三つの願い 〜男の夢〜
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■ 第四章 「第二の願い」38

 そのままの格好で手をつないで数分歩き、工学部の、さちこのいる学科の建物に入った。ここはあまり電気がついている部屋は無かった。
 学生控室も、誰もいなかった。
 さちこが電気をつけた。
 そこはテーブルやいす、教科書やマンガ雑誌が雑然と置かれているほかに、ふとんがあった。
 まわりとの溶け込み具合から考えると、これは、前の世界からずっとここにあったような気がする。
「ねえ、さちこさん、このふとんって…ずっと前からあった?」
 聞いて、これは間抜けな質問だ、と思った。もし最近持ってきたふとんでも、架空の記憶で以前からあるようになっているかもしれない。
「ありましたけど、なんでですか?」
「いや、なんであるんだろう、って思って」
「それは…徹夜の人が寝たり、セックスするのにつかったり…」
 さちこは当然でしょう、という調子で言った。

 以前は前半の目的で実際に使われていたから有るに違いない。



「ここもそろそろ買い足さなきゃ…」

 そんなことを独り言のように言い、さちこはテーブルの上の箱からコンドームを取り出した。
「そこでいいですか? ちょっと汚れてますけど…」

 さちこはふとんを指して言った。僕はOKした。

 そして、僕とさちこはふとんに入り、僕はさちこに今晩二回目、今日三回目の挿入を正常位でした。




 帰り、大学構内を出るとき、今度は僕たちはしっかりとタオルを巻いた。
 その道でさちこはそのままコンビニに寄ってコンドームを5箱−その場にあった全部を−つかんだ。
 レジで、さちこはその山を1箱、2箱、2箱に分けて
「これは普通のレシートで、こっちはそれぞれ領収証をお願いします」と言った。

 コンビニを出てさちこは言った。
「この1つはあたしので、あとは学科と、ユニットに買っていくんですよ」
 確かに寮のいたるところにコンドームが置いてあった。しかし今までどうやって用意しているのか考えていなかった。
「領収証、っていうことは、ユニットにあるのってどこかからお金出るの?」
「ユニットの共益費からですよ、ほら、ビールとかと同じです」
 共益費…ビールのお金も考えていなかった僕はちょっと恥ずかしかった。
「あの、ユニットの共益費、僕とかって払っているんだっけ?」
「ええと、2SEのことはよくわからないのですが、まさるさんは来てくださったお客さんなんだから心配しないでください。正規寮生で出し合っているはずですよ」
 そして、さちこは、1階の受付や浴室にあるコンドームは寮全体として出しているのだが、予算が足りなくなりつつあり、寮の共益費を値上げするのか、置かないようにして各ユニットから持ってくるようにするのか議論になっているらしいんだ、のようなことを言った。

 そうだろうなあ。3日前には多分、いや、絶対、寮として置く必要なんかなかったものがいきなり必要になっているのだからなあ。

 そして、2SEに戻ったら、せめてユニットでの費用は払う相談をしたいなあ、と思った。
 コンドーム代を女子に出させているとは情けない…

「さちこさん、せめて、さちこさんの分の1箱は出させて」
 さちこは手を振った。
「いえ、悪いですよ。もともとあたしがクラミジアなんかもらったからなんですから…早く治さないと、とは思ってるんですけど…」

 いや、そもそもこの状況自体が僕とすすむのせいで…

「でも…僕も気持ちいいし、払わせてよ」
 すると、さちこはにっこり笑った。
「今晩あと2回、明日朝1回は入れてくれる、って約束してくれるなら。そうすればあわせて1箱分ですよ」
 僕は、必ずそうするよ、と約束して1箱分払った。


 寮に帰ってタオルを脱ぎ棄てた僕たちは、暖かいシャワーで軽く流し、風呂にちょっとつかった後、3SEに戻った。


 りんこさん、はるかさん、けいこ、のどか、あつし、はもう戻ってきていた。

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