「脱ぎなさい」「はい……」
ドロップアウター:作

■ 恥ずかしいよ……1

 そして……真由子ちゃんは、服を脱ぎ始めました。
 最初は、ブラウスの襟元のリボンを取って、胸ポケットに入れました。そして、上着の裾をスカートから引っぱり出すと、右手を床に伸ばして少し屈んで、指を淡いピンクの靴下に引っかけました。
 かかとを上履きのシューズから抜いて、右足を上げて靴下を脱ぐと、左足も同じように取って裸足になりました。脱いだ靴下を丸めて上履きに入れると、今度はブラウスの一番上のボタンに指をかけて、裾の方まで一つ一つ丁寧に外していきました。
「まゆちゃん、セクシー!」
 教室が一瞬ざわめきました。よく絵美を泣かせている男子が、そう言って真由子ちゃんをからかいました。絵美がすぐ反応して、その子を睨みました。
「そうかな……」
 真由子ちゃんは目をぱちくりさせて、ぽつっと言いました。
「わたしの体、まだ結構子供っぽいし……クラスの女の子がうらやましいよ」
「森川さん、そんな真面目に答えなくても……」
 絵美は、少しあっけに取られたみたいでした。誰もまともに返答するとは思ってなかったみたいで、ちょっと笑いが起こりました。
「子供っぽいとか気にすることないよ。こんなにかわいいんだし」
「顔もよくて胸まで大きかったら、嫉妬しちゃうよね」
 何人かの女子が、そう言って変な励まし方をしました。さっきの男子は、真由子ちゃんに言い返されて面食らったのか、何も言えなくなってしまいました。
 強い子なんだって思いました。人前でこんなふうに言われたら、普通の女の子なら泣いてしまうと思います。普段大人しいからもっと繊細そうに見えるけれど、今はなんだかお姉さんみたいでした。
 でも、平気なわけではないと思います。そもそも今日のことで、真由子ちゃんはずっと悩んでいました。それに、色白の頬がほんのりと赤くなっています。そういうのを見ると、真由子ちゃんはやっぱり恥ずかしがっているんです。
 ボタンを全部開けると、真由子ちゃんは後ろ向きになって、ブラウスの前開きの部分に手をかけました。そして、ばっと開くように脱いで、腕から袖を抜き取りました。
 白いインナーだけの華奢な上半身が露わになって、素肌の肩が袖なしの部分にのぞきました。やっぱりブラジャーはしてなくて、横を向くとインナー越しに乳首がちょっと浮き出て、どきっとしました。
「可哀想……」
 誰かのつぶやきが漏れました。たぶん女子です。真由子ちゃんが大人しいイメージだから、余計に痛々しく見えると思います。
 男子は、やっぱり落ち着かないみたいです。目の前で女の子が、それも初めて裸になる転入生の子が脱いでいるから、無理もありません。でも、意外とじろじろ見る子はいませんでした。
 わたしは、さっき何も言えなかった自分が情けなくて、すごく悔しい気持ちでいっぱいでした。真由子ちゃんに申し訳なくて、絵美みたいにどうしてしなかったんだろうって考えたりしていました。
 今の時間、他の生徒は教科書を読んでいるように言われています。でも、こんな状況で集中できるわけありません。
「先生……」
 ふいに、真由子ちゃんはいったん服を脱ぐのをやめて、先生の方を見て言いました。
「服、机に置いてもいいですか?」
 こんな時も律義に聞くなんて、真由子ちゃんらしいです。許可を得ると、真由子ちゃんは脱いだブラウスを手早く畳んで、そっと教卓にかけました。
 続けて、真由子ちゃんはスカートも取りました。留め具を外して、膝まで下げて、足から抜き取るようにして脱ぎ去りました。
 その時、わたしは真由子ちゃんのパンツを初めて見ました。体育で着替える時は、スカートを脱ぐ前に短パンを履くから、今まで人前で露出したことがないんです。何も模様のない純白のパンツで、インナーとお揃いの清潔な下着でした。
 服を一枚脱ぐと、真由子ちゃんはその都度きちんと畳みます。スカートも二つに折って、教卓のブラウスの上に重ねました。手早くしているのに、すごくきれいに畳まれています。そういう女の子らしい仕草が、今はちょっと切ないです。

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