桜怜ちゃんグラマラスデイズ
わたる:作

■ 19

「どうぞ、桜怜ちゃん」

男がそう言い、更衣室のドアを開ける。

「ん……っ!」

更衣室に入った桜怜は息が詰まる。更衣室特有の匂いが桜怜を襲った。

更衣室の中には桜怜のクラス10人ほどが居た。

海パンに着替えている者、これから着替える者、さまざまだった。

入ってきた桜怜のあまりにもセクシーな体操着姿を見て男たちは驚いたような顔をした後、すぐにいつもの下卑た笑いを浮かべる。

「やだ……!」

桜怜は反射的にパンパンの巨乳を腕で庇う。

「やぁ……桜怜ちゃん……」

一人の男子が声をかけてくる。

「う……うん……おはよう……あの、私のカバン……どこ……?」

桜怜はなるべく羞恥を悟られないよう普通にあいさつを返し、そうたずねた。

「ああ、ここにあるよ」

男が桜怜のカバンを出してきて桜怜が受け取る。桜怜が中を見る。

「よかった……何もなくなってない……」

桜怜は多少安堵する。

「でも…どうしよ……」

桜怜が戸惑う。男子たちは桜怜の着替えをせかす訳でもなく、各々着替えたり談笑したりしている。

桜怜にとっては意外とも言える反応だった。

「でも……着替えなきゃ……」

桜怜は戸惑った末、一番端のカゴに荷物を置いた。

もっとよく見える位置で着替えろ、など言われるかも知れないと不安だった桜怜だが、男子たちは咎めるどころか、桜怜を意識していないかのようだった。

「よかった……何もされないかも……」

桜怜が少し安堵する。このまま男子たちが桜怜を意識しなければ、あわよくば見られずに済むかもしれない。

「はやく着替えちゃお……」

そう思い、桜怜が体操着に手をかけた瞬間、

パシャ!

携帯のカメラの音。それに周囲からの強烈な目線。

「いやっ!……」

桜怜が悲鳴を上げ、振り向く。食い入るように桜怜を見ていた全ての男子たちの視線が元の談笑に移る。

しかしその表情はニヤニヤと下卑ていて、チラチラと絶えず桜怜を見ている。

「いやぁぁ……」

桜怜のかすかな希望は消えた。気にしていないふりをして、全ての男子が桜怜を意識している。

桜怜の視線の先にいくつもの携帯のカメラが光る。ムービーでも撮っているのだろう。

「だめ……! 撮らないで……!」

下着が丸見えの体操着姿を撮られているだけでもたまらない羞恥だ。

桜怜の言葉は男子たちの形だけの談笑の中に消え去る。

言葉にこそ出さないが、全ての男子が桜怜の着替えを心待ちにしているのだ。

「着替えなきゃ……でも……見られちゃう……」

桜怜は羞恥でいっぱいだが、着替えなくてはならない。

桜怜はカバンから白いタオルと頼りなさ過ぎるスクール水着を取り出す。

いよいよだ、とばかりに男子たちの視線が桜怜に集中する。

「大丈夫……大丈夫だから……!」

桜怜は自分に言い聞かせた。幸いここは更衣室の隅のため、男子は桜怜の後姿しか見えていない。

横から見られるのにさえ注意すれば、前を見られることはない。

「いち……にの……さんっ!」

桜怜が言い、一気に体操着を脱いでしまう。

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