは、さっきあつしがいた場所に僕を導いた。

「えー…」

 あつしは不満そうだった。

「ここは寮だよ。集団生活なんだから!」

 あつしはしぶしぶの感じでゆみの後ろに回って、背中に石鹸をつけてこすり始めたようだ。

 僕は、ゆみからの再びの軽いキスの後、首から少しずつ下へ向かって石鹸が塗られていった。手にも塗られた後、僕は洗面器のお湯で軽く手を洗い、ゆみについた石鹸を伸ばし始めた。

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