Hカップお嬢様乃南ちゃん
わたる:作

■ 42

(ダメ……言えない……)

「か……顔とか……お尻とか……」

乃南が恥ずかしげに言う。

「なるほど……でももっと恥ずかしいトコロがあるんじゃない?」

ニヤニヤと司会者が言う。

そーだそーだ、と客席からも声。

(いや……! やっぱり……!)

「ヒントは乃南ちゃんのとっても大きい……」

司会がいやらしく言う。

「いやっ!」

乃南が反射的に胸を手で庇う。

「そうそう、今乃南ちゃんが手で覆ってるとこだよ、そこは何ていうの?」

客の一人が言う。

「む……胸……です……」

乃南がうつむきながら言う。
男子たちの興奮がたかぶっていくのがわかる。

「胸なら男にもあるよ、ちゃんと言わなきゃ」

意地悪に司会が言う。

「うう……」

乃南の心が羞恥でいっぱいになる。

「ば……バスト……です……」

恥ずかしさをこらえ、乃南が言う。

「そうそう、バストのことを何ていうの?」

さらに司会が聞いてくる。

(いやぁ……これでもダメなの……?)

乃南が思う。

乃南は自分の心の中では自分の胸のことは「お乳」と呼んでいる。
なぜそう呼ぶようになったかはわからないが、「おっぱい」という言葉は乃南にとってとてつもなく恥ずかしく感じるのだ。
無論、恥ずかしがりの乃南は、「お乳」など人前では言ったことはない。無意識に口からでることはあるが、口に出すときは必ず意識して「胸」と言っている。

(言わなきゃ……ダメ……なの……?)

おそらく男子たちは「おっぱい」と乃南が言うのを期待しているのだろう。
しかし「お乳」と言えば乃南の清純さと相まって、余計男子を興奮させるのでは……乃南は考える。

「ほらほら、何ていうの?」

司会が言う。

(言わなきゃ……!)

乃南は思い切り、

「おっ……おっぱい……です……!」

乃南が必死に恥ずかしさを抑えて言う。

おお〜! という悪魔の歓声と荒い鼻息が乃南を煽る。

「いやぁ……!」

言ってしまった。口に出してみると「お乳」よりはるかに恥ずかしい単語だった。

「そうですか……乃南ちゃんはおっぱいが恥ずかしいか〜」

おどけた口調で司会が言う。

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