お姉さんの種
一月二十日:作

■ 1

僕はお姉さんが欲しかっただけだ。
でも僕より後にお姉さんは生まれない。
だから僕はお姉さんの種を作ったんだ。
そして今目の前にその大きな種が転がっている。
「水をやらなきゃ。」
僕はズボンをずらした。
そして温かい水を掛けたんだ。

何日水を掛けたろう?
僕の部屋はすっかりおしっこ臭くなっている。
お姉さんの種はちょっとずつふやけて来ている。
多分もうすぐ芽を出すだろう。
でもいきなりお姉さんだから、きっと話す様になったらあれこれ偉そうなこと言うんだろうな。
でもいいや。お姉さんなんだから。
賢く言うことを聞こう。
でも楽しみだなぁ。どんな顔でどんな声でどんな身体をしているんだろう?
おっぱいは大きいんだろうか?
あそこにもちゃんと毛が生えているのかなぁ。

また何日か経った。
おしっこ臭い部屋にはちょっと参るけどお姉さんの種は確実に変化してきた。
種は大きな楕円形をしているけど、その表面がふやけて所々破け始めていた。
そしてある日僕は驚いた。
楕円形の真ん中より少し下の方に黒いものが現れていた。近寄ってみたら黒ではなくて少し茶色い毛だった。
ちりちりした柔らかそうな毛が種から出ていた。
僕は近寄って「フッ」と吹いてみた。
誰もいない僕だけのおしっこ臭い空間でその柔らかそうな毛は、僕が息を吹きかける間だけ揺れた。

そうだ、もう少ししたらお姉さんが生まれる。服とか買っておかなきゃ。
僕は慣れない買い物をして部屋に帰って来た。
また驚いた。
破れていた皮はすっかり剥けていた。そして毛の生えた楕円形には無数の血管が浮かんでいた。それはまるで巨大な臨月の乳房の様だった。
「ただいま。」
僕はお姉さんの毛に挨拶をしてそっと吹いた。
お姉さんの毛は「おかえり」とは言ってくれなかった。その代わり無言で揺れた。
僕は種に耳を当てた。
ドクンドクンと血が流れる音がする。
「お姉さんいつ生まれるの?」
僕は種に聞いていた。

次の日、また変化があった。
部屋の壁は僕のおしっこのシミだらけだった。
楕円形のてっぺんに、今度は長い毛が生えていた。真ん中辺の毛とおんなじ茶色い毛だけど、こっちはもっと柔らかくてまっすぐだった。
こっちは吹いても揺れそうじゃないから直接指で掬い上げた。本当に柔らかい。
楕円形は相変わらず血管を脈打たせてドクンドクンという音を立てている。
僕は勝手に想像した。
このドクンドクンの中でお姉さんのとがった部分…乳首とか唇とか鼻の先とかがとっても興奮しているんじゃないかな?
そう思うとまたおしっこがしたくなった。
僕はまたお姉さんに水を遣った。
楕円形に掛かった水はあっという間に吸い込まれて行った。
「お姉さんお腹空いてるの?」
僕は楕円形の上に跨って、天井を向いて力んでいた。

次の日、部屋に入ったらおしっこ臭さに甘い香りが混ざっていた。そして何より、部屋が暖かかった。
楕円形の真ん中より上が、ピンク色になっていて、ピンク色の真ん中辺がポチョっと突き出ていた。
怖かったけどそこに触った。
すると楕円形がムニュムニュと動いた。
面白くなってまた触った。
またムニュムニュ動いた。
それにしても変な形になってしまった。
この甘い香りは、そのポチョっと突き出ている先っぽから出ていた。あまりに美味しそうな香りだから、僕はその先っぽに口を当てた。先っぽを口をいっぱい広げて口の中に入れた。甘くて仕方ない。僕は興奮してしまった。もっともっと甘いのを吸いたい。身体中がこそばゆくなって、我慢出来なくなってちょっと歯に力が入ってしまった。
楕円形の中でずっとしている「ドクンドクン」がいっぺんに大きくなって、楕円形はポヨンと僕を跳ね飛ばしてしまった。
部屋の壁で身体を打ってしまった。お姉さんに怒られてしまったみたいで嬉しかった。

■つづき

■目次

■メニュー

■作者別


おすすめの100冊