隷属姉妹
MIN:作

■ プロローグ2

 だが、少女にはこの教師達の諦めこそ待ち望んだ物だった。
 同級生の[無視][無関心]も、心の底から望んだ物だったのだ。
 少女は自分に関心を持たれ、自分の事情が皆に知られる事こそ、最大の恐怖だったからだ。
 その気持ちを知るべくもない近隣の住人達は、既に少女の望む状態に成ってかなりの月日が経つ。
 少女の走る姿を見掛けても、近所の住民は声を掛け無い。
 いや、その姿から視線を逸らし、見ようともしなかった。
 それはまるで、関わり合いに成る事を避けているように見えた。

 しかし、それも仕方が無い事なのである。
 少女の住む家と古い住民達の流す噂が、少女やその家族と住民達との間に大きな壁を作っていた。
 少女の自宅は、まだ築10年も経たない洒落た鉄筋コンクリート造りの1軒家なのだが、いつも全ての窓に雨戸が引かれ、手入れをしていない庭は雑草が伸び放題で、庭から伸びた蔦が家全体を覆い、その外観は廃屋かお化け屋敷のようだった。
 更に昼夜を問わず奇声が上がるため、近寄り難い雰囲気を漂わせている。

 その上追い討ちを掛けるように、少女達の家庭の過去を知る住人がまことしやかに語る言葉がそうさせる。
 長女は何度も半狂乱で暴れて警察沙汰を起こし、次女は自閉症で引きこもりだと言う噂が広まっていた。
 そんな家の住人に、親しく話し掛ける者など、居る筈も無かった。
 有る意味その噂は事実で有り、家の外観から真実味も有った。
 だが、事実は少し違っていた。
 少女とその家族の事情を知れば、誰一人今の態度を恥じるだろう。
 いたいけな少女が[幽霊]に徹し、[無視]され続けた方が、数億倍マシと思う事情。
 それは、5年前に起きた有る事件が原因だった。

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